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銀髪の殺人鬼(シリアルキラー)   作者: もときち
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シリアルキラーの誕生07

ここまで聞いて本当に自分のいる世界とは別の世界で起きていることだと実感はするが、だからこそ同情なんかよりも先に、どのようにして彼女はこの世界に来ることが出来たのだろう。


そして、彼女の肌に離さず持っているその刀は、きっと獣だけじゃない。


人も斬ったはずだろう。そんな気がする。


俺は固唾を飲んで続きを聴いた。



体は嘘みたいに軽くて、全身に勢いを感じる。その刃先の長い白い刀を、思うままに振りかざすだけで、鮮やかに獣を一刀両断。獣の肉が裂け、赤黒い血が吹き出るその血飛沫はとても鮮やかだったのを覚えてる。


いや正確には、そう映っただけよ……実際汚いでしょ?


「なんだ、、こうすれば良かったんだ……。」


凄まじい奇声を上げ獣の目は制止して色を無くし、血だけがまだ流れ出て辺りを赤く染めている。


この光景をただじっと眺めていた……。


「すごい!素晴らしいぞ!能力の開花だっ、大成功だっ!」


檻の向こうで科学者達の歓声が上がっている。私はその手にした刀に礼を言うが、でも刀の中の主は私が言葉を発する前にこう言う。


(マダ契約シタバカリダ……)


「うん、、」


それが刀だって知ったのはその声の主に教えて貰ったから。でもなぜ物が喋るのか、自分が恐怖から逃げるために作り出した幻か、それとも本当にこの刀は生きていて、私に囁いているのか。


ただあの時、その光に手を伸ばした時、真っ黒い煙が私を包み、私の目の前にまた別の大きな魔物が現れた所からそれが始まった……。












「何が、、もしかして……しんだ?」


「死んじゃいねぇさ、まだな……」


その声はすぐ近くからする。


「だれっ?」


「俺は黒豹、てめぇの掴んでる刀に憑いてる魔獣だ。」


と背後からあの獣と同じくらいの大きさの豹が私を見下ろしていた。


「わ、私は、、死ぬのっ?」


「条件次第だ……生きたいか?」


その目は私を逃す事はない。私がもしその目を逸らそうものなら体を引き裂かれるだろう。そんな気がして金縛りに似た緊迫感で、目を閉じることさえ出来ない。


「じょう、、けん?」


「……そうだ。ただでは助けない。俺様と契約しろ。」


それが私とこの黒豹との、切り離すことの出来ない契約。だがとうに賽は投げられているも同然、暗黒な視界が元の情景にちらつくと、獣の爪は私の隠れている穴を掘り進め、もう近くまで来ている。


選択肢は2択、契約して生き抜くか、死ぬかのどっちかだ。


どちらを選んだかはもうくどい話ね、当然前者を選んだわ。すぐ側に脅威が迫っているのに冷静にしていられる訳が無い。


「契約するっ、、するっ!」



「あぁ、確かに聞いた、ククッ、しかし内容は聞かなくていいのか?」



「いいの、私は、、私はもう……」




 ※


(ここからは中略よ…記憶が無いの。)






それからどれくらいの時間?いいえ日付か、、それとも月が、もう年も周っているかも。ずっと長い暗闇の中で、獣を切り倒し続けていた。息をするように、何匹も、何匹も……。


「よし、今日のデータはこれくらいにして、また明日にしよう。獣の在庫も少ないからな。」


「あれも安くないからな。」


白衣の魔界人達は楽しそうにゲートを明け、隔離室への一本道へのゲートを開く。


「ねぇ、、まだ足りない、、もっと斬らせてよ、」


「いやっ、今日はもう終わりだ、明日まで我慢しろ、早くゲートを潜れ、」


観察室からの光を浴び、科学者たちのシルエットだけが見える…この時ふと、高く跳べば届くのではないかと想像した。


「外へ、行きたいな、もう飽きた。ええそう、、もう飽きたわ。獣を切るのは、」


「な、何してるんだっ、早く戻れ!」


科学者らに頭を上げ睨みつけると、弱々しい小動物のように震えだした。その様がなんとも滑稽で、私は直ぐにそれまでの哀れな、悲劇的な顔を崩してしまった。そして口角が上がって、声が漏れて、高い声が溢れた。


「ふふっ……ふふふっ、あはは!あはははは!!!!」



「なっ、、なぜ笑うっ?どうしたんだ?」


「どうって、、魔物はいつも私に喰らいついて来るのに、貴方達は怯えてる。これって、ここに来た頃の私と同じじゃあない?」



「くっ!、いいから戻れっ!お前は実験用のモルモットにすぎないんだからなっ、」


「ふふ、、はいはい、」


まさに私はここで壊れたに違いないでしょうね……。


変わった。外れた。堕ちた……なんて表現すればいいのかは任せるわ?


この頃からもうここを出ようと考えていた。

だから監視がどこから出るかも、私の檻まで行く通路のどの場所に扉があるかも知っていた。


ただその先は全く皆無。未知の世界……。


それでもいい、こんな所には飽きた。もっと別のものが、"斬りたい"と、刀の中の黒豹が頭の中に囁いてくる。



「ええ、、私も出たいのは一緒……。」


でもいくらこんな力を得ても扉を破壊するなんて無理な話、機会を伺うしかない。次の実験日を狙おう。


出られるとはまだ決まっていないのに、私はとても気分が上がった。まるで子供のように


 ……いやまだ子供か。


私は軽くステップをして牢に戻るのだった。









第三刻「箱の外は箱」





そしてその時は来た。


とうとう出られた。実に何年ぶりだろうか、風を感じられたのは。


想像できる?長い間暗い洞窟でひたすらに、無意味に獣を斬り続けてきた事を。おかげで終始頭の奥で魔獣の鳴き声がして離れないんだから。


さて、どうやって出られたかって?別にもったいぶっては居ないけど、それがそんな積もる話じゃないのよ、でもあっさり過ぎたから端折るわね、大の大人が少女前にして腰抜かして喚き散らかしてた話なんて、、ふふっ。いや笑えるわね、最高だったわ。


ともあれ少しは説明を付けなくちゃ聞き手としては不満かしら?話は簡単。


毎日管理室の私が上を見ればわかる位置に窓があって、そこからボタンを押すと、牢屋の扉が開く仕組みなの。そして何やら酷い高音がスピーカーからして、前に進めと命令されて、いつも通り戦場に連れていかれる流れ。


でも、牢屋の前で1度だけ化学者と対面する時がある。それは私が怪我をした時。かすり傷くらいするけど、あくまで実験動物。万全な状態じゃなきゃいけないらしいから、そう言えば来てくれるのよね、必要な処置をしてまた帰って行く。


完全に絶望してたから、私が牙を剥くなんて思わなかったんでしょうけど、無防備すぎよね?


だから簡単だった。牢の鉄格子が開いたところに斬りこんで、通路を渡って、1人ずつ、、素早く動く必要なんて無かった。


「うがあっ!、やっ、やめろっ!くっ!くるなぁああっ!!」


「ふふっ。ふふふっ!」


4人いるうちの1人を首筋から腹部まで切っ先を当てて軽く切り口を作ったところから一気に腹部まで真っ直ぐ下ろす。


すると血管が切れて首筋から勢いよく血が吹き出して、そこから腹部あたりからはどろどろと血が流れでてきて……。


切れ味良くて中から内蔵出てきちゃうんだから、汚くて面白いわ。


「ああ!、ああっ!うわぁぁ!!早く扉を開けろっ!逃げるぞっ!」


「うぶっ!!ごえぇぇ、、」


焦って扉にべばり着いたり、床にひれ伏して吐瀉しては固まってるわで、ほんとバカみたいよね、、上から見ていた光景じゃない……。


ぜんぶ、ぜんぶ……全部、全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部。


今更じゃない、全部……。


私を使って獣を斬らせて、見ていたじゃない、殺られる側が変わればこうも慌てて恐怖に襲われる。


「あぁ、うるさいわね、、一匹死んだ程度でさ、」


ゆっくりと、素足で臓物を踏み、部屋の隅で慌てる小動物達に牙を向ける。


「あぁっ!はっ、はやくっ!!」


腰を抜かし半ばおぼつかない四足歩行で扉を開け長い廊下を転びながら駆けていく。


「ふふっ。遅いわよ……」


私がひとつ駆け出せばすぐに届く。


真後ろに立って刀を一振り。軽く脚を切った位で泣きわめいて、簡単に止まる。


「あがっ!あああぁ!!はぁっ、はぁっ、はぁっ!助けてくれぇぇっ!!」


ほらね。


「ふふっ、、ふふふふっ!おじさん、馬鹿みたい。」


そろそろ飽きがきたから、もう殺すことにしよう、軽く振り下ろした刃は簡単に首を切り離して、その音(叫び)も止まる。


ああ……。


晴れて私は自由の身になれた。自由?長い間縛られるとどうすればいいか分からないものね、でも一つだけ思ったことはあるわよ、そりゃ必然的なものね、体を流したい……。


あまりにも汚れすぎていてもう髪もそれとは思えない程の感触で……きっと誰もこんなになったことないでしょうね。


どちらかと言えば返り血でベトベトね……最悪よ。こうまでなれば気にせずに入れられない


…………なんて思いも忘れるくらい、外に出られた時はとても感激したというか、衝撃的だった、それに風がの身体を辺りすり抜けていく感覚。


きっと普通に生活していたあの頃の当然で自然な事が、とても新鮮に感じた。



長らくお待たせしすぎて、年も越えましたが。

今年もどうぞよろしくお願いします。



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