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103 悪喰鬼王

 吞喰のゴブリンキングは龍雄を前にしても、気にせずにゴブリンの死体を貪り喰らっている。


「この行動、まさか【同族喰らい】もちですか」


 【同族喰らい】はダンジョン内のモンスターが一定数以上の数になったダンジョンで稀に所持者が現れるスキルであり、その能力は名前の通り同族を喰らうことで能力を向上させるスキルである。


「なるほど、間引き量が一定でダンジョンブレイクが発生しなかったのはこれが原因ですか。ですが、そのせいでF級のダンジョンにA級モンスターが誕生させることになるとは……はぁ、これ探検者協会に報告しないといけませんね」


 『アリクイ』行為が問題視されたのも、こういった事例が少なからずあるからである。ダンジョンの難易度は、ポータルから漏れる魔力量で決められる。だが、それはあくまでも初期だけで、定期的には行われない。さらに厄介なのは、地方の協会とクランとの癒着による誤魔化しという、別の意味での面倒な事案に龍雄は頭を抱える。


「これはもう八つ当たりです! 【龍硬拳】」


 龍雄が繰り出した拳を吞喰のゴブリンキングは躊躇なく腕で受け溜めるがはぜる。


「なっ、腕を犠牲にした!?」


『グオォォォォオ』


 雄たけびをあげると吞喰のゴブリンキングは口に手を突っ込み引っこ抜いた手には大きく禍々しい包丁が握られていた。


「【異袋】まであるのですか、しかもなんですかあの禍々しい包丁」


――解――

――【骨肉ノ禍太刀】――

――魔物の骨で作られた呪われた太刀――


 包丁が振るうとゴブリンの死体が浮き上がり斬り刻まれ、口の中に呑み込まれていき、腕が再生する。


「再生能力まであるのですか……なるほど。だから腕を犠牲をしてダメージを最小にしたのですか。これは侮れませんね」


――警告――

――吞喰のゴブリンキングの戦闘力上昇を確認――

――戦闘力30001――


 全体的な数値から僅かな上昇だが、それでも500近い上昇値は脅威である。


 龍雄の基本戦闘力は現在は45211。A+級になる。だがそれだけでは、勝てるとは限らない。例えば【龍硬拳】の今の威力は30000近いが仕留めるには至らない。


 探検者の戦いは戦闘力の比重やスキルの組み合わせこそが真髄であり、モンスターもまた本能的にあるいは理知的に使ってくる。


 その点でいうなら、この吞喰のゴブリンキングはある意味では極致にいる。防御特化の極致。総合力で龍雄の攻撃を受けきるだけの防御力。


 対して龍雄はバランス型。聖獣牌を使うことで特化することはできるが、それでも基本はバランス型なのである。例外とするなら鵬天が肉体を憑依した時はあるが、逆に武功が使えなくなるために、総合力では落ちる。


 更に厄介なのは『骨肉ノ禍太刀』これは振られるだけで、周囲のエネルギーを削り取り所有者に還元する特性。防御を無視しての攻撃。ただ乱暴に振り回すだけでも脅威でしかない。


『グフフフフフ、オマエ、ウマイ』


 体を震わせて笑い。そして、吞喰のゴブリンキングの肉体の変化し、背後から腕を生え、さらに腹部にも顔が浮かび上がる。


『ゲハハハハハ【吸魂喰身】』


 吞喰のゴブリンキングの体の大口が開きあたり一帯のゴブリンの死骸を呑み込んでいく。


「これはヤバいですね」


 吞喰のゴブリンキングは腕を振り回し、骨肉ノ禍太刀が振り下ろされる。


「【龍尾脚】」


 下段回し蹴りが炸裂し、吞喰のゴブリンキングの足が砕けるが、そくざに再生する。


『ゲハハハハ、オデ、ヅヨイ』


「【龍昇連脚】」


 構わずに下腹を何度も上へ上へと蹴り上げ吞喰のゴブリンキングの体は宙に浮くが、その体躯に似合わない体捌きで天地が逆になった体を回転させ腕を、骨肉ノ禍太刀を振り回す。


「【飛翔龍尾脚】」


 その攻撃の隙間を縫い、飛び回し蹴りを吞喰のゴブリンキングの背中に叩き込み、さらに跳躍する。


「【龍牙咬】」


 空中かかと落としを吞喰のゴブリンキングの股間へと叩きむと地面へと激突するも、なにごとがなかったのかのように立ち上がり、上空にいる龍雄に飛び掛かると殴り飛ばし、地面に激突した龍雄は、二度、三度と地面を跳ねながら吹き飛ばされる。


「はぁはぁ…凄い威力ですね。ただの殴打なのこれほどとは……フフフ、なんだか不思議で懐かしい感覚です」


 絶体絶命ともいえる状況。しかし、どこかワクワクしてる感覚を自分の中から龍雄は感じ始めていた。それは、かつて味わった感覚。若き日の思いが溢れる。


「もしも、攻撃系のスキルを持っていたのなら、今ので死んでました……一撃必殺に全てを賭ける。そう昔のわたしはそうしてましたね」


 龍雄は息を整えて深く腰を落とす。


「これに耐えたらあなたの勝ち。耐えられければわたしの勝ちとなるでしょう」


 『朱雀牌』を足に着ける。


「ふぅ……いきます」


 地面を蹴り加速していく。その動きに吞喰のゴブリンキングは怠惰にも放置する。


「【火功・龍皇脚】」


 炎を身に纏い突き進み、骨肉ノ禍太刀で受け止めようとしたが、刃が砕け、さらに吞喰のゴブリンキングの腹の大口へと突き刺さり貫き、吞喰のゴブリンキングの体を炎が包み込み焼き払う。


――討伐完了――

――『ゴブリンの森林砦』攻略――

――報酬――

――・ゴブリンキングの大角――

――・骨肉ノ禍太刀の残骸――

――・森林砦の残骸――


「なんとか倒せましたね」


 そういって、龍雄はダンジョンを脱出するのであった。

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