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09 仙境入没

 知らない天井ですね。


 気持ち悪い……二日酔いなんて、いついらいでしょう。


「お目覚めか主殿」


 えっと……どなたでしょうか?


「……改めて、艱難娘々(かんなんにゃんにゃん)と申します」


 あれ? なんか怒ってます。


「忠言申し上げますが、お酒は程ほどにされた方がよいかと」


 あっ、はい。それにしても、ここはどこで、この古書を抱えた美少女はどなたなのでしょうか?


「見た目の美醜に置かれましては、鍵の所有者を不快にさせない程度の見た目になるように設定されております。場所につきましては、ここは仙境・四神宿房にございます。主殿」


 仙境? 仙人が住む世界でしたっけ?


「主殿が使用された鍵は『四神宿房の鍵』と申しまして、それを扉にさして、使用すると、こちらへ通じるようになります」


 ……あの鍵、そんなに凄いアイテムだったんですね。


「説明をつづけてもよろしいでしょうか?」


 あっはい。お願いします。


「ここは天武神帝の武功を収められた仙境となっています」


 天武神帝?


「神仙界におられる。武の祖とされるかたが武を収められたのが、この場所です」


 なんか凄いところですね。


「ここには修練をするための施設が、三十五の房があります。もっとも今は、基本の七つの房のみが使用できます」


 なるほど。だいたい理解できました。


 それであなたは? 名前も教えていただければ嬉しいのですが。


「我は、主殿の修練を介助し試練を与えるものにございます。故に名などはありません。名と呼べるものは艱難娘々になるかと愚考いたします」


 うーん。それだと長いですし、なによりも味気が……


 では、名前をつけてもいいですか?


「主殿がその方が良いと思うのなら……ここにあるものは全ては主殿への供物にございますので、ご随意に」


 えっと、つまり、いいということですね?


 では、カンナ。カンナはどうでしょうか?


 安直ですが、呼びやすいのでこれでお願いしたいです。


「畏まりました。以後、カンナと名乗ります」


 喜んでいただけたのかはわかりませんが、嫌がってないのでよしとしましょう。


「では、試練です。こちらへ」


 さっそくですか、とりあえずついていきましょう。


「この仙境では外の世界の千分の一の時間しか流れません。ですが、滞在可能日数は354日となっており、再使用には、外の時間で一月ほど必要となっております」


 ということは、最大で外では8時間半くらいが経過しているということですね。


「今、居られるのは、禄存(ろくぞん)書房。そして、ここが、その中心のさまざまな書が収められた禄存書院となります」


 凄い立派な建物ですね。古代中華の様式のある建物ですが、新築のような新しさもあります。


 中も凄いです。ここにあるのが全て武功に関するものであるのなら……これだけで莫大な富になりますね。


「では、試練です。主殿。この書院内から『四神天武の書』を探してください」


 ちなみに、ここの蔵書は、どれくらいなのでしょうか?


「この書院内には、武功に関するモノだけでも、書が黄級が16,384冊、玄級8,192冊、地級4,096冊、天級が2,048冊。巻が黄級2,730巻、玄級が1,365巻、地級1,024巻、天級910巻となっております」


 凄い蔵書です。さてと、ここから探すとなると大変ではありますが……


「カンナさん、貴方がもっているのが『四神天武の書』ですよね?」


 おぉ、驚いています。種を明かせば、昔、秤さんに同じことさせられたんですよね。資料を探せていわれて資料室に入れられて……


「お見事。ですがこれは『四神天武の書』であって『四神天武の書』ではありません。あなたが、この書を完成させたとき真の『四神天武の書』となるのです」


 最初の一ページだけ書かれてますね……懐かしいですね。夏休みの日記最初のほうだけ書いて、あとから書かなくなるとか懐かしい思い出です。


「主殿、次に必要なのは、内功を鍛える心法と進言します。その為に記されているのが、この書に、収められた秘訣にございます」


 心法、特殊な呼吸法により、身体能力、功力、内功をあげる武功の基本となるものですね。


「それでは、心法の修練の場にご案内いたします」


 ここは不思議な場所ですね。春のように心地よさもあり、非常に手入れがされています。


 案内されるままにたどり着いたのは、中華の寺院のような建物ですね。


「この階段から先が簾貞霊房(れんていれいぼう)となる。中心にある建物が、簾貞霊院。霊気、主殿にはマナといった方がわかりやすいのであろか?」


 そうですね。ですが、分からなくもないので、おまかせしますよ。


「ふむ。了解した。一応、主殿と知識的なつながりがある故に、齟齬がないようにお伝えは心がけるが分からなければ、尋ねられよ」


 あっ、だから言葉が伝わるのですね。なるほど得心がいきました。


「ここでの修練は、霊院の中心にある星霊雲の上で座禅を組み瞑想をされよ」


 それはいつまででしょ?


「功法の段階は入門、修練、小成、円熟、大成、円満、絶頂となる故、今回は入門に達するまでが望ましい」


 もしかして、できるまででしょうか?


「うむ、その通りである。だが、安心されよ。この霊院ないは霊気が満ち居る故に、呼吸さへしていれば、餓死することない」


 霞を食べてろと言うことでしょうか?


「さらに言うなら、この主殿であればこの仙境の中でなら年はとられることはない」


 それって『返老還童』の影響なのでしょうか?


「うむ、その通りだ主殿。では、こちらへ座られ、『四神天武の書』を胡坐の中心に置き、書かれている文字を思い浮かべながら瞑想をされよ」


 おぉ、この星霊雲とは低反発マットレスみたいですね。座布団程の大きさかないので、眠るのはできなそうですが……さて書かれていたのは…


 ――祖無霊有全宇汝宙天廻地身――


 意味はわかりませんが……ですが、ふむ……なるほど……この発音が呼吸のリズムなのでしょうか?


 祖無……これは始まりは無ということでしょうか?


 霊有……意思が生まれた?


 全宇……全て…たしか宇には世界や無限の空間、精神という意味がありましたね。


 汝宙……宙は流れる時間や無限の時……自分は時? 意思……流れ……


 天廻……世界を巡る流れ……意思……霊気……


 地身……大地………身……器……意識を広く……


 何かが見えてくるような……


――アカシックレコードへの接続を確認――


――システムとのリンクを開始します――


――リンク完了――


――スキル【神識(システムウィンドー)】を獲得しました――


 は、はい? な、なんですか、目の前に、なんか薄い板みたいなのが……


「お見事。僅か三日で入門に至るとは思いませんでした」


 へっ? 三日? そんなに? いえ、それよりも、この薄い板は見えてない?


――是、このシステムウィンドーは貴方にしか知覚できません――


 もしかして、私の考えに反応している?


――是――


 とんでもないスキルを手に入れたのかも知れません。

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