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108 無象散華

 龍雄の挨拶に開口したのは岩岸だった。


「思ったよりも解ってるじゃねぇか。そう探検者てのは、要は腕っぷしだ。ああだこうだと御託はいらねぇ。準備はできてるようだし、待ってな兄ちゃん」


「では、こちらへ参られよ」


 カンナは三人を案内する。


(確かに、マナ量は探検者のランクを決める一つの要点ですが……)


 マナ。呼び名は様々。例えるのなら、マナとは水の入った容器だ。マナ量はどれだけのマナを体内に宿しているか、そして放出量は一度にどれだけのマナを放出できるか。これらの二点が現在のランク決め基準になっている。覚醒者とは、マナの放出ができる者の総称である。


 モンスターは、どんなに低級でもマナの薄い膜で守られているために、一般人では傷をつけられない。むろん近代兵器を使えばそれなりに効果はある。だが、最弱のモンスターと呼ばれるゴブリンを仕留めるのに戦車一台が必要であり、弾数にも限りがある。覚醒者であれば、拳で倒すことは可能になり、超人とも呼ばれてはいたが、現代の覚醒率は99%。覚醒者でないもののほうが少ない。そうなると、探検者は増えそうなものだが、全体の1割くらいしか探検者に志願するモノはいない。むろん軍や警察といったのにも覚醒者は多いが、最大の理由は、リスクが高すぎるのである。


 なぜなら、マナと銃は相性が悪い。どんなに放出量が多くても、銃弾に込められるマナ量は口径と同程度。希少金属のミスリルなどを使えば話は違うが、正直、コストパフォーマンスは最悪である。なにより魔法を使った方がコストパフォーマンスも威力も安定している。なので探検者が銃を装備している場合は、銃の形をした魔法の発動体とよばれる補助具である。


 話を戻すが、探検者の戦いはようは水が入った容器で殴り合っているようなものである。だが、そこにスキルという要素が加わる。これは水を凍らせて殴るようなものであり、ランク差を埋める要因となっている。


 そして、その最たるものがSランクというランク。マナ量だけではなくスキルの特殊性が合わさったスペシャリティのランクがSランクであり、つまるところCランク程度のマナ量でもマナコントロールとスキル次第ではSランクという特殊ランクにはなることができる。


 それほどまでに、マナの扱いは重視され、それらを制御する術として、武功が注目を集めているのが現代の探検者事情なのである。


 つまり、Cランクの水沼と清田そして、Bランクの岩岸でも総合力でならAランクに対抗することは可能である。


「待たせたな。こいつを使っての試験になる」


 そういって岩岸が出したのは木製の人形を一つ投げ渡した。


「『エスケープドール』ですか」


「知ってるなら使い方は解るな?」


 『エスケープドール』は身代わりになる手のひらサイズの人型に象った木の板で、髪を結び付けて使用し、対象が50m以内にいると致命傷を受けたときに場所が入れ替わるマジックアイテムである。実戦では使いづらいアイテムな為にこういった模擬戦に使用される。


「合図はコイントス方式でいいよな?」


「地面に落ちたのが合図ですね」


「その通り。おれたちゃ古い人間なんでね。こういうやり方が性にあってるのさ」


 そういってコインを弾き上げる。


 コインは高く舞い上がりやがて――


 ――チャリン……――


 綺麗な金属音とともに地面に落ちるのが合図に、ぽっちゃりめの体系の男――水沼――が駆け出し、身の丈ほどあるスレッジハンマーを勢いよく振り回し龍雄に迫る。


「喰らうっす【スワンプ・ストライク】」


 振り下ろされたスレジッハンマーを龍雄は難なく躱すとハンマーは地面を殴りつけるが、殴りつけられた地面が沼へと変わる。


「これはどうするっスか?」


「どうするも。なにも【一葦渡江(いちいとこう)】」


 沼を平地と変わらない足運びで距離を詰める。


「武功使いっスか!?」


「【龍尾脚】」


 足払いで水沼の体は宙を舞う


「【龍硬連脚】」


 更にダメ押しと水沼に連続して蹴りを叩き込むと、スケープドールへと入れ替わる。


「水沼。なまってますよ【ウォーター・スプラッシュ】」


 清田が水の刃を三本放つ。


「【ロック・アーマー】」


 それに合わせて、岩岸が岩の鎧を身に纏い突進してくる。


「【龍咆破】」


 気弾を放ち水の刃を打ち落とすと、龍雄は岩岸の肩を踏み台にして飛ぶ。


「【龍皇脚】」


 そのまま放った跳び蹴りが、細身の清田の腹部に突き刺さり、スケープドールと入れ替わる。


「こ、この! 【ダイナマイト・タックル】」


 着地した龍雄に向けて、岩岸は全身をぶつけに行く。


「はぁぁぁ」


 それを迎え撃つように腰を落とし気合を込める。その構えに岩岸の脳裏に過去の記憶がよみがえる。


「その構えは!? まさか!」


 それは、はるか昔、若かりし日に受けた拳と重なり合い


「【龍硬拳(降龍拳)


 龍雄の拳は岩岸の岩の鎧を砕き顔面に叩き込まれ吹き飛んぶのであった。


 試合時間は3分にも満たない一瞬の出来事。


 だが、決着である。

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