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銀髪の殺人鬼(シリアルキラー)   作者: もときち
9/15

シリアルキラーの誕生08


「ずっと話してばっかで疲れないか?、紅茶持ってくるよ。」


「ええ、ありがとう。でも、デザートは?」


「なんだ、腹減ったのか?まぁそれもそうか。」


時計を見ると既に午後14時を回っている。テイルが話し始めたのは午前9時頃だったか、すっかり昼食を過ぎてしまった。


部屋を出て階段を降りてリビングに行き、台所にある市販のティーバッグを一つ取り、順を追ってティーポットにお湯を注ぎティーバッグを入れる。

ちなみに冷蔵庫は空に近い。俺は自炊はほとんどしてないからな。


なんて事もない簡単な事だ。なんて事も無かった日常に何の準備もなく突然現れた同年代に近いその女性は、やはり幻想的で、特殊で魅力的な人だと思う。今こうして目の前に存在しているのが夢のような事なのに、他世界から来たと言うこともまた嘘のような夢のような話だが、あんな突然の展開からとんとん拍子で話されると、嘘でも聞いてやろうと思うが、あれは違う気がする。


というのも、彼女の表情は心在らずのようで、また嘘にしてはそこまで残酷な話にする必要が無い、嫌がらせと言うには苦すぎて、オチも何も無いからだ。実際聞いている俺本人は何も楽しくはない、でも時より視線を窓の向こうに寄せたり、下を向いたりする時の瞳は、、言い表せない。


俺は正直ろくな経験をしてこなかった方だ、そんな俺でも唯一気づいたのは、彼女は俺に話しているというか、自分自身を振り返っているような気がした。


果たして、俺に来るまでを話し終えたが最後、テイル・ケルウィーはどうなるのだろうか。





部屋に戻るとテイルは、先程まで座っていた窓際から移動せずただ窓の向こうを見ている。


「持ってきた、、ほら、あとデザートは無かった。」


紅茶を入れたらティーカップを渡す。


「ありがとう…」


テイルは1口飲んだあとで、続きを話しても?と断り、俺はただ頷いて、ティーカップに口をける。


ティーカップを持った手はなんとなく力んでいた。




(血が足りないな……何か斬って血を吸わせろ……)


そう頭に話しかけてくるのは幻聴か、いや刀の中にいる黒豹だった。


それと共に微かな頭痛と焦燥感で瞼が軽い痙攣を起こす。


「分かった……。」


魔界には大きな城とその城壁からなる周りに広がる城下町。あとは各地に小さな集落があるくるいだ。その他はほとんどが平地で静まり返っている。というか魔物たちが生息していたりする。


あとは荒野や砂漠が永遠に続いているだけ。そこに転々と小さな集落はあるわ。兄さんが倒した魔王の時代は酷く荒れていて物騒な事ばかりだったから、魔界の中でも下級の魔界人(容姿が人間と変わりなくて、特に能力も無い)は怯えて離れた地に家を建てて暮らしてるわね。


まぁ、私の疎開先は異例だったのだけれど……。


魔界って案外それだけよ、本来人間にとっては死後の世界。だから魔界がある意味は単純に地獄に行く前の地獄(仮)を見てもらうために、容姿が恐ろしい魔界の住人たちを先に見てもらうことによって恐れ慄いて改心させようと、神が作った産物よ……きっとね。


まあ最も、産まれた時から死後どうなるかを知っているなら初めから地獄になんて行かないと思うけど……まあそこら辺の事情なんて知らないけど。


ああでも、人間って案外簡単に地獄へ落ちるから気をつけなさい?自分の誕生から死ぬまで、罪状も何もかもを裁判の判決台の前で述べられる、それを聞いて逃げたくなるやつはだいたい暗いところに行き着く、そこが魔界の入口で、地獄への1本道よ。


天国に行ける人間は極わずか……って、聞いたことがあるけど、気になるなら死んでみる?


それは残念、じゃあ、話を戻すわ。


それから私はただだた頭に悲鳴や頭痛を抱えたまま歩き続け、城下町に着いた、、丁度夜だったわ。雨も降ってて、血でいっぱいの身体とぼろぼろの身にまとっている布は少しマシになった。


いつもの魔界ならこの時間でも常に酒乱した住人たちで騒がしいのに、まるで消えたみたいに空になっている。兄が魔界を変えてから、本当に安泰になったのかな…?


まるで世界には私一人だけになった見たいにね。


でもおかしい………うるさい……うるさい。


頭が痛い、、耳鳴りがする。悲鳴がする。雄叫びがする。威嚇されている感じだ、怯えてる?震えている?私が叫んでいるの?いいや今この場では雨の音しかしていない筈なのに…誰もいない…違う?…やけに頭から離れない……。


今私は……また殺したいと思っている、血に飢えていて、息切れが止まらなくて、震えだして……誰でも、何でもいい…生き物なら斬り殺したいと。


(ようやく理解したか、だったらはやく斬ろうぜ?)


刀の中の悪魔がそう告げる。いいや、魔獣だったか、豹だったか、今はそんな事言われなくても分かっている。


あの肉の大部分を斬りつけた時の感触が蘇り、体温が一気に上昇するのを深く、身体で感じる。


すぐ側の宿屋に入ればそんなの簡単だ…二階建ての建物を見上げてみればほら、、あんなにも明かりが点いている……何をするかは決まっている。


もう私は飢えた獣と同じだっだ。荒い息使は見るからに殺気を放っているのはよく分かるくらいに。鏡がなくたって私は見るからに殺人鬼、その姿だ……自覚してる。







風混じりの雨の中、ぼろ着の少女は左手で刀の鞘を持ち、足早に宿屋へ向かう。


右手は既に(つか)の縁を持ち、何時でも抜けるように構え雨地を弾きながら進行する。


宿屋の受付は入口から正面、受付の宿主が1人立っている。細身の鬼で……そうね、人間界では大人の平均身長と言える高さね。


客と宿主の間には受付時に部屋を選ぶ為、また先に宿代を支払うために宿主を囲むようにして仕切りを組む台があるのだが、そんな物は何の盾にもならない。


「ん?、、え、、ちょっ……」


私の凄い形相に宿主は思わず後ず去る1歩目を踏み出す頃にはもう私の銀の刃は既に抜かれている。


宿主から見れば1歩下がった所で、私が突然にして目の前に、そしてその細長い剣が抜かれ真横に有るのに驚いた時、急に自分はバランスを崩し床へ真っ逆さまに落ちていく……はずだけれど、何故か、何故か自分の身体が棒立ちしている……。


と言ったところね、宿主の頭だけが床に落ちたんだから。


その後まもなくして一刀両断された首から蛇口を上に曲げ捻ったように血が溢れ出て、身体を赤く染めている。


そこで私は不意にその姿をただじっと見つめて……焦燥感にも似た、それとも何か動揺している様な、体の中を攪拌(かくはん)してるみたいに身体を血が巡っているような、そんな気持ちになり呼吸が上手くできない…。


でも私はその時思った。これは違うと感じてしまった……。


そう、もう後戻りはできない。それは殺人鬼としての覚醒で、私の心の奥底に何かが1滴染み渡たり濁らせた新たな感情。


("悲鳴が聞けないんじゃ殺しても意味がない")


………………。


すると同時に、黒豹が脳裏で歓喜する。


(ソウダッ!、良くぞ気づいたぞ小娘よっ!貴様こそ我を扱うに相応しい存在ダッ!)


始めから息の根を斬るのではなく、手足を斬り苦しみ悶え暴れ叫び、狂乱する姿を存分に味わってから根を斬るが良い……なんてね、我ながらどうかしてるでしょ?その通りよ。


「ええ、、きっと、、その方が、楽しい……聞きたい、、私を閉じ込めたあいつらみたいに、、泣きわめいてくれるはずよね、、ふふふふ!、あはははっ!そうと決まれば行きましょう?!この宿に何人か居るはずだものっ!」


その時の私はただこの芽生えた欲望を満たしたい一心で動く獣の度を越した、そんな尺度では図りえない奇獣と化していた。


手前から順に、奪った合鍵を使って部屋に入って、鉢合わせした獲物の四肢を瞬時に斬り落として、その場に転がせて、発狂させて、斬って、殺して、部屋を出て、また隣の部屋に鍵を挿して開けて、瞬時にまた四肢を斬り落として、発狂させて、苦しみ悶えさせて、軽く遊ばせてから斬って殺して、また部屋を出て、隣の部屋に鍵を挿して、開けて、斬って、苦しませて、いたぶって、飽きたら斬って殺して、また隣の部屋に行くの……。


殺って行く途中で察しの良い獲物は身構えて椅子でも投げようとするのだけれど、私の目にはその動作の一つ一つが鮮明に、スローモーションに映されるから、直ぐに両腕を斬り落としてはベッドに押し倒して、ベッドに

立ち寄って腹部を裂いて鳴かせるの。


「うぐっ!うあああああああああ!!はぁっはぁっ、はぁっ、はぁっ、うぅっ!!ぐっ!!」


ふと私は首を傾げてその獲物に疑問を投げる。


「ねぇおじさん、お腹を開けても口から大泣きするのはどうして?お腹の方が大きいから、その口から鳴けばもっと大きな声が出そうなのに、」


なんて馬鹿なの、なんて思うけど、当時の私じゃ知らないのも当然か。


恐怖で発狂し暴れ出すも自由に動けないようで、私は足で動きを止めて、そのまま首を斬り付けた。


「……もう、充分楽しんだ、、」


私はその場に立ち尽くし、、呆然と自分のやった様を見つめる。


ベッドにスタンドグラス、小さなデスクと椅子、小窓があるだけの小さな部屋には今、真っ赤に染っている。真っ赤というより赤黒く、ベッドに倒れている獲物……私の全身は真っ赤だ…当然私の血ではない……。


先程までの悲鳴も、唸り声も、甲高い笑い声も、今では静まり返っている。


なんで私……こんなことしたんだっけ?


本当に、もうとっくに、、ええと……


…ああそう。バグってるってやつ?


もう既におかしいのよ、ここまで聞いてて当然の答えよね、、同情しないでよ?いや意味わかんないか……。


その場の何匹もの獲物を斬ったあとのこの風も吹かない間がとても不思議な感覚だ。体が宙に浮いたような感覚がして、きっと激しい動きをした体はまだ早い速度で脈を打っている音が大きく響いている。


「はぁ、、疲れた……」


私は刀と鞘を手から離して床に転がし、その足で宿部屋のシャワールームに入り、そのボロ着を脱ぎ捨てて蛇口を捻った。


一瞬心臓を掴まれたような、全身を震わせる冷水が私にはちょうど良かった、身体が火照って仕方ないから。


「ふぅ、、やっと治まってきた…うるさい声、、頭もいたくない…」


なんて1人呟いて……徐々に理性が戻ってくる感じを受け止める。


バスタオルで体を拭う。


(流石に服、探さないとな……)


バスルームを出て、その部屋を後にして、静まり返った部屋を点々とし私と同じ同種の魔界人の死体のある部屋に辿り着く…まあ言っても背丈が一緒というわけは無いけど、着れないことも無いし。どうせ所有していたバッグに着替えが入っているはず。


部屋を探し始めて見つけた、四角くて少し大きめな、上品そうなブラウンの革のトランクに触り、両脇のチャックを見つけて開けると、そこには純白のワイシャツと、漆黒のロングスカートが入っていた。これだけあれば充分よね。


服の襟元を掴み引きあげて軽く全体を広げてみたら、割と自分の背丈に合っている気がしたから、袖を通してみると、特に違和感もなく丁度良かった。続いてスカートも、自分の腰まで上げてフォスナーとボタンを閉めると、足で引きずる事もなく、バランスが良かった。


(まるで私の為に用意してくれたみたいね。)


これで良しと踏んだところで、もう一度トランクを眺めると、そこには黒い靴下が1セット。ダークブラウンに真紅の靴紐の革靴が並んでいる。これも服と同様に、サイズが丁度良かった。


これ確かここ(人間界)に来た時に誰かから聞いたけど、ローファーっていう靴なのよね。


他には靴紐と同じ真紅のリボンが入っていたけれど、それはいらないか。別にお洒落をしたい訳じゃないから。


とふとトランクの上部、トランクの内側のオープンポケットに、四角い紙が挟まっている。


(手紙、、かしら?)


手に取ると、そこには、



"親愛なる娘へ、父より愛を込めて"



……と。


人を殺すって、その人の全てだけでなく、その人の周りの人からも奪う事になるんだとその時初めて実感した。


なんて言うか息が詰まってきて、見ていられなくなって、、怖くなって、、震えてきて、何かこうさっきまではあんなに血が騒いで居たのに、落ち着いてみて、今更になって罪悪感が自分を襲ってきた


(私は、、なにしをしたのかな、、とても、酷いこと……?分からない、知らない、、私は、、何方にしても。)


そうよ、後には戻れないの。なんて、今だから言えるけど、その時は酷く混乱した。


とても恐ろしい事だと、思ってしまったから、もう自分の犯した罪を、罪と自覚してしまったから。


「わたし、、なんで、こんな、、したん、だっけ、、」


(オマエが殺ったんだゾ?全て、ニコニコしながら、俺様を使いぶった斬って、いい感触だろう?)


「…わか、、ない。、悪くない、悪いことじゃない…私が生きるために必要な事だから、悪いことじゃない、生きる為、動物を殺して食べるのと同じだわ、、そうしなきゃ頭がどうにかなりそうなの、全然悲鳴が止まないし痛くて、息が苦しくなってきて、周りの音が聞こえなくなりそうで、恐くて、怖くて……だから仕方なかったんだよ、、」



(契約上獲物を斬ってくれなきゃならないガ、、オマエ、楽シンデタダロ?)


「そんな事ないっ!」


いいや、、確かに、頬がさけるほど口が開いて声を出して笑っていたきがする。


そしてまた脳裏にフラッシュバック…私は再度、現実逃避する様に哄笑した。


「ふふふ……ふふっ、あははははっ!あぁおっかしい!、黒豹さんっ、私、壊れてるよね?!」


哀れなのか、愚かなのか、その両方か、悲劇的で過激で極悪な、無邪気でいて残酷、そんな意味不明な少女の瞳からは先程浴びた水が流れ頬を伝っている。


ええ、おかしいとも。もう初めは結構混乱してたからね。笑える?笑えない?


黒豹は何も言わない。


ふっと我に返ったように口を閉じると急に悪寒がして足先から順を追うように骨の一つ一つが揺れ始めて、足全体に広がったあたりで立っているのがままならなくなって、足が1歩下がるとそこには別の部屋に置いてきた刀が鞘に収まり置いてある。


トンッと足に当たってゾッとしたのと同時にそれにつまづいて尻もちをついて倒れて、その時にはもう自分の体が自分の物じゃ無いみたいに感覚がしなくて、目眩がして、でも冷や汗と涙が流れる感触だけは鮮明で、視界も悪くなる。


「はぁ、はぁ、はぁ、」


(お前はこの先も斬リ続ケナキャならない、そう契約シたからな、慣れちまえば簡単だろう?、コレダケ出来れば充分ダ。)


頭の中に黒豹の声が響く。


(とは言え今日はもう俺様も満腹ダ、また欲しくなったら合図を送ル。)


私はなんの反応もせず固まっていた。


思考が停止していた…。


どれくらい静止して居たかは分からないけど、そんなに長くなかった。


私は本能的な動きで刀を持ち抱えて、牢屋でもないのに空き部屋の隅にへばりついた染みのように角に寄って座った。


まるで檻にいた時と同じね、広い所は落ち着かない、そんな感じ。


急に私は何に怯えてしまったんだろう。


戻りたい訳じゃないけど、きっと扉の向こうの、また新しい獲物を待っている感じ?でも当然その先はない、何も起こらない、誰も来ない、ただ時間が過ぎる。


「……お腹、空いた、喉、乾いたな。」


なんて端的に思った事を口にしてみる。


「いち、、にー、さん、、いち、、にー、さん、、、もういいや、外に出よう。」


私は立ち上がり部屋を出て、宿屋を発つ。


それまで荒れていた心など無かった様に、ごく普通に。


ええ。頭の切り替えよ、まぁ5まで数えても良いんだけど、私は3かな。やってみるといいわ、意外とこれでスっと自分の気持ちをリセットできるのよ。


人によるけどね。

皆様お疲れ様です。


前回の投稿からまた半年は経過するのかと思っておりました、自分でも、

ですが思ったより物語を進める時間を作れたのと、意欲的に取り組めたので、今回は早めに投稿できました。


また毎度読んでいただけるというのを確認確認しているだけで励みになったりして、今回みたいな感じになったかと。


とはいえ次回はまた期間が離れてしまうかもですが、絶対そのままお釈迦にはなりませんので、こんな下手な文章力ですが開いていただき、読んでいただき誠にありがとうございます。

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