7話 船の自慢と、少ないプレイヤー
SSOには月額料金がかかるが、課金要素はまったくない。理由はそれをする理由がないから。
キャラは自分が作成するからキャラガチャなんて存在しない。ステータスないからステータスブーストもない。
装備は店売りか、同じく店売りのスキルでの制作。あるいは遺跡からの『発掘品』。課金装備なんてものは存在しない。
スキルも時間経過で覚える、時間短縮というのは課金ではなくそういう『設備』を作成すればできるようになる。
全てはSSOをリアルにする為だと思う、初心者が上級者に勝つには時間をかけるか運しかない、何故ならそれだけ上級者は時間をかけたのだから。
だったら、初心者が楽しくないって?そんなことはない、その理由はさっき言った『時間をかけ、運に頼る』これが大きな意味を持つから。
第3陣とも呼べる遅くに始めたサルベージャーは時間をかけて広大な宇宙を飛び回り遺跡にある『発掘品』を運よく発見し第一世代の富を築いた。
ハンターは初心者パーティで大型のUEOを倒し、希少な調査品を別の惑星の調査団に渡すことでスカウトを受け星から装備一式を譲り受けた。
トランスポーターは大企業に入って実績を積んで、実績で子会社を立ち上げ。その大企業に匹敵する特化職部隊を作り上げた。
SSOの自由度はGMがその都度変更しているんじゃないかと思うほど多種多様、SSOをリアルに感じその中で何かを磨いていけば一攫千金がある世界。
もちろん地道にやっていってもその領域に行けるのだ。SSOに嵌まったのはそういう理由もあるのかもしれない。
話が長くなったけど、私は第1陣のいわゆる古参というものだが会社を作り上げたこともないし、編隊を組んだことは臨時でしかない。
それでも一線級といわれていたのは、私の船『ナイル』にある。
ハイパー航法搭載型空間圧縮機付き大型輸送船『ナイル』
長い名前だけれど、オーパーツが二つもついている輸送船なのだからしかたがない。
通常、移動は超光速での移動の『ワープ航法』。二つのゲートを利用して長距離の移動を行う『ジャンプ航法』が存在する。
リアルの世界ではいろいろと違いがあるのだろうけれど、SSOの技術で呼ばれる二つの航法の違いは大まかに分けると
ワープは速度を光速まであげて、ワープ装置を起動すると時空が歪み、目的地との距離が曖昧になり空間を超えることになるという航法。
ジャンプはワープ装置の大型版で二つ地点同士の時空を歪め穴を開けておくことで、光速まで上げなくても通常推力で移動できる航法。
この二つが存在する。
しかし私は初期に運がいいことに『ハイパー航法』と呼ばれる装置を手に入れていた。
ハイパー航法はそもそも推力を必要としない。止まっている状態でも指定した空間と行先の空間を入れ替えることで飛ぶ方法なのだ。
「いしのなかにいる」状態になることはない。なぜなら『何もない空間』でないと入れ替えることができないのだ。
行先を指定し、目的の空間を何もない状態と確認し、一種の高次元に移動して空間を飛び越えて、飛び越えたときの元の地点には移動先の空間を埋めることで均衡を保つ。これがあることで座標を確認し移動できる私は他より一つとびぬけた。
そしてもう一つは大金を叩いて手に入れた『空間圧縮機』。これは対象の空間を圧縮して持ち運びやすくできるもので、大量のものを詰め込める輸送船にぴったりだと思って手に入れた逸品だ。ただ空間を狭めたとしても重さが変わるわけではないので出力がとても大きな輸送船でも、吹かしても移動するまでに時間がかかったりする。
そこで私はハイパー航法の移動で目標地点のそばまで行き『ナイル』の中に入っている小型輸送船でリレーする様にして受け渡しをすることで富と一線級の活躍を手に入れた。SSOは考え方次第、ということ。そして、それは今リアルにも及んでいる。
「…これは、本当なの?スフィ」
「はい艦長、セーガル様から送られてきた情報と私共が知っている情報を照らし合わせるとその可能性が非常に高いかと思います」
「本当よぉ、んんっ…本当だ、俺の方から見ても間違いないと思うわぁ…んん!思う」
「転移?転生?憑依?かは定義しづらいけど逆憑依としておこっか。77隻は少ないと思っていたんだけど、まさか本当に…?」
「はい艦長、【逸脱した経歴の持ち主は今のところ100%逆憑依されていません】」
これから動き出そうと考えていた輸送船に戻った私のもとに、【上位存在を匂わせるような】情報が入ってきたのだった。