00 起死開幕
日本ダンジョン戦記を掻いておりましたにゃごです。
本日より迷宮×功夫を投稿を開始いたします。本日は6話一気に投稿します。
明日より、朝6時にストックがなくなるまで連日投稿になります。
左腕は完全に折れましたね。さすがはワンダー。桁違いの強さです。
ガードしたのですが、肋骨も折れてますね。ただ幸いといいますか、強すぎて骨が砕けたおかげで飛び出してこなかったことは良しとすべき事ですね。わたしの弱さが幸いするとは皮肉としかいえません。
「ブモォォォォォォォ」
さて、一撃で仕留められなかったことがどうやらプライドを傷つけたみたいですね。雄叫びまであげて……ですが、これまた幸い。これで近くにいる人たちにも、この化け物の存在が伝わるでしょう。
ブゥゥン――
おっと危ない。いや、今のを躱せたのは僥倖でした。あんなデカいこん棒で頭を殴られた熟れたトマトのようにグシャグシャになってしまいますね。まぁ、通常のオークにすら勝てないのに『ワンダーモンスター』シャドー・オーク。に勝てるはずありませんね。
そもそも通常なら2メートルくらいの体長が3メートルもあるうえに、電柱の様な、こん棒を小枝みたいに振りまわすとか、本当に理不尽です。
ドン!――
ふぅ……集中しないと、今の打ち下ろしも受ければ、お陀仏ですね。悪運でしょうかね? ですが、おかげでシャドー・オークはこちらを見てくれます、実にありがたい事ですね。
それにしても、奇縁ですかね……今日であったばかりの若人の為に死力を尽くす。悪い気はしませんね。いえ、それどころか、いい気分です。不惑を過ぎて天命を知る年に近づきましたが、なるほど昔の人は良く言ったものです。どうやら今日この時、死力を尽くすのが、わたしの天命だったようですね。
「竹田龍雄。46歳。現在、求職中! いざ、尋常に勝負です!」
いいですね。名乗り。誰も聞いてないですが、憧れだったんですよ、シャドー・オークさん。こうやって強敵に立ち向かうヒーローになるのが、臆病でどんくさい、取り柄といえるほどのスキルには恵まれませんでしたが、それでも、仲間の為に、誰かの為に命を懸けて戦うこと、一度はやってみたかったんです。勝てないでしょうけど、それでも、一撃だけでもあなたに手傷を負わせて見せますよ。わたしがあなたと戦った証を残すために!
ブゥゥゥゥン!
怒り任せの左横薙ぎ、何となく躱せそ……
「がはっ……」
はぁはぁ………裏拳一発ですか………どうやらここまで……ですかね………今ので体中の骨がガタガタです。やはり、わたしじゃ無理なんですかね………けど、諦めたくはありませんね……一発……一発だけでも………意識がなくなる前に……一歩でも引くことなく……もう、わたしには行き場ないのですから……前に一歩進んで………ふふふ……不思議な気分です……誰かの陰に隠れていたわたしが……まだ戦おうとしている……本当に不思議です……何故でしょうね……
本当に……何故……もう死ぬのに?
けど、まだ死んでませんね……
でも、すぐに死にます……
死ぬのは……嫌ですね……
あぁ……そうか…
なんだ、簡単じゃないですか……
なんだかんだといっても……
死にたくない……
死にたくないから戦うんじゃないですか……
そうか……わたしは、まだ生きたいんだ!
「フフフフ……おかしな話です……死を目前に悟るとは……でも、なんだか不思議な気分です……」
世界がゆっくりと、まるでわたしだけが動いているような……錯覚ですかね? それでもいいです……
腰を落とし、右足を前に、左足を引き、そして体内の『氣』を右手の掌に集中……はて? なぜこんなことがわかるのでしょうか? ですが、今は構いません……
「『柔掌法・招式・通天象』」
掌で臍にあてたら、勢いを殺すことなく前転しながら肘を鳩尾に叩き込み、そのままの勢いで、顎を蹴り上げる!
「ぶぎょっヒ!?」
確かな手ごたえが……倒せたのですかね……もう、意識が……もう少し、生きたかった……ですね……
――ワンダーモンスター『シャドー・オーク【ネームド:貪吞】討伐――
――討伐者『竹田龍雄』――
――『四神宿房の鍵』獲得――
――ストレージに収納されました――
――悟性を獲得しました――
――24時間後『換骨奪胎・返老還童』が開始します――
今、何か聞こえたような……意識がもう……
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