104 所業軋轢
殲滅報告は完了と。いまの時代は便利ですね。フォーマットに報告データを添付するだけなのでスムーズです。昔は手書きで、報告書類をまとめて管轄の探検者協会出張所と都道府県の探検者協会支部に送付しないといけませんでしたからね。
「へぇそうだったんすね」
はい、燕慈さん。これが報告の手順です。しかし、こういう作業にも興味があるんですね。
「まぁ、探検者として、生きていきたいので。けど、こういうのが必要なんですね」
そうですね。探検者協会が募集している依頼を受けた場合には必要なんです。
「そうなんすね。けど、うちらでもそういうの受けられるんすか?」
協会関係の依頼は、探検者歴3年以上ないと受けられない決まりに今はなってます。抜け道としては、下請けに回すこともできますが、今回みたいなのは、地元の老舗クランなどの柵があるので、ちょっと喧嘩を売る形になりますね。
「大丈夫なんすか?」
そうですね。あまり褒められた手段ではありませんが、今回は名を売る為にわざと喧嘩を売りましたから。たぶん厄介事になりますね。
「龍雄さんて、意外と腹黒いところあるんですね」
強かと言ってください。法に触れない方法でかつ、こちらに一切の非がないので、難癖付けてくると思います。
「そこまで分かってるんすね」
こういうケースには慣れてますからね。だてに年を重ねてません。
「たまに忘れてしまいますけど……龍雄さんて48才でしたよね」
? そうですよ。なのでキャリアはありますからね。こういう場合は下手に小さく事を治めるのでなく、大事にしてしまうのが良いのですよ.
「具体的にはあるんですか?」
『ゴブリンキングの大角』を菜桜さんのご実家に売りました。
「えっと……」
燕慈さんは錬丹術師でもあるのですから、覚えておくといいですが、ゴブリンの角系は排卵誘発剤の材料になるんですよ。富裕層などでは跡継ぎ問題とかありますからね。需要がかなり高いのです。
「真っ黒だ! ウチの師匠思ったよりも黒かった!?」
こういう駆け引きも前職では当たり前だったんですよ。探検者がクリーンなイメージになったのは、ここ15年くらいですから、法整備が厳格化されたり、レジャー感覚でのポータル利用が可能になる前は、ヤクザな商売でしたからね。特に、わたしはスキルを失ったので、事務関連や法律、交渉とかなど、裏方仕事は結構やってますから。
「それなら、大丈夫ですか?」
いえ、大丈夫じゃないですね。既にあちらから、任意での出頭依頼状がきてますから。まぁ、丁寧に探検者協会本部経由で断りましたけど。
「えっと……」
任意でも出頭依頼状が出されたら、大抵は出頭するのが普通ですが、あくまでも任意なので無視してもいいのですが、次は出頭召喚状になるので、本部経由で理由などを添付して断りを入れてもらいました。
「断るのなら直接、断ればいいんじゃなんすか?」
いえ、本部を巻きこ……いえ噛ませることに意味があるのです。
「巻き込むて言いかけませんでした?」
おっほん。本部経由だと、出頭依頼状の正当性の有無にかかわらず、監査が入ります。なにせ、ゴブリンキングの大角は希少ですからね。難癖をつけて押収などする可能性もありますから。
「そんなことあるんすか?」
あったんですよ。着服。とか、ロンダリングとか闇市への横流しとか……
「探検者てもっとこう、明るいものかと思ってたっす」
多くは善良な人ですが、2割くらいはグレーなことしてますね。1割くらいはいるんですよ。
なので、この後のことを考えて根回しを済ませておいたので、あとはどうでるかですね。
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