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127 囲碁芸事

 碁の戦いは思いのほか盛り上がっていた。


 その中でも、燕慈は頭角を現していた。差し筋はほぼノータイムで刺し返し、攻め立てる。対戦相手は舌をまくことになる。


 連戦連勝と意外な才能を見せる中、燕慈の相手は軍略と戦略の天才『諸葛 朧(しょかつ ろう)』戦績は燕慈と同じく全戦全勝。


「よろしく……」


「こちらこそ、よろしくな」


 向かい合う、先手は燕慈。ノータイムでうつ。返す朧もノータイム。ただし、朧の打ち筋は定石に丁寧に打っていくが、燕慈の打ち筋は縦横無尽。朧から見れば、最善手と最悪手、規則正しく不規則な打ち筋、攪乱でも錯乱でもなく、どこまでも自由であり楽し気に空を飛ぶ燕。


 定石も王道もものともしない自由な打ち筋を王道で切り抜けるが、飛ぶ鳥に道は関係なく。


 それは、つまるところで詰みである。


 この朧の敗北は武林盟に衝撃を与える。なにせ武林祭はあくまでも武林盟の武威を広めるための祭といっていい。その証拠に、走破を突破した36チームの内、13チームは武林盟所属であり、一応、一流と呼ばれる探検者チーム10チームも突破しているが、こういった囲碁などでは惨敗している。


 そもそも、武林盟は半世紀前まで大陸で活躍していた。


 だが、ダンジョンの影響で中華連盟の混乱の際、武林盟は政府と分離を基本としていた為に単独で動いたために疲弊と混乱をし、勢力を弱めていた。それに対して天魔神教は、宗教であり、弱者救済という名目とともに政府との連携により勢力を拡大していった。結果、武林盟の武威は地に堕ち、結果、大陸の覇権を天魔神教を握られることになった。


 そして、追いやられた武林盟は日ノ本へとたどり着き、偶然、手に入れた『歓喜郷の鍵』おかげで、立て直しができるようになった。


 だが、その武林盟所属のチームが天魔神教と血教にも負けるという、三樽結果が見せられ、武林盟の長老衆は渋面を作らずにはいられない。


 囲碁試合の結果は


 一位 龍天武院 

 二位 諸葛世家 

 三位 天魔神教 


 この順位は、武林盟としては不服であり、天魔神教としては意外ではあるが想定内。血教はといえば、この手の分野ではどうでもいいのか、わざとなのか17勝17敗1引き分けという結果に抑えていた。


 続いての書画は、真守が大筆で一畳ほどの紙に見事な文字を書き上げてみせた。正直、芸術は感性であり、勝ち負けよりも出来上がった作品に対する審美眼こそが見られている。血教などは巨大なキャンバスにアクションペイティングで右腕と左腕がない青年二人がかりで作品を完成させた。南宮世家の今回の代表である『南宮 星(なんきゅう しょう)』は小柄で、女性と見紛う美男子で見事な水墨画を描き上げていた。


 この競技においては、絵心がある探検者もおり、短時間でも面白い作品を描き上げる者もいた。


 芸事は、紅骸慈が見事なジャズ演奏を披露してみせたのに触発されたのか、厄雲がメンバーを引き連れてデスメタルをやってのけるなどもはやライブ会場のようになった。それに触発されたのか、次々に様々なジャンルの演奏が広げられる。


 最後のおおとりは、菜桜と朱里による演目だった。菜桜の奏でる音楽あわせて、反物を風になびかせその上を舞う姿はまさに天女のようであった。


「あの衣装は……」


 その舞を見ながら、小さく呟き身震いするモノが一人。


 残すところは利き酒の試技となるのであった。

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