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銀髪の殺人鬼(シリアルキラー)   作者: もときち
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シリアルキラーの誕生09


時刻は夜を周り、本当であればこれから俺はコンビニエンスストアとやらに夕食を買いに行く気でいたんだが、食欲が削がれてしまった。


なんたってそんな生々しい演出の数々を話されて腹が空く訳が無いからな。


「どう?少しは私が殺人鬼に見えた?」


「あぁ、もっと前からな……。」


「なら早めに追い出すか、買い出し次いでに逃げた方が良いんじゃない?」


「しねぇよ。」


「どうして?」


例え殺人鬼だったとしても1度助けた人間(?)を放ってはおけない。それにこんな凄腕の相手など手負いであっても逃げ切れる気がしないと思う。


「何でって言われてもな、逆に放っておけるかよ、あの状況で、誰でも目に付く。あの時点じゃ明らかにお前が被害者だったろ。」


確かに凄い状態だった、血を流して這い壁際で這いつくばっている状態のテイルと、それをゆっくりと追う変な武装をした奴ら。


本当なら関わらないのが当然だろう。でも俺の過去が頭にフラッシュバックしたせいで、助けてしまったのが本音だ。


「まぁ、確かにそうね、でも今こうして私が殺人鬼だと分かっても、態度を変えないのはどうして?」


「それは…」


そこで俺の口が詰まった。家族の内1人がテイルに重なってしまったからなのだが、口にしたくなかったからだ。これもまだ生暖かい過去の話、今は語る時じゃない。


「さては貴方、ええと、ストックホルム症候群ってやつ?」


「んな訳あるかッ!」


突然すぎて思わず吹き出すようにでツッコんでしまった。


「しかもそれ誘拐犯の犯人に対しての症状だろっ、」


「ふーん。そうなの、、まあいいや、それよりさ、」


とつまらない話を綺麗に切ってテイルは続ける。


「私が話し終えた後、今度は貴方の話を聞かせてくれるかしら?私が話しているように、貴方が私に会うまでの物語を、」


「俺はそんな大層な話、持ってないぞ。」


「別にいいよ。」


「そうかよ、、良いよ。分かった。」


「決まりね。」


どうしてかは分からないけど、この時の彼女は少しだけ楽しげな表情を見せたような気がした。


どちらにせよ、俺の話に期待されては困る。


「……それで、宿屋を出てからは、何があったんだ?」


テイルは軽く宙を見て語り始めた。


"ええ、そうね……


外に出るともう朝陽が顔を覗かせようとしていた。


それと同時に軽く風が吹く。今度こそ自由な気がして、先ずは家に帰りたくなった。

唯一の家族だから。


家がある。父も母もいないけれど、兄なら居るかもしれないなんて思って。


(……でも兄さん、魔王になったから、お城に行ってて居ないのかも。)


軽く深呼吸して、空を見上げ目を細める。

魔界の空は……紅かった。見事なまでの快晴だった。というのも、私の知ってる魔界の空は常時黒い雲がかかってたから。そこに微かに明るさが滲み朝か夜かがかろうじて判別できる程度だったと思う。


多分その時初めて太陽なんてものがはっきりと機能したんだと思う。


(……これも兄さんがやったのかな?)


なんて空を見上げるのは私だけではなく、城を中心とした円形に不規則に建てられたの城下街に住む魔界の住人達も同じように空を見上げただろう。


そんな神秘的な現象を眺めている反面、街の隅の一角にフォーカスを当てれば、朝から慌ただしく動き回っている者や、口々に話し合う住民達、駆け付けた黒い鎧を装着した傭兵らで騒がしいのだった。


"どうやらとある宿屋で多数の惨殺死体が見つかったらしい"。


住人達を横切る際に聞こえたのは、死体は無惨にも首を切り落とされていたり、四肢を切り落とされていたり、腹を裂かれていたりという状態で、恐らく事態の起こった当時は戦争も終わり、夜は人気もなく犯人らしき怪しい者を見ることはなかったのだとか。


まあ魔王が代わっただけでこうも夜の人口が減るのはおかしいとは思うけど……。



何食わぬ顔で真逆に向かう際に傭兵を通り過ぎれば、血を踏んだ際に出来た足跡が残されていたことと、血がまだ乾いていない事から時間的に昨晩だったのは間違いないし、犯人はそう遠くには行っていないはずだと1人が推測していて、もう1人は、1人の被害者の鞄から衣類が盗まれて居ることから、既に住人らに溶け込んで身を潜めているに違いないと話す。


凶器は鋭利な剣かもしれない……ほぼ正解ね。それ以降の話はもう言いわ、住人達の声に混ざり聞こえなくなったけれど聞かなくても分かる。だから私は騒ぎとは逆に城下街中央へと歩き出す……。


路地裏へ続く角に曲がった所で歩幅を徐々に広げて、徐々に速く、足早に進む。


以前、兄と散歩をしたことの記憶を頼りに何となく覚えている道を辿れば家に続く道に繋がるはずと踏んでね。


(きっと気づかれていない…通り抜ける時だって目立ったこはしてない……大丈夫、2丁目先で表通りに向かえば傭兵達を完全に撒けるはずよ。)


それにしても建物と建物の間を射し込む陽差しはやけに明るくて、眩しくて、一瞬目が閉じかける。


(暗雲がなくなると言うだけでこうも明るくなるんだ……吸血鬼には大敵かも。)


なんて余計な事を思いながら足早に、半ば余裕が戻って来たように私は軽くスキップを踏んで、路地裏の角を曲がり、2丁目の大通りに出る一直線に出る。そこで軽く息を着いた。


「……うっ、」


若干の目眩が襲い、一瞬立ちくらみを起こした。それは直ぐに収まった…疲れてるのかしらね。


でも進行方向に1人、私を遮るように立っていた。と言うより、視界に入ると同時に現れたという方が正しいかしら。


当然ただ顔を見ずすれ違えば良いだけだったのに、私の目が反応し、世界の動きは急激に速度を落とす……。


その抵抗を受けないはずの私が、その時だけは立ち止まったまま対抗者を見てしまった……。


結論から言って傭兵ではなかったわ。見つかっては都合の悪いことに違いはないし、そして傭兵なんかより遥かに位が上だったわ。


でも私の目的は果たされたの。


ここまでがヒントよ、さて誰かしら?




  ※




「テイルっ……なのかっ、、やっぱりそうだっ!、まさかここに居るなんてっ、……いや、でもどうやって、、」


その表情そのものは困惑していても、視線は真っ直ぐで、逞しくて、優しくて、なんの雑念もない程に輝いて見えた。あまり昔と変わってないかも。


変わったところと言えば服装が立派になった感じかな。やっぱりやり遂げたんだなと、もうくどいね。


でもその姿を見て改めてこうも思ったわ。


……その純粋さが今は重いって。


「兄さん…… 」


動揺している感情を自分の奥底にしまって胸が苦しくなり振り絞って出た一言はそんなものだった。


でもその兄の表情は自然と崩れ、涙を浮かべながら手を広げ駆け寄ってくる。長い間離れ離れだった我が子と再会した親は多分同じ顔をするかも。


だけど素直に縋りつけない。どうしてかは明確だ。私はもう前の自分ではないから、純粋無垢な幼い少女から殺人鬼になってしまったから。とっくに汚れてしまったのよ?


「怪我はっ?!逃げてきたんだろっ、異常は?何も無いかっ?」


などと慌てた様子で私の体を回すように四肢の確認をして、目は見えてるか?、耳は聞こえてるか?とかを確認され、ただ私は頷くばかりだ。


それでも外傷がない事を確認した兄はその場で膝を折り私の両手を掴んで顔を伏せる。


私はというと…別の気配に自然と反応してしまう。


(……足音がする、ひとりじゃない、)


鼓動が胸を突きうるさくなり、冷や汗が流れる。


「……よかった、、、無事でっ、ほんとに……疲れたろ?」


(背後……、前方からも、これじゃ逃げられないわ……)


「ううん……平気、だよ…。」


軽返事で私は答える。


当然傭兵達は兄の連れなのだから、こうして集まってくるのは当然だ。兄と目が合った時点で、いや路地裏を通ったのが誤算だった。はじめから大通りをただ歩いて居れば返って不審がられなかったかもしれないのに。


なんて今更考えても遅いのだけれど、というか、兄と再開したのがそもそも尽きで、これは偶然だったと思う。これは兄からしても同じね。


「紅霊、どうした?」


「その子ってっ…!」


「…もしかして、、妹か?」


(正面から1人、後方に2人、道は1本、両脇は壁だ……。)


(兄さんの手を離して刀を抜いて1人ずつ首を斬れば……いや、逃走経路を開くなら体制的に伏せている兄の横にきた傭兵を1人殺ればいい。それで逃げられるはず。)


などと考えていると、急な耳鳴りと、一瞬目眩を起こし反射で1歩下がり、真横に倒れそうになるとすかさず兄の手が後ろから背中を支えた。


(あ、、、れ、、動か、ない?)


「っと…やっぱり限界だよな……でももう大丈夫だ、ベッドで休もう……俺はテイルと一旦城に戻るよ、お前達、もう少し辺りを散策して痕跡探しを頼む。」


と兄は仲間に指示を出しながら私を軽く両腕で抱きかかえてしまう。一方私はされるがままだった。


驚く程に、兄と再会してから全てを解かれた様に体が動かない……私は自分で気が付かない程に弱っていたらしい。疲れを知らない幼児と同じね……。


瞼も重くなって、やがて意識も遠のいてきた…。


やがて目を瞑り、声だけが聞こえる。


「おい、何が一旦だよっ、せっかく会えたんだ、しかも偶然だっ…こんなラッキーねぇだろ。一緒に居てやれよ。」


「そうだよーっ!、今度こそ1人にしちゃダメだって。」


「お前ら、、」


「2人の言う通りだ。それに魔王になってから天界との会議続きで休めてないんだろ?今追ってる件は俺らで片すから安心しろ。」


「おう…分かった。ほんとありがとなっ、、任せた。」


きっと私もどこかで安心しているに違いない、だから緊張が解けたのね。認めたくはないけど。


……別に憧れはしないけど、仲間って兄にはお似合いだと思うわ。


貴方には居る?







目が覚めたのはいわゆる王宮の寝室だろうか、私が住んでいた家よりはるかに大きい括りの部屋が丸々寝室らしい。


なんとも不思議な空間にいるようでふわふわした感覚がする。きっとそれは長い間寝過ぎた事でまだ覚醒しきっていない頭のせいだろう。


でもまぁ、目覚めは悪くないし不安もない。そう全ては昨日の白昼夢にも似た現実だ。それと今、起き上がり様に右の背景に映った何とも魔王に相応しくない化粧台の正面にあるイスをベッドの傍に置き座ったまま寝息を立てている新魔王が居たから。


だが左の背景に悪夢にも似た刀が置いてある。でもそれは私が今こうして生きている理由……その1本で現実に起こった全てが説明できる。


そして一生涯持ち続けなければならないモノ。


私はそっと刀を持ち、自分の目元で刃を上向きにして軽く鞘を抜き、見えた刃を通して自分の瞳を見る。


瞳の色は紫に似ていて、瞳孔に近づくにつれて濃く、そして真っ暗だ。でもどこか別の黒が混じっていた。言い表せようのない、黒が、…血に似ている黒。


(オマエハ惨殺ヲ繰リ返ス……血コソ我ノ養分ダカラナ…。)


霧から現れたように黒豹の牙のような目と私の目が合う。


「………。」


(そうだわ……その通り。 もう後戻りもできない、この場所も一時しのぎ、時期にまた殺意が湧いてきて、誰彼構わず殺すことになってしまう。 )


(……そう、だから兄さんが勝ち取ったこの場所、大切な人達から、離れなきゃいけない。)


できれば誰にも居ない内に行かなくては。

そう決心するも、まずはどう出るかだ。


例え1人になっても部屋を出れば誰かしらは居るはず。無茶な話窓から降りたってまだ城内よね。ふふっ。


あわよくばこの魔界から抜け出したいとさえ思った…ベッドから抜け出て、左側にある大きな窓に手をかざす…取っ手を握り前に推し出せば景色が変わり世界も変わっていて、1度行けば二度と戻れないような、、そんな世界に。


(存在してたら苦労しないか、、)


まぁそんな空想から現実に自分を呼び戻した。


「んっ、、ッ。テイルっ、起きてたのかっ、、具合はどうだ?」


なんて起きたての兄の変に高い声が聞こえた所で振り向く。


「ええ兄さん。おはよう。」


「あぁおはよう、、よかった、顔色も大分良さそうだな、、あぁでもしばらくは安静にしてなくちゃ駄目だぞ?」


「平気だよ。充分寝たし。」


「そうか?ま、後はそうだな、朝食でも用意しよっか?」


「うん、ありがとう。」


「なに食べたい?」


「ううん。何でもいいよ。」


っと半ば上の空で兄に返事を返す。何故って今の私はここからどう脱出をはかれるかしか考えてないのだから。


「そうか、今持ってくるよ。少し待っててな?」


そう言って兄は立ち上がり部屋の扉に振り返り歩いていく。


魔王になったのだからもう命令でもすれば使用人が持ってくるのだろうけど、庶民出の兄がそんな事を知る訳もなく、魔王直々に食堂に向かうのだろう。


(……部屋の外に、出てみようかな、、)


ベッドの布団を剥ぎ、足を床につける。


(……部屋の床、全部カーペットになってる……)


注意しなくても私の足音を無にして地に足を付け、そこで私は少し動きを止めた。


「冗談はよせよっ!、テイルがそんな事する訳ないだろ?まだ14歳だし、俺みたいに能力がある訳じゃっ……」


「証拠ならもう、、現に彼女が持っている刀がそうだよ……アレからは何か渾沌のような禍々しいものを感じる……それに君は16でしょ?きっと監禁された時に覚醒したに違いないさ……」


「いやだけどっ!…」


「君が認めたくない気持ちは分かるけど、だからこそ、、確かめさせて欲しい。良いね?」


コンコン。


軽いノックと共に扉が開く。


そこには金髪に白い肌、金の水晶の目を持つ青年が現れた。その格好も白と金。タキシードにも似た皺1つない清楚な格好だったかしら。


それでこそ天界の住人、よね。


(……天界人だ、、初めて見た。)


魔界の住人なら自然と誰もが分かるはず、だってどう見たって魔界には不似合いな容姿だもの。


「…初めましてテイルちゃん。僕はオーディアス。宜しくね?」


と易々と汚れも知らないような手を私に向け、自然と笑顔を作る。


それを私はゆっくりと彼を正面から見上げ、誘われるまま手をを握った。


「うん。」


彼は微笑み手を離す、そこへ慌てた様子で戻ってくる兄。


「なぁやっぱり待ってくれっ!頼むっ!、テイルは今さっき目覚めたきたばかりなんだよっ、」


「そうは言われても、僕も上の命令で来てるんだ。こればっかりは僕の力じゃ何とも…ごめん。」


「ッ!どうにか、、どうにかできないのかっ!」


兄は何かとても焦っていた…顔だけじゃなく足を小刻みに動かし行動にも出ている。


(私がした事、もう知られてるんだ…。)


「……俺が直接話してやるっ!、」


「あぁちょっと紅霊っ!、」


早足で出ていく兄と、それを追う天界の住人、私はまた1人部屋に残された。


(私……地獄送りにされるのね、きっと。)


扉の前から今さっきまでを聞いていれば察しがつく。犯した罪は簡単に露見する。だからきっと完全犯罪はこの世界において存在はしないと思う。


(じゃあ私が死ねば良かったの?いや、それは違うと言われるのかな。)


でも罪悪感は芽生えてしまったから、もう私は私が生きてて良いとは判断ができない。


けれど、それでも、地獄には行きたくないと、両肩を抱いて悪寒を慰める。


気休め低度か、それ以前からか、自然に私の鼓動は一定の速度で脈打っているだけ。


私は自然とベッドに座った状態から右へ、指でトンッと突かれ簡単に倒れる棒のように無抵抗で横に倒れ込んだ。


私の目は悲愴の瞳から徐々に決意の瞳に変わっていく……。



…………………………………………………………………。



ガチャッ……ギィ


突然?いいや。特に何も無くドアが開き入ってくる兄を横目だけで捉える。


「テイル、、入るぞ。」


何とも情けなさがある表情で聞いてくる兄に遠慮はしたくない。


「私、何ともないよ。兄さんの方が悪そうに見えるよ。」


「そうか、ごめん、情けないな。」


なんというか兄はこの数時間で酷く憔悴しきった風に見える。


「……どうしたの?」


「あぁ、いや、、何ともないって言うのは嘘だな…でもこの話の前に、テイルに聞きたい事があるんだ。」


「うん。」


私は不意に立てかけた刀を視野に収めながら兄の方向に頭を向ける。


「病み上がりで、本当にごめん。色々混乱してると思う。でも、少しでも聞かせて欲しいんだ。その刀と、、どうやって逃げてこられたか、それを知りたいんだ。」


兄からすれば衝撃的なのは当たり前だろう。兄と最後に別れた私はどう見ても被害者で、弱り果てた状態だったのに、どれくらい時間が過ぎたかは分からないが、突然ある日路地裏で生きている、それも普通に歩いている私と再開した……それは困惑するに決まっている。


加えて、その場所に足を運んでいた理由、それは城下町の端で起きた惨殺事件の犯人を捕らえる為な訳だが、まさか再会したばかりの実の妹が犯人なのだと知れば、それは嬉しかったはずが180度回って悲しみに変わらない訳がない。


「わたし、洞窟みたいな所に入れられて、大きな獣に食べられそうになったの。それで逃げ回って…でも、獣の口が近づいてくる一瞬はね、とても遅くなるの、不思議だったけど、それで何とか避けられた。」


獣に襲われたことを口にした瞬間から兄さんの瞳が一見して険しくなるのを無視して私は話を続ける。


「それでね、ちいさな穴を見つけて、隠れようとしたんだけど、獣の爪が穴をかいて削って来て、もうすぐで爪が届きそうな所まで来た時に、そのカタナ?がくずれた岩から出てきたの。カタナの中には黒い豹が居て契約する代わりに助けてくれるって…それを持ってたら、何でも斬れる気がしてきて…凄いのよっ?軽く振るだけで獣の首が飛んだの。」


兄の表情はより一層の険しくなる。一方で私は楽しい出来事のように話を続ける。


「それから白い服の人たちが楽しんで次から次に獣を出してくるんだけど、飽きちゃって、、だからその人たちを斬ってあげたわ。自分がやられるのは嫌だったみたいだけど、獣でもあんなに弱々しく泣かないのに、ふふっ、可笑しかったわ。それで外を出てからはねっ、頭が痛くてどうしようもなかったけど、、宿屋で人を斬ったら自然と収まって、何より楽しくってね?みんなかーんたんにッ…………」


……そこで私の口は止まる。いや、止められた。さすがに無理もないか、話が長すぎた?分かりずらかった?それとも重すぎたのかしら、どちらにせよ素早く抱きしめられて、訳が分からず私は静止した。


兄の胸に抱かれ、強く抱きしめられたその体は少し震えているようだった。それがどうしてなのかは、顔が見えなくてよく分からない。


「兄さん…?」


「ごめんなっ、、テイル…いいよ、もういい…辛かったろ……怖かっただろ、、悪いな、、1人にして、そんな思いさせて…」


「……わたし、別に辛くなんて、、だって……、ごめんなさい…兄さん。」


「いいやっ、テイルは悪くないっ、、、何も悪くないっ!俺が、もっと速ければ…」


私は幼いながらに気づいてしまった……だからもう口を閉じた。


(わたし、壊れているのね、きっと。兄さんはそんなわたしを一生面倒見ようとしている、わたしはいけない子なのに。)


兄の今の立場を考えると、私の存在は邪魔だ。魔王としての信頼が欠けてしまうに違いないと思った。


「いいかっ?よく聞いてくれっ、これから裁判があるけど、裁判官にどこかで発言していいと言われるはずだ……それで、反省していますって、あれは刀のせいだと答えるんだ。そしたら俺が監視すれば天界は何も言わないっ、地獄に行かなくてよくなるんだっ。」


「……うん。」


(駄目だよ兄さん……たとえ家族でも地獄に行く人間を庇ったりしたら。兄さんは駄目な魔王になるわ。)


兄は私の両肩を掴み正面から必死に私を守る為の嘘を作り出す。


「その刀に操られたんだって、そう言えば契約は天界の方で簡単に消せる。いいか?テイルは悪くないよっ、」


「……うん、わかった…そう、言うわ。」


(ごめんなさい、兄さん。わたしなんかより、兄さんの今を守りたいの。だから兄さんの言うことは聞けない。)


ここで泣き出して兄にすがりついて居れば、少なくとも今の私は居ないし、魔界で、城で何不自由なく暮らせて居たのかもしれないわね。


そう、普通の悲劇のヒロインって言うのかな。今もそう見える?


どうであれ、自分のやった事に嘘はつけない、私は確かに殺しを楽しんだのだから、そして罪を犯した者はちゃんと地獄行き。


それが普通よ。


コンコン…扉がノックされる。


「新魔王、まもなく裁判の準備が整う。中にいる被告人を連れてこい。」


「……テイルはそんなんじゃねぇよっ、証明してやる。…良いか?兄ちゃんが言った通りに言えば大丈夫だっ。兄ちゃんが絶対守ってやる。」


「うん、、ありがとう…兄さん。」


部屋を出ると、兄に手を引かれ私達は天界の裁判所へ向かう。もうここでエンドロールが流れていても、私は良かったけどね……。

ご覧頂きありがとうございますm(_ _)m


またも前回から何月も空いてまい、何とか今日投稿できました。続きが知りたかった皆様には大変お待たせしてすみませんでした。


どうせ次の投稿も遅くなるんでしょ?と言われれば返す言葉がありません、きっとなります、申し訳ありません


ですが次回の投稿が年明けにはならぬよう、頑張りますので、今後ともよろしくお願い致します。

m(_ _)m


もときち


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