持ち主
三人に事情を説明し終え、俺とメイアねぇさんは走り街に向かう。
因みに火野さんとサーラ、それに翔太は速度の問題で後から街に入る予定だ。
事情を聞くために手には獣人の子供を抱いたままでいる。
「そんで、君、名前はなんていうんだ?」
「オ、オイラはクロル、ルナを安全な所に連れて行く為にここまで来たんだ!早くしないとあいつ等が来ちゃうから!」
「さっきも言ってたけど、その奴等って誰なんだ?」
「あいつ等は…オイラと同じ獣人だよ。あいつらオイラの父ちゃんと母ちゃんを…!」
クロルは目に涙を浮かべて俺の腕に爪を食い込ませる。
ちょっと痛いけれど、ここは我慢だ。
「でもオイラじゃあいつ等に勝てないから…、せめて、ルナを連れて逃げるんだ!」
「……そうか、なら急がなきゃな!」
更に速度を上げる。
この子の事情は後で聞こう、まずはクロルをルナって子に合わせてやりたい!
クロルの頭を撫でつつ、俺は思い切り一歩踏み込んだ。
数分後に街の門に到着する。
先行して走っていたメイアねぇさんが街に入る許可を得ていたらしく、直ぐに門を通過できた。
俺達は走りながらも会話をする。
ただここは街中、震脚や瞬身は使えない。
「どうだ海斗、何か聞けたか!?」
「悪い!後でちゃんと聞く!」
「はぁ!?聞けてねぇってことかよ!?」
「ほんとにごめん!」
メイアねぇさんには悪いけど、先にクロルの用事を優先してやりたい。
勿論分かってはいる、クロルから事情を聞く事の方が優先だと言うことは。
でも俺は重ねてしまった。他でもない俺自身と。
健二…
状況は全く違う。
だがそれでも、大切な人に会いたいという気持ちだけは分かる気がするから、だから俺はクロルをルナって子に合わせてやりたいのだ。
「それでクロル!ルナって子はどこにいる!?」
「えっと…、なんか大きな家にいるって言ってた……」
「………場所知らんの?」
「………うん。」
………………マジか。
思わぬ展開に足が止まる。
どうすんだこれ。家が分かんねぇんならルナって子を見つけるの無理なんじゃ…
思考が徐々に冷静になっていくのが分かる。
頭の片隅にルナって子を捜している時間は無いという思いが生まれた。
「ルナ……」
その時、俺に抱えられたまま俯いたクロルが呟いた。
その姿は酷く悲しそうで、まるで俺の考えていることが分かっているかのような感じがした。
いや、恐らく察しているのだろう。クロルは見かけよりもずっと正しい判断が出来るから、だから現状を俺よりもずっと正しく理解しているのだ。
…なら、何を弱気になってやがる俺!クロルをルナって子に合わせてやるんだろ!
「メイアねぇさん、馬鹿な事を言っているのは分かってる。でも、頼む!ルナって子を捜すのを手伝ってくれ!」
俺のすぐ後ろに立ち止まったメイアねぇさんに向き直り頭を下げた。
いきなり頭を下げられたメイアねぇさんは流石に驚いたようで、ギョッとした表情を見せたが、直ぐに何かを考えだした。
俺の頼みを検討してくれているのだろうか?
それとも俺にどう諦めさせるかを考えているのか、もしそうだとしても俺は引く気はない。
俺がそう思った時、下げた俺の頭に手が乗せられた感覚があった。
思わず顔を上げる。
視線の先には手を伸ばしたメイアねぇさんの姿があった。
メイアねぇさんは何故か申し訳なさそうな表情で俺を見ている。
「ごめんな、海斗。無理だ。」
あぁ、やっぱり駄目か…、もう何とかして自分で見つけるしかない。
「そう、か…」
「海斗、勘違いすんな。」
「え?」
「無理なんだ。オレの超直感だって万能じゃない、手掛かりが少な過ぎて分からねぇんだよ。」
「それって…!」
「ま、手伝ってはやるよ。」
よっしゃ!
笑みが零れる、クロルを掴んでいる片手を離してガッツポーズを決めてしまう程には嬉しかった。
「そんなに喜ぶなよ…、結局手掛かりが少ねぇつってるだろ。」
「あ!そういえばルナがオイラにこれくれたんだ。」
何かを思い出したクロルが懐から一枚の布を取り出した。
布には綺麗な刺繍がされている。ただ先程のクロルの怪我のせいであろう血が大分付いている。
「布じゃあなぁ…、大した手掛かりにはならないんじゃねぇか?」
「いや、分かった。」
「だろ?流石にメイアねぇさんでも布じゃってえぇ!?分かったの!?マジで!?」
「あぁ、マジで分かった。」
マジか、超直感すげぇな。
でも何で分かったんだ?匂いとかか?
思わず犬のコスプレをしたメイアねぇさんを想像してしまう。
「おい海斗、今何考えた?」
「へぇ!?いや、何も!そ、それよりどこ行けば良い!?」
必死で話を逸らす。バレたら殴られるだけで済むだろうか。
「……街の中心部、この街の領主。いわゆる貴族だ。」
「き、貴族!?」
「あぁ、まず間違いなくな。っていうかお前だって分かる筈だ。」
「何でだよ?」
「この布をよく見ろ。ここにある刺繍、何処かで見た事ないか?」
メイアねぇさんは布の一部を指差す。
そこには二本角を持ったライオンと西洋のものだろうか、そんな形の剣の形の刺繍があった。
でもこんな模様何処かで見たっけか?
頭をひねって考えるも思い出せない。
「…………いや、無いな。」
「嘘だろ!?あれ見ろあれ!」
「あれは?時計塔?」
メイアねぇさんに促されて視線を移すとそこには時計塔があった。
高さは30メートルぐらいだろうか、時刻は山の核三時を示している。
「あれが何か…ってあああぁぁぁ!!」
見つけた。確かにあった。時計塔の時計盤に描かれている二本角のライオンと西洋らしき剣の模様。クロルが持っていた布に描かれた模様と全く同じ物。
そうか、だからメイアねぇさんは領主だと気づいたわけか。
それに布をよく見てみれば、この世界の物にしてはかなり良い布だ。これを持っていたという事はそれなりに良い家の人間、というわけか。
感服した、超直感によるものかその観察眼は凄まじい。
「どうだ?分かったか?」
「あぁ!分かった!ありがとうメイアねぇさん!」
「は、早く向かおうぜ、領主宅。」
俺の言葉に照れたように顔を背けたメイアねぇさんは街の中心部に目を向ける。
「クロル!ルナって子に会いに行くぞ!ちゃんと事情を話せよ!?」
「うん!分かってるよ!」
クロルの元気の良い返事を受けて、俺達はまた走り出した。
コケェェェェェ!!
どうも皆さん!光輝くニワトリです!今日で一年が終わり、平成も終わります!これが今年最後の投稿になりますが、これからもよろしくお願いします!それでは、良いお年を!コケー!




