2話 目覚めたら、状況確認
「いったぁ…一体何だってんだ…って、え?」
目が覚めると俺は、パソコンのキーボードの上に突っ伏すように倒れこんでいた。そして、頭の中に無数の知識が広がっている
あらゆる艦の設計図、運航方法、宇宙のたぶんガイア星系…太陽系のルート、NPCと呼ばれる従業員のあらゆる情報など
ゲーム上でしかなかった、スキル内容が設定より詳しく、細かく刻み込まれていた。
「何なんだこ…いや、強制的に理解させられた?……生体情報ロード」
【了解、生体情報を表示します】
名前:ラナス
性別:女性
種族:強化型有機系ヒューマン種
年齢:19歳
備考:遺伝子操作により不老処置と脳内ネットワーク、キャパシティを大幅に強化したガイアに生息していたと思われるヒューマン種女性型。
肉体に関しては強化は行わず不老処置のみだが、脳や神経系に関しては狂気ともいえる強化処置を施している。
薄く青みがかった銀色の髪。白い肌に、左目青、右目緑という特殊な容姿をしている。
「ああ、随分とこじんまりした備考欄になったな…いや、なったみたいね」
性別が変わったというのに違和感を感じない、慌てふためくはずの心が動かない、冷静に客観的に物事を見れるようになっている。
今の状況は理解不能だけど多分あのイベントが原因よね、どう動くべきかしら…自分のことは理解できる、3年も引っ付いて設定を詰めたんだ。このキャラクターは俺であり、私であると【強制的に理解】する。そしてこの身体があるということは…
「……スフィ、聞こえる?」
「はい艦長、聞こえております。お目覚めになられて何よりです」
「貴女、今どこにいるの?」
「はい艦長、呼称を変更したほうが理解が早そうなのでこちらの名称で伝えますが、月の裏側におります。」
「それは、そういうこと?」
「はい艦長」
船がこっちに来ている。ゲームじゃなくリアルに。
「何隻、私以外の船もあるのか教えて」
「はい艦長、艦長が所持していた船の90%は消失。コロニーも跳躍ゲートもすべて消失。周囲には運搬前に観測した船の約1%、77隻を確認しております」
「スフィ、推測して。1%残った船とその他の違いはそっちで何か確認できる?」
「はい艦長、推測しましたが情報が足りません。艦長がそちらに引き寄せられた原因も不明です」
「わかったわ、そのまま待機して。」
「はい艦長」
私が持っていた船は10隻。維持コストが高かったのと、コミュニティ…いわゆるギルドのようなものを建てていなくてソロ活動だったから。
そのうちの90%ってことは…
「スフィの船しかないのかぁ。でも、私のメインの船でよかった」
私の生体情報が表示されていたホログラムには全長約3kmに及ぶ巨大な『輸送船』が映っていた。