1話 はじまり
初めての作品になります。よろしくお願いします。
「ありがとうございました、またお願いしますっ」
画面を切って私は深く艦長席に腰を下ろし、そっと息をついた。
外を見れば沢山の星と、『青く光る恒星』が遠くに見えた。
自身を見下ろせば大きな胸に、薄く青みがかった長い銀色の髪が垂れる。
「…あれから何年経ったんだろ。」
AIが管理し静かに移動を開始する船の中で私は始まりの始まりを思い返していた。
2019年、年号が変わった。
稀かもしれないが、日本では普通に行われることだった。
俺は職を転々とするフリーターで、その時はトラックの運転手をしていた。
打ち込める趣味はなく金を稼いでも、スマホでソシャゲやパソコンでゲームを少し課金してやる毎日。
飽きたら別のと長く嵌まることもなくログインボーナスやイベントでもらえるものでやっていた。
そんな時、パソコンのストームと呼ばれるPCゲームを公開してダウンロードをサポートするソフトに一つのゲームが公開された。
「シンギュラリティ スペース オンライン(SSO)」
単語をただ並べたような名前のそれは、よくある戦略シミュレーションに近いSFのゲームだった。
俺は最初、スペースオペラ系の話が好きだったし、格段に安く、それでいてPCの負荷が軽そうだったという理由で始めただけだった。
キャラクター選択は簡素で、よくあるSTR(力)やVIT(耐久)、INT(賢さ)などの表記はなく
名前、種族、年齢などの基本情報と、細かな容姿設定、それも絵じゃなくて文章で書き起こせというものだった。
厨二心を抉られながら、過去に作った「俺の考えた最強の『少女』」の容姿を記憶から掘り起こし記入していった。
そして、備考欄は制限がなくそのキャラクターに対する思いや設定を好きなだけ書けということだった。
ああ書きなぐったさ。制限なしに思いの丈を備考に書きまくった…あとで後悔するだろうけど、その時は楽しかったんだ。
そして開始した。その瞬間俺は光に包まれ・・・ることなく、普通にゲームを始めた。
ガイア星系、たぶん太陽系を素に考えられていただろう宇宙を舞台に戦闘、開発、開拓、探索、海賊なんでもできるゲームだった。
ガイア星系なのに、ガイアは保護区画で全く干渉できず、近づくことすら許されない。それ以外は、その手の大手他社には若干劣る画質ではあるが、BGMやSEは豊富で臨場感というよりは雰囲気を優先していた。
特に設定の作りこみが半端じゃなかった。自分のキャラクターは見えないのにNPCはやたら種族が多かったり、作れる船も歴史設定や設計志向の情報がずらりとならんでいたり。
UEO(未確認機械生命体)という敵に対して、普通に倒すのではなく、調査しないと攻略できなかった。
もう一度やると、同じパータンににならなかったり、難度が上がったりした。
そういうのに飢えてた好き者の人たちは一気に開拓を進めて行った。なんてことない普通のゲームだったんだと思っていたんだ。
2022年、ワープや別星系への跳躍技術、エネルギーの半永久機関、船の設計図などの新技術が全てアンロックされ新たな要素があるのではと探していた頃、一人のプレイヤーがガイアを開発したいと思った。
「母なる大地に帰りたい・・・」とかいうロールプレイヤーだったんだが
どうにもこうにも上手く行かなかった。「何かイベントがあるのでは?」「いやGMの拠点なんじゃないの?」みたいな憶測が漂い、様々な検証が行われた。そして『技術力が高いものや内包しているもの』が多い、つまりデータ量が多いものを打ち込めば押し込めることに気づいたプレイヤー達は『今あるすべての技術を書き記した書を内包した砲弾』をあろうことか作り出し、ガイアに向けて打ち込んだ。
「おい、母なる大地に帰りたいんじゃなかったのか」とも思ったが、どうなるのかという好奇心と不思議と長くゲームを続けて古参と呼ばれるようになり、その砲弾の運搬という大役を任された俺はワクワクしながらそのプレイヤーイベントに協力していた。
そして、全ての準備が終わり。撃ち出された砲弾は進入禁止エリアだった区間を抜け、ガイアに近づき…接触する瞬間全プレイヤーは気絶し
----その砲弾はリアルの地球に撃ち込まれた。
更新はかなりゆっくりですが頑張っていきたいと思います。




