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銀髪の殺人鬼(シリアルキラー)   作者: もときち
11/16

シリアルキラーの誕生10

「……っ、」


気がつくと顔色を伺うようにその人物が俺を見上げていた。


「そろそろ疲れた?」


なんて、まるで話が嘘かの様な言動で俺の顔色を伺ってくる始末だ。


「少しな…。」


「そう、確かにこんな長く聞き続けていたらそうね、私も少し疲れたわ。」


テイルの話を聞いていゆと、道徳感や倫理感が麻痺していく様だ。簡単に、息をするように人を殺して歩いた、その名の通り殺人鬼だと言うのに、、俺は同情しているんだろうか。


と彼女は傷口に響かないように身体の向きを変え、窓側の壁に背をつきこちらに座り直す。


「なら、少し休めよ。」


「そうする。ベッドは?」


「……残念なことに俺そんな裕福じゃないんだよ。」


こいつはあれだな、ホテルやマンションを転々とした口だろう。


ひとつため息をついて俺は立ち上がり部屋の中の障子を開けて、敷布団を取り出す。


「(はぁ、何だかすっかり召使いだ。ダが懐かしいな、子守りしてるみたいだ、妹なら進んでやるんだが……)」


今に始まったことでは無いが。


「そう言えば、貴方は1人で暮らしているようね、、家族は?」


「居るさ。でも今は俺だけ離れて暮らしてる。」


「…何で貴方だけ?」


「色々あんだよ。」


「色々って?」


「俺はお前じゃないが人を殴った。一緒に暮らしていたら俺は必ず問題を起こす。それだけだ。」


「…それって……とても悲しい事ね。」


「俺は好きに生きれて最高だぜ?」


テイルは黙り込んで俺に視線をやる。部屋は急に無音の空間にかわり、この間が妙に居心地悪くて、何だか見透かされて居るような気分になった。


「……っ、何だよっ。」


静寂を恐れて俺は咄嗟にこの疑念をぶつけた。


「嘘ね…本当は、家族のために進んでその道を選んだんじゃない?」


「んな訳あるかよっ、、わざとじゃねぇよっ、」


事実、俺は嘘を着いている。テイルの言う通りだ。だがそこを突かれた事が何だか苛立たしくて、その後は黙って布団を敷き終えた。


確かに俺はある時、妹、姉を守る為に色々としでかした。それは悪い方向へと転がって行って、今がある……と軽く言ってしまえばそういう話しだ。先程も言ったが俺の話は何処かの機会で良い。今この物語には無関係な筈だ。


「ほら、準備できた、あとは適当に休んでくれ。」


「……貴方は眠らないの?」


「隣の部屋で寝るさ、」


「いや、別に相部屋で構わないけど?」


この女、何が言いたいんだろうな。


「はぁ、お前は気にしないのかよ、普通は分けるもんだぜ?」


「ふぅん。あなたは意識する方なのね、変な気を起こすなら変えても良いわよ?」


(変な気を起こすって、なんだこいつ、急に挑発してきあがる……)


「はぁ、お前がいいならここに居させて貰うよ、」


俺はテイルの布団を敷いた横1人分を開け、布団を敷き、そそくさと布団に入る。


「んじゃ、おやすみ。」


「ええ。」


再び静寂が部屋を包み、無音な時間が流れ始めた。









(真夜中。)

……眠れない。眠れるわけが無い。


自らを殺人鬼と言う彼女に怯えて警戒していた訳では無い、もっと単純で青臭い理由だ。


「はぁ、、クソッ、」


1度起き上がり頭を掻き回す。ふと視線をテイルに向けると、テイルは窓側に座っていた。


そこで俺は固唾を飲んだ。


月明かりがテイルから伸びるその白髪を1本1本鮮やかな銀に照らし、白い肌はより透明感を増して美しく仕上がる。


目が離せない。はじめに出会った時は唐突で、非現実的な展開だった。だから今こうして改めて視線を向けることはなかった。


こうしてテイル・ケルウィーを助けた青年、趵渾(さくま)はその情景にまるで神話に登場するメデューサに石にでもされたかのように固まったのだ。このワンフレームが、彼の脳裏に焼き付いたのは言うまでもない。だがこれは始まりに過ぎない。


趵渾はそれまでどんな存在とこの部屋で過ごしていた居たのか、全くと言っていいほど自覚をしていなかった。


「……っ。(これはこれで非現実的だな、)」


静止しし続ける俺を彼女は軽くあしらう様にこう返す。


「どうかした?」


「いや……。おまえは、眠らないのか?」


「えぇ。本当はね、夜は眠くないの。」


「……そっか。」


魔性の美女相手に目を向けられ一度趵渾は目をそらす。その時月明かりに影が差し、少し暗くなる。テイルが動いた拍子に月が隠れただけなのだが、不意にまた目を向けた時にその姿は月の逆光を浴びてより一層惹かれる人物画ができあがる。


「…そんなに固まってどうしたの?。ふふっ、可笑しい。なんだかあの子に似てるわね…。」


「…え?」


「まだ先の話よ。あなたに会う前に一緒にいた子が居るのよ。」


「……そうか。」


それは過去形だ。今はもう居ないと言うことだろうか。


「貴方は眠らないの?」


「なんだか覚えちまったよ……」


頭を掻き回し、タンスに背を向き座る


「眠れないのなら、まだ話そうかしら……。」


テイルは月を眺めてまた少し遠くを眺める。その表情はとても悲哀に満ちていた。


「そうだな、そうしてくれて居た方が助かる。」


もうそれこそ変な気を起こすかもしれないからな。


…………。


第4刻 「外の世界」




魔界の城は全体を黒曜石のような物で覆われ、壁も黒曜石が敷き詰められている。床は一面紅いカーペットだったり、木材の板だったりが貼られていて、歩くと軋む。後で聞いたけど、城に乗り込んだ時にそこで戦っていくつか壊した部分を一時的に補強したからだとか。


長い通路をただ手を引かれ、導かれるまま足を進ませた。


でも足並みは軽かったわ。私は全ての罪を認め地獄へ行くんだから。地獄なんて、まさに望んでいた外の世界じゃない?


なんて自分を肯定したいのか、慰めたいのか、消えてしまいたいのか、もう分からなくなったわ。


……ふふっ。えぇ今もそうかも。


そうして魔界と天界を跨ぐ境目は魔王の城のたぶん、最上階。一つだけ、普通の扉ではない、金の枠組みに大理石をはめ込んだ、壁のような扉が。


始祖鳥の姿が描かれたそのドアノブは、目の前までま来ると赤から青に変わる。


ギィィッ!


大きな音がして開いた先に待ち受けているのは、恐ろしいくらいに眩しい白の世界。見事なまでの白、黒などない、あってはならなない、建物一つ一つの影ですら光沢を放っている様に見える。そう、ここが天界。


私の緊張が伝わったのか兄の握る手が少し強くなる。


すれ違う周りの天界人からの視線を感じるのは、ただ魔界人が天界を歩いているのが物珍しいからか、今日の裁判を知ってからか、どちらでも良いけどね。


ただ腫れ物を見るようなその目は、魔界だろうと天界だろうと変わらなかった。


そんな目には当然慣れている。私はすでに決まった行動を取っているのだから、何に怯える事もないと自分に言い聞かせ、裁判の行われる部屋へと向かう。






カンカンッ!


静寂を守る法廷内にガベルの打ち付ける音が響き渡り、裁判の始まりを告げる。


と、始まる前に軽く天界の法廷内がどういうものか軽く説明しよう。


上から見て、一番上、中央に裁判官席その下両脇、左脇に、天界人の弁護人席が中央を向くように縦に設置されている。


それを向かい合うように右脇に同じく中央を向く配置で設置されている席が被告側の席だ。そしてその中央には証言台、判決を言い渡される位置でもある。


最後にその下、傍聴席になる訳だが、天界では被告が殺した肉体のない魂達が集められる。口は無いが天界人からは無念を訴える声などが響いてくるらしい。以上が法廷内の大まかな全体図である。



そして、その被告側の席ではテイルと紅霊が座っていた。



  ※



「大丈夫だテイル、俺が言った通り、反省の色を伝えるんだ。いいな?操られて居たんだ、そう言えば大丈夫、きっとな。」


「……うん。」


兄は小声で、しかしはっきりと私に顔を向けそう伝えると、再び正面に向き直り、しばらく間が開けた頃、


「これより、裁判を始める。被告、テイル・ケルウィーは証言台に上がれ。」


私は言われた通り立ち上がると、前方にある証言台へ進み、裁判官席へ体を向け足を止める。


「貴様が犯した罪は実に重い。同種の魔界の者たちを無惨に斬り殺した…ふん、

事実ははっきりしている。だがどんな罪状であろうとこの裁判では罪人は平等に裁かれる。命乞い程度に何か話させてやろう。反省の意はあるか?申してみよ。」


「………。」


やはり魔界人というのは良い目はされない。私を見る裁判官の目は私を見るのさえ嫌そうだった。いやこれは私が罪人だからかもしれないが。


まあ当然ね、ついこの前まで魔界は一切天界と連絡を取ることもなければ、地獄送りにした人間達を役目通り地獄へ流しているかも分からぬ状態だった。そこには壁がある。


でも霊体になった人間を地獄へ送らないとそのまま魔界に取り残されることになる。結果魔界が人間の魂で溢れてしまう。だから役目自体は行っていたようね。


「ふんっ、何も無いか、」


私は沈黙を続けた。


隣では兄が私に向かって目で訴えかけてくる。もうすぐでもう立ち上がり叫び出しそうな剣幕だ。


私はそんな兄を見て、これから兄と、兄の優しさへの決別をする為に、一度微笑んで見せてから正面に向き直った。


(ごめんね、兄さん。)


「ふふっ。ふふふっ、、これでお話は終わり?」


「なんだ貴様…」


裁判官はたった今の言動で瞼の上を軽く痙攣させて、私を睨む。


でも私はお構い無しで続ける。


「反省なんてしないわ。自分の命が1番でしょ?、だから自分の意思で斬ったの。宿の時は楽しかったわ。ふふっ、ええあの時は興味本意よっ、次は貴方達も斬ってみたいかも、天界人も斬られるのは怖いかしらっ?」


「テイルっ!何言ってるんだ……そんなことないだろっ、お前は刀に操られてっ!…… 」


兄は訂正させようと割って入る。でもやめない。


「ふふっ、嘘だよ兄さん。私の玩具が喋るわけないでしょ?」


「いやっあの刀には魔力がっ、聞いてくれっ!今だってテイルはっ!」


兄は見苦しい貧民のように、震えながら、怒号に紛れた声で裁判官へ訴える。


裁判官はと言うと顔を引き攣らせ今にも脳の血管がちぎれそうな剣幕だ。


ガツンッ!!


ガベルが荒々しく裁判官の、天界人らしからぬ怒りを受け取り打ち付けられる。


「もう良いッ!貴様は即刻地獄送りとする!…判決は以上だっ、これにて閉廷!」


兄は裁判官の席へ駆け寄り訴える。


「なあ待ってくれ!さっきまでは違ったんだ、テイルはあんな狂気は無かったんだっ、信じてくれっ!天界人は目で真相が分かるそうだろ?」


「黙らぬかっ、それは最も高い位の者だけだ、ふんっ…野蛮な魔界の連中でも口の聞ける者と立証され、わざわざ場を儲けてやったというのに、飛んだ茶番だったな、時間の無駄だったわっ。」


裁判官はガベルをもう二度程叩くと、席を立ち出口へ向かう。


その後直ぐに天界の兵士らが来て私に向かって来て、手錠や足枷を向けられるも、ここではなんの抵抗もせず拘束を受ける。


私からしてここまで順調に進んでいたわ。


私だけが落ち着いていて、片方は激昂して部屋を出て、片方は絶望している奇妙な空間。


そしてこの空間で私は尚も悲痛な言葉を兄に浴びせる。


「兄さん……これで良かったんだよ。今の兄さんに私は邪魔になる。」


そう、これは仕方のない事。


「俺が家族を邪魔に思うなんて事ないだろ!?」


「うん、だからだよ。きっと兄さんは私を放って置かないでしょ?」


「あぁそうだっ、俺はテイルを守るっ。だから言ってくれ?、助けて欲しいって、たったそれだけだッ!」


「………」


その投げかけに、私はもう口を開かなかった。薄情ね。


「新魔王、天界から魔界の門までは我々も同伴する。魔界から地獄へは、兄であるお前自身が送れ…天王からのせめてもの慈悲だ。」


と、天界の兵士の内一人が口を開ける。


兄はそっと立ち上がり。私を見て、彼らを見て、もう一度私に向き直ると、私に手を差し伸べた。


「行こう、、テイル。」


私は何も言わずにその手を握り、導かれるまま来た道を逆に、天界から魔界へ歩みはじめる。


これで私はこの自由から解放されて、地獄へ落ちる。握っている兄の手は暖かくはあったものの震えていた。


長く明るい廊下を歩く…ただ無表情で、何も考えず…ただ、導かれるまま……。


天界の兵士達は大きな扉の前で兄と私に道をあけて両側の壁へ均等な位置で整列して立ち止まり、ここから先が魔界だということを、そしてここからは魔王に任せると無言で示す。


魔王直々に、実の妹を魔界へ、そして地獄へと送り届ける……。






ここで終わっていれば良かったと今では思うわね、、でも現に私がここに居るのだから、もう願うだけ無駄な話 。ないものねだりね。


魔界の城内を進む。真っ直ぐ進んで、少しして階段に当たり、降りる。


螺旋状に続く階段は凹凸な岩を繋げ段差を生じる部分を綺麗に広く削られていて、下ばかり見て歩けば錯覚を起こして段を踏み間違えてしまいそうな位だ。


そうして階段を降りると、そこからは暗い地下道に差しかかる。


ここからは岩が外からの光を遮り、通路の両脇の壁に設置されている松明がその場を照らしている。


松明はだいたい五歩位の間隔で付いていて、そのお陰で暗くはなかった。ただ異様な瘴気が立ち込めているのは事実、その先に行く事を本能が拒んでいる。


……そして正面がやがて城壁とはまた別の色の壁が突き当たりに立ち塞がる。


正確にはそれは壁ではなく、大きな扉で、これがそう。きっと地獄への扉なのだろう。


そこで兄と私は少しばかり立ち止まると、兄は突然陽気な雰囲気で話しだした。


「ん、、あれっ?、やばい忘れてた……悪いテイル。門開けるのには魔王の陰と鍵が必要だった。」


「…わざとらしい。」


「いや本当なんだよ、俺の部屋にあるから取ってくる、一旦戻ろう?」


「取ってきていいよ、私ここで待ってるから。」


「こんなに所1人じゃ怖いだろ?、んー、じゃあ一旦ここに入る前に部屋があったはずだからよ、そこで待っててくれよ?」


「ここより恐ろしい所に行くのに、まぁ、、分かったわ。」


「うん、じゃあ、こっちだっ。」


さっきとはまるで違う空気で兄は私の手を引きを来た道を戻り始める。


「…このまま地獄へ送らないつもり?」


「んな事したら俺の立場が危ういなっ!あはは……。」


なんとも演技が下手な兄を前に手を引かれ歩き続けると、確かに入口の前には部屋に繋がるだろう扉があった。


「ほら、あったろ?」


「そうね。」


兄はその扉を開けると、中には目覚めた時に居た部屋となんら変わりのない部屋がある。


私は仕方ないと踏んで部屋の中に入り、振り返って「じゃあすぐに戻ってきて」という間もなく兄は廊下側から部屋の扉を閉め鍵をかけた。


ガチャッ。


「ッ!、馬鹿ね、、本当にやるなんてっ、」


部屋の扉を見ると、そこに鍵穴や捻りはなく外側からでしか鍵の掛けられない仕組みになっている。


「悪いな……馬鹿な兄で。」


私は呆然と扉を睨み付けるだけだ。


(これじゃあ私の一芝居は全部無駄だったじゃない……こうまでして繋ぎ止めて、何がしたいのよ。)


まあでもこうしてまんまと引っかかった私も馬鹿ね。


そもそも最後まで諦めずに魔王と闘った兄がこんな事で引き下がる訳がなかったのだ。


何故こうも当然なことを忘れていたのか、今だから言える。当然幼いから、何処かで見破られていたに違いないとかの問題じゃなく、家族だから、兄妹だから、兄だから。この組織自体がもうそういう厄介なものを抱かせる。


時に自分より優先するもので、大切なもの、それは私も同じだから、こうして地獄行きを選んだのにね。これは情の大きさで負けたのかしら。


「兄さん…だったら、私を逃がせて。」


「それも……できない。」


「こんな扉、簡単に壊せる。」


「分かってるよ。でもなっ、俺はやっぱり……いやとにかく待って欲しい、、頼むよ。」


何かを言いかけては口篭り、最後には待っていろと、兄はそう言う。


「…………。」


何も言わずに扉を凝視して居ると、魔物が向かってきたあの時の様に意識が集中して、間隔が研ぎ澄まされる。


ドアノブに意識を置いて、左足を軽く引いてつま先を立てて体重を掛け、一気に地面を踏み真っ直ぐ扉に向かって突撃する。


自然と刀を持つようにイメージで構えた手元には、何故か刀その物が実在し、確かに握られている。もはや手放せない、一心同体と言うやつだろうか。


「(行ける……)」


「……テイル?」


私は自分でも分からないような動きで刀を抜いて扉を何度も斬りつけた。


ガキンっ!ガンッ!バキッ!


「おいおいまさか本気で壊す気かっ!」


……扉だった破片達は見事に散漫して、目の前に居た兄の視界を遮る。


……しかしその刹那にテイルは僅かにその軌道の中、左側方にまるでカーテンの様な鏡が揺らめいている様を見た……。




(あれ…は、、何かが、歪んでる?)


……その歪みは風に煽られた様にひらりと舞うと、その内側を照らし出した…。


……全くと言っていい、不釣合いな、外を。


あるはずのない地上、草や土が見え、明るく照らされている。魔界の今いる地獄への道でもない、かと言ってそれが地獄と言うには明るく暖かすぎる。現実離れした、何かがある。


…そしてそのカーテンが閉じて揺らいで、また光が差し込む。


「(この先がきっと、、外の世界だ。)」


誰でも人目見ればそう直感するくらいに、不可思議で、説明のつかないものだわ。


それでこの後私がどうしたかなんて言うまでもないわよね?


……私は今貴方の"世界"に居るんだから。









空が青くて日差しは異常なほど眩しくて、ジリジリと何かが鳴り続いていてうるさい、ノイズでもかかっているみたいに。そして何とも蒸し暑い。このノイズが熱を誘発している様に感じて気分が悪い。


何かと四角い仕切りの中に大小様々な建物が一定間隔に築かれている。


(魔界とは大違い、塀付きの建物なんて、みんな貴族なのかしら……。)


まぁ、後に一般人の住宅街だって知るんだけどね。


何はともあれ、そこにはなんだか高揚感に苛まれている自分がいた。


私はついに抜け出したのだ。新しい世界へ。だから暑さを忘れて自然とスキップしながら辺りをくるりと回って、さらに大きな開けた道へと躍り出る。


そこで初めて目撃した、人間と、箱状の、馬も居ないのに勝手に動く変わった形の馬車の群れだ。


道には綺麗に硬い石が敷き詰められて平になっていて、区切りの為の段差や、白線などが敷かれていて、とても繊細かつ丁寧だと思った。


物珍しそうに辺りの建物や交互に変わるランプを眺めているのが目に付くのか、通り過ぎる人間たちの視線が気になるけど、当然なのだ、だって私はここの世界の住民では無いのだから、容姿は勿論。そして内面的にも。


そして昔聞いた事がある。人間には寿命があり、長くても80年から100年までしか生きられない事、知恵を絞ることは出来るが、魔法や怪力といった特殊能力を持たない事も。居たとしても奇跡的確率か、その他は異世界の者らしい。


ともあれ、先ずはどこえ向かおうかと言ったところで、私の目の前が急に歪み、瞬時に立ち止まった。


(また立ちくらみか、、散々休んだと思ったのに…)


と思った手前、懐かしいく忌々しい声がひびく。


「(腹が減ったナ…人間の匂いがスル……喰ワセロ)」


全身に鳥肌が立ち、かいていた汗が煮えたぎり沸騰する様に熱を持つ。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、、」


左手に持った刀に力が入る。私の熱さえも吸っているかのように、ずっと握っているのにその鞘は冷たい。


「はぁ、はぁ、はぁっ、、」


人間たちを見ると鼓動が暴れ始め、再び目眩が遅い、そばにある柱に手を付き下を向くと、汗が流れ落ちる。


「はぁっ、はぁっ、」


(駄目だ……気が狂いそうっ、もうッ、抑えられないッ……!!)


「(どいつでも構わん、、グルルルル……ハヤク殺ッチマエ……)」


「はぁっ……」


次に息を吸い込んだ時にはもう走り出していた。右も左も分からない世界を駆け巡り、鼓動のする生き物(人間)は全て獲物だと耳元で囁かれた気がして、私は獲物達を瞬時に刀を抜き切り刻んだ…………。


「ッ!」


白昼の惨劇とも言えようか。もう頭は真っ白で、血に飢えた吸血鬼そのもの。獣と化した私は悲鳴が上がり注目を浴びる事も恐れずただひたすらに人間を斬り続けた。


「ふふ、ふふふっ……あははははっ!!」


崩れ落ちる人間からはゆっくりと確実に血が流れ、時にシャワーの様な血しぶきが上がって、次々と地に伏せていく。


目撃者は慄いて悲鳴を上げ腰を抜かして四つん這いで逃げようとしている獲物も居れば、立ち尽くして動けずにいる獲物も居て、今の私からすれば良い的でしかなかった。


引きつった顔が戻らない。もうここまで来ると笑えないわね?その前からかしら?


「………はぁ、はぁ、はぁ、」


それから理性を取り戻したのはいつ頃だろう。何となく分かってるのは、あの後何かやたらと警報の様なものを鳴らす四角い乗り物に追われ、そして現在、家々の裏を縫って高い建物の中に逃げ混んだ所だった。


「はぁ、はぁ、、またやっちゃった……服も血だらけだわ。」


中はとても整った家具や食料が綺麗に置かれ、並べられている。魔界ではこんな彩りの良い物を見たことがなかった。


(さすが、貴族の暮らしはすごいわ。それにしても召使いは居ないみたいね、)


まぁ最も宿主は入口で切り倒してしまったのだけれど。


「はぁ、、私もお腹が空いたわ。」


まずは辺りを物色して、部屋のあちこちを除く。


シャワールームがこんなに広い上に清潔感があるのは驚きだ、やはりここは富裕層の住む地域らしい。だとすれば貧民街は私の過ごした魔界と同じなのだろうか。


「ふふっ。」


私は誰の断りもなく返り血で汚れた服を脱ぎ捨て、水を浴びようとするも、シャワーなるものから綺麗に線を引くように水が出てくる事に驚き、また青から赤の方へノブを捻るとお湯が出る事に感動を隠せなかった。


……あぁそう?、貴方達の世界じゃ普通なのね、じゃあここは切ろうかしら。


その後も辺りを物色して、適当に棚を開け、服を見つけては着てみるも、なかなかサイズは合いそうにないが一回り大きい位ならよしてして羽織った所で、足元で何かを踏むと同時に正面にある四角く、大きな薄く四角い物が光り、音が鳴る。


「速報ですっ。今日午後2時頃、死傷者多数の通り魔殺人が起きました!ええ犯人は今尚逃亡中!、行方が分かっておりません!近隣にお住まいの皆様は、玄関、窓の戸締りを厳重にして下さい!、繰り返します!…」



「この世界で起きたことは直ぐにこの薄四角い物で流されるなんて、、なかなか厄介ね……。」


「(人間共は群れる習性がある…故に上手く溶け込む実用がある…)」


「そっかぁ、、今の私じゃ目立つ訳か。」


「(あぁ。だから夜に活動するのが好ましいな、目に付きにくい……それまでは好きにするといい…。)」


そう刀の中の黒豹は語る。だが白昼堂々餌を喰らったのは紛れもなく黒豹の意思でしょなんて思ったけど、そのところの発動条件みたいなことは覚えてない。


でも確かに人間に警戒されてしまった以上は行動に気をつけなきゃ行けないと踏んで、私は部屋のカーテンを閉め、入口の死体を避けながら扉に鍵を閉める。


「……何が食べたいわ。キッチンに何かあるかしら…」


独りふらふらと足を運び何かの起動音が響く棚を開くと、冷やされた食材を目にする。適当に開けては食べられそうなものを選別し口に運んではボトルに容れられた液体を飲み干す。


「はむっ、はむっ、、んんっ、ごくっ、ごくっ、、」


思えば食事をするなんて何年ぶりだっただろうか……。


魔界は人間界で言う所の死後の世界とも言えるから、その世界の住人である私は食事をしなくても生きていけるのだが、時より空腹も訪れるし、眠くもなる。


でも家族で食事を囲むことはもう一生叶わないのだと咀嚼しながら感じた。


何故だろう……最後に飲み込んだ時だけ、やけに喉が苦しくて、熱かった……。


お久しぶりです。前回の投稿から結局1年すぎる形になってしまい誠に申し訳ない……。


いやとっくに忘れられているか……(笑)

ともあれ続きを待ってくれていた方々、大変お待たせしました。


こんだけ待たせておいてこの短さかよ!

って感じたかも…


次回もまたいつになるか分かりませんが、決して途切れることはありません、最後まで書くことは約束致します。


今後ともよろしくお願いします。m(_ _)m

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