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130 比武激闘

 二日目は中位に選ばれた武門が選ばれる。


 この域になると、試合などの興行でならメインイベントを張れるドリームマッチといってもいい。


 その中でも注目を集めたのが、南の雄『薩隼会(さっしゅんかい)』自顕流の使い手『江上千波(えがみ ちなみ)』と武林盟の中核を担う『終南派(しゅうなんは)』|舞姫『伸月英(しん げつえい)』の対決、そして黒道『黒海(へいはい)』の若頭『黒嵜一槍(くろさき いっそう)』と武林盟『點蒼派(てんそうは)』の槍客『蒼天段(そう てんだん)』対決は特に注目が集まった。


 終南派は、武林盟の中でも速度と技巧に優れ、軽功は特に秀でている。それに対するは日ノ本一の剛剣といっていい自顕流。奇しくも女剣士同士、それも美少女の戦いという奇縁に注目が集まる。


「始め!」


 その声を合図に、先に動いたのは身長は低めでありながらも野太刀を扱うポニーテールの少女。江上千波だった。


 力強い踏み込みは一足で間合いを詰め、腰の鞘に納められた野太刀から繰り出される抜刀術は逆袈裟の軌跡を描く。


「【瞬閃・隼斗】」


 雷光のような一閃を月英は剣で受け止めながら、軽やかに後方へと飛び退く、が、それを千波は逃すまいと、更に加速し、振りぬいた太刀を返して振り下ろす。


「【瞬閃・天斬】」


 天を切り伏せんとする剛剣。それをいなし、月英は空中を軽やかに舞って見せる。


「凄いですね。龍雄さん」

「そうですね。柚恵さん。あの連続攻撃を凌ぐとは」

「けど、なんだか終南派の人、空を飛んでいるみたいじゃありませんでしたか?」

「そうですね。あれが軽功【飛竜在天】なのかもしれませんね」


 【飛竜在天】それは極めれば、空を自由に駆け回るとされる終南派の奥義ともいえる軽功である。


「さすがは、音に聞こえし剛剣。こちらも返礼をさせていただきましょう【玉簫剣(ぎょくしょうけん)】」


 姿勢を腰の位置まで頭を低くしながら駆け出し、そのまま連続突きを放つ。


 普通ならば無数の突きに押されて下がるという選択肢になる。


「なめるなぁぁぁぁぁぁぁあああああああああ」


 が、自顕流の剣士である千波には後退という二文字はない。その愛らしい容姿とは裏腹に気合とともにただ、突き進むのみに剣の雨の中へと突き進む。


「なんたる闘志。【飛燕穿林】」


 月英は、突きを引くと同時に体を独楽のように回転させ、その勢いのまま剣を横に振る。目にもとまらぬ虚を突いた一撃。確実に胴を捕らえた瞬間、月英の側頭部にガンという衝撃が走りそれと同時に数メートル吹き飛ばされて地面を転がる。


「こういうのを肉を切らせて、ぶん殴るていうんだっけ?」


 避けられないと悟った時点で、千波は半歩間合いを詰めると肘を月英の側頭部へと叩き込んでいた。


「凄い勝負勘ですね……というよりも、あの状況でも踏み込むとか頭おかしすぎますわよ」

「うちの流派じゃ、これくらいできないようじゃなきゃやってられないからね」


 負傷していながらも再び力強い踏み込み、いや負傷する前よりも鋭く力強い踏み込みからの袈裟斬りが繰り出される。


「ぐっ【落花流水】」


 力強く振り下ろされた太刀を月英は、流水のようにいなして攻撃につなげようとするが、お構いなしと何度も振り下ろされる剣の濁流に流水が呑まれていく。


「【乱閃・曽木】」


「くっ」


 月英は思わず下がってしまった。


「下がったね」


 それを逃すまいと、最大の力で踏み込む。


「【剛閃・刃雷】」

「負けられません! 【春秋大義】」


 繰り出される剛と剛の技がぶつかり合う。その衝撃はやがて甲高い音砕ける音を引き起こし終息する。


「はぁ……折れちまったか」

「……そうですわね」


 互いに見つめ合い。どちらともなく笑みを浮かべた。


「しゃーないか。剣がないんじゃ」

「そうですわね。引き分けですわね」

「はぁ……師範に怒らるかな」

「私も師や姉弟子たちに怒られますわね」


 見事な勝負を繰り広げた少女たちは、ため息をつきながら武台を降りるのであった。

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