雨降って地固まる?
「お前達は外に出ていてくれ。彼とは私が二人で話す。」
「し、しかし…」
「私がいいと言っているのだ。聞こえなかったのかね?」
「!、は、はっ!それでは失礼します!」
ガチャ
何が起こっているというのだろう。
部屋に連れてこられたと思えばちょび髭貴族は御付きの兵士を家の外に追い出してしまった。
俺は思わず呆けた表情としてしまう。
ちょび髭貴族は俺が座っている対面の椅子に座った。
「ふぅ、お待たせしました。」
「え?いや、そんなに待ってませんが…」
「それでその、例の件ですが……私は、この街の領主です。」
「は、はぁ。知ってますよ?」
なんだ一体?突然雰囲気が変わった?
先程までの領主は偽物だったのかと思うほどの雰囲気の変わり様に思わずたじろぐ。
領主然とした雰囲気はどこにいったのか妙にナヨナヨしているというか頼りない。突然話し出した言葉の意味もよく理解が出来ない。
そもそも例の件って何なんだ?
「た、ただ例の件を断る訳では無いのです。むしろその逆で…」
「何が言いたいんですか?いまいち話が見えてこないんですけど…」
そんな俺の言葉にちょび髭貴族は俯き、そしてフルフルと震え出した。
「わ、私は確かにこの街の領主です。しかしそれ以前に、一人の親であるのです!ですから…ですから、街の者達はどうなってもいい!どうか、家族だけは!」
………………は?今こいつはなんて言った?
今、街の者達はどうなってもいいと言ったのか?
頭の中で何かが弾けた音がする。
気付けば俺は、ちょび髭貴族の胸ぐらを掴んでいた。
「ウグッ!?」
「俺にはあんたが何の話をしているかさっぱりだ。だけどな、あんたがロクでもない事を言ってんのだけは分かる。俺の知り合いに少しでも危険が及ぶっていうんなら、洗いざらい全て教えてもらうぞ!」
「………………ま、まさかお前は獣人の手のものではないのか!?」
「何の話だ!?」
今頃になって勘違いに気が付いたのかちょび髭貴族は叫ぶ。
そして俺の手を振りほどき飛び退くと自らの懐に手を入れペンダントを取り出した。
「このっ!騙しおって!」
「俺は何も言ってねぇっての!」
「黙れ!どちらにせよ聞かれたからにはただでは済まさん!食らぇい、旋風球!」
取り出したペンダントを掲げたかと思うと突如としてペンダントが光り出し、そして魔法陣が出現した。
魔法陣の展開速度は火野さんやサーラの展開速度よりも更に早く、あっという間に魔法を発動させた。
これは……風か!
魔法陣の中心に可視化する程の風が集まり球をなす。
それはかなりの速度を持って魔法陣から放たれた。
「速いっ!」
まずい!距離が近すぎる!
魔法陣の出現から魔法の発射までの速度が想像よりも早く、更に室内で距離が近かった事も関係して、風の魔法は俺がマジックハンドを発動させるよりも早く着弾した。
パァンッ!
「カハッ…!」
炸裂した風の球は容易に俺を弾き飛ばし、後方にある壁に激突させた。
反射的に流衝を使ったがそれでも流しきれない程の衝撃が俺を襲う。
肺から空気が押し出され呼吸が止まった。
「まだ意識があるか。ならばもう一発だ!」
ちょび髭貴族が叫びまたもペンダントを掲げる。先程と同じ様に魔法陣が出現し魔法を生成した。
「チィッ!」
パァンッ!
横に跳んで魔法を躱す。
一回転して体勢を整え、ちょび髭貴族に向かい直った。
…やっぱ魔法発動までが早いな。
可能性としてこのちょび髭貴族が火野さんやサーラよりも熟練の魔法使いだという事も考えられるのだが、恐らくこの場合は別。方陣魔法だろう。
レーゼは言っていた。
『魔法を使うには三通りの使い方があります。
一つ目は最も良く使われる方陣魔法です。これは魔法陣を物体に描き、魔力を込める事で発動します。他の二つの使い方よりも魔法展開が早く、複数回の利用が可能な為、良く使われます。』
ちょび髭貴族が魔法を発動させる際、二度ともペンダントを掲げた。
まず間違いなくあれが魔法を使う媒体だろう。
思ったよりも厄介だ。俺にはこの世界の魔法についての知識が無い、だから方陣魔法に込められる魔法や使用回数が分からない。迂闊に近づけばマジックハンドを使う前に殺される可能性だってある以上俺に出来ることはマジックハンドを発動させることだけだった。
「これで終わりだ!旋風球!」
「今度は間に合う!マジックハンド!」
三度、同じ様に打ち出された風の魔法。
それを触る事が今度は出来た。
「何!?魔法を受け止めただと!?」
「それだけじゃねぇぞ。お返しだ!」
両の手で包み込む様に受け止めた風を、その場で回転してちょび髭貴族に打ち返す。
流石に予想していなかったのか避ける動作もする事が出来ずにちょび髭貴族は吹き飛んだ。
パァンッ!
「ガハッ!?」
そのまま部屋の扉付近の壁に激突して地面に倒れふす。
未だ意識が残っているのか、咳き込み俺を睨みつけてきた。
「その…力は、まさか異能か?
…ならばお前は……異世界人、なのか?」
誤魔化すのは流石に難しいか…
「だとしたら何だ?」
「お前は他所の人間だ、この街の問題に口を挟むな…挟まないでくれ…」
何がちょび髭貴族をそこまでさせるのか、貴族だというのに俺に頭を下げたのだ。
だが、俺はーー
「……断る。」
「何故…!?」
「さっきも言ったろ?知り合いに危険が及ぶなら止めない理由は無い。
ただ…あんたさっき言ってたよな、家族だけわって。
守りたいんだろ?家族をさ。俺に出来る事なら力を貸すよ、ちょび髭貴族さん。」
「…ッ!
ちょび髭貴族では無い、フェルノ・ムーンだ。
…私に力を貸してくれるのか?」
若干の泣きっ面を見せ、フェルノ・ムーン貴族は片手を差し出してきた。
俺は迷わずその手を取り、固く握り返す。
それは握手、たとえ異世界でも共通であった友好の印。
「当たり前だ。全力であんたを手助けするよ、フェルノ・ムーン。」
先月は投稿せずに誠に申し訳ありませんでした!
主に私のやる気と時間が足らなかった関係です!ホントすいません!
実は最近リメイクして1話から再投稿しようかと思っている次第です!
取り敢えず100話いっても現状とほぼ変わらなければ作ると思うのでご了承ください!
コケ!




