第1話 絶望
(*6/8、修正しました。)
俺が鑑定でFランク職業、『フラグ建築士』持ちだと分かってから一夜が明けた。
そして俺の幼馴染でSランク、『剣聖』判定を
受けたリムルはまだ帰ってきていない。
きっと今頃剣を見繕ったりしているのだろうな。
俺はつくづく自分の弱さを痛感した。
まさかこれ程だったとは。
しかし俺も成人の身。
両親が冒険者になった時のために剣を買ってきてくれていた。
それが何より俺の罪悪感を強めた。
そのことをなるべく顔に出さないようにしながら俺は朝食をとりにダイニングに向かった。
「…おはよう、母さん」
「おはよう。ラント」
母さんは笑っていた。いや、笑ってくれていた。
必死に、顔に出さないようにして。
母さんもあの事を気にかけてくれているのだろう。
しかし俺は分かってしまった。
こういう時の親の気遣いには気づくべきではない。
しかし俺はこういうことに関してはなぜか分かってしまう質なのだ。
親に気を遣わせている。その事実がまた俺の胸をキュッと締め付ける。
そして俺が朝食をとりおわると、母さんが話しかけてきた。
「……ラント。本当にごめんなさい…!」
母さんの頬を光に反射してキラリと輝くものが伝っている。涙だ。
「いや、いいんだ。母さん達は悪くない。俺の不出来が悪いんだよ」
そう言って俺は自嘲して見せた。
しかし俺がいくら話しかけてもごめんなさい。ごめんなさいとしか母さんは言わなくなった。
その事がきっかけで俺の中の何かがプツリと音を立てて切れた。すると俺はもう何もかもどうなっても良くなった。
……まあこんな世に未練なんてないし、いいかな。
俺は本格的に死を考え始めた。
しかし一度くらいは冒険者ギルドというものに顔を出してみたかった俺は、最期に行く場所をギルドに決めた。
***
俺がギルドに入ると、もう早速笑いものだ。
人目を憚らず俺の事を見て大笑いする者もいるし、
影からプッと笑っている者もいる。
何より質が悪いのは俺にわざと見せるように
ヒソヒソと話す者だ。
……すっかり有名人になったな、俺も。
俺が虚しく思っていると、いきなり扉がバン!と開いた。
その方向を見ると…リムルがいた。
いきなりのリムルの登場に、他の冒険者達は
ザワザワして、落ち着きが無くなった。中にはいきなりゴマを擦り始めるものまでいる事態となった。
しかし俺は少しだけ、ほんの少しだけだが違和感を覚えた…リムルに。
そう。いつもと何かが違うのだ。
見た目、話し方、素行、それらはいつも通りなのだが、何かが引っかかる。
どうやら俺以外にも気づいた者が居るようで、
俺が首を捻っていると俺に向かって
ちょっとこい、と俺に人差し指を向けグイッと引き寄せる真似をした。
俺はその人の元に向かった。
彼はニルというらしい。
「いいか。よく聞け。一度しか言わねぇぞ」
ニルさんが俺を真剣な表情で見つめる。
それに俺も顔を縦に振って答えた。
するとニルさんはとんでもないことを言い出した。
「……あの嬢ちゃんは洗脳されている」
【最後に】
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