129 比武見分
いよいよ比武が開始される運びとなった。今までのは余興も余興。いわばお遊び。これからが、この武林祭のメインとなる。
なにせ様々な門派だけでなく、政財界からも政府高官はもちろん、大臣クラスや財界のトップがお忍びで観覧している。
比武は36組を今までの成績をもとに下位、中位、上位それぞれ12組に分けられ大きなビンゴマシンから出たくじに書かれた名前を読み上げ、一度だけ対決する。最終的に勝ち星が多いチームが勝ちになるが、人数が異なる場合は勝率が高い方が上位とされる。
下位といっても、この場に残っているだけでも間違いなく実力者同士の戦い。加えて有名探検者チームの期待の新人同士の戦いは普段では見る事すらできない。しかも、本物の武器を使っている一歩間違えれば死と隣り合わせの試合である盛り上がらない筈がない。
「今の戦いはわかりましたか?」
既に5戦目がおわり、龍雄は全員に問いかけた。
「なんか魔法が遅れて発動したような気がするんスけど」
燕慈がそう感想を述べる。
「あれって、魔法を遅らせるディレイマジックですよね? それに別の魔法を同時に発動するダブルキャストも併用してましたよね?」
「さすが柚恵さんですね。その通りです。今の対戦の魔法師ギルドの『ウィザース』は魔法技術の研鑽に余念がありませんからね。新人でもあのレベルのスキルを使用してきます。それでも下位グループなのです。まぁ、魔法使いはこういうのには得手不得手が出やすいですし、集団戦となれば話も変わります」
龍雄は戦闘のたびに解説をしていく。
「次の試合から目に功力を集中してみてみてください。いろいろと見えてくると思いますよ。見取り稽古という奴です。自分ならどう戦うかも考えてみるといい勉強になりますよ」
そういいながら、先ほどの戦いを思い出しながら、戦ってみる。魔法使いは初手で視界を塞ぐようにあえて派手な爆炎を巻き起こしたが、それを隠れ蓑に三手先の展開も踏まえて、設置型の魔法もばら撒き、特定の場所へと誘導するように魔法を配置していた。これを初見で見切るのは厳しい。ただし龍雄の【金火神眼】でなら設置場所を看破することも、更に予知することも可能。それを踏まえて百通りのパターンを想定して完勝できると思い安堵する。
勝ち負けに限らず、龍雄は試合が始まってから同じことを繰り返していた。それも自分だけでなく、柚恵たち全員が戦う際の事も想定しながら予測を立てていく。
「今のが最後の今日最後の比武でしたがどうでしたか?」
その問いに燕慈が答えた。
「全員凄かったですけど……その、勝てると何となく思いました」
そして、全員が頷く。
「はい。わたしも皆さんなら可能だと思いましたよ。けど、何となくではなく、きちんと勝ち筋までを明日からの比武は観察してくださいね」
たまには師匠らしくしないとと思いつつ、龍雄たちは一日目を終えるのであった。
評価や感想、ご意見など時間がありましたらどうかお願いいたします。
ふと、思いついた新作の構想をまとめていたら、思いのほかそちらに思考をもっていかれて、少し停滞していました。
しばらく更新が不定期になると思いますが週一回は必ず投稿をいたします。




