スフィアさんからの招待
あれから俺はスフィアさんに連れられて家まで来ていた。
で、でけぇ……
見上げる俺の目の前にはここまで見てきた家より一回り、いや二回りは大きな家があった。敷地も大分広い。
スフィアさんはキィと音を立てる門を開けて中へと入っていく。
その後を俺はそそくさとついて行った。
ガチャ
「ただいま〜。あ、海斗君はそこの椅子に座ってて頂戴ね。私はこの人置いてくるから。」
「は、はい。分かりました…」
イケメンホモは先程からピクリとも動かないので死んでいるのでは無いかと疑いつつも椅子に座る。
まぁスフィアさんが何の反応も示さない以上問題は無いんだろうけど…
スフィアさんはイケメンホモを肩に担いだまま奥の部屋に入って行った。
しばらく後、肩の荷物を降ろしたスフィアさんは部屋から出て来る。そして台所に向かい何かを用意し始めた。
「お茶は紅茶と緑茶、どちらが良いかしら?」
「あ、じゃあ緑茶で。」
どうやらお茶を淹れてくれるようだ。有難い、丁度喉が渇いていた。
どうぞとお茶を渡される、異世界だからか器がティーカップだった。なんか新鮮だ。
「ズズズ………美味いっす。」
「あらあら、それは良かったわ。お代わりが欲しかったら言って頂戴ね?」
「えぇ、ありがとうございます。…………それで、俺に何をさせたいんですか?」
「ん?どういう事かしら?」
「とぼけないでくださいよ、お詫びって事にしても憑かれた俺を家に招く理由は?万が一封印が解けて暴れるかもしれないんすよ?」
「あぁそういう事ね。大丈夫よ、そのくらいの力なら問題ないから。」
薄っすらと目を開いたスフィアさんから感じた圧にゾワリと肌が泡立った。
間違いない、この人はデルタを叩きのめせる。つまりはメイアねぇさんと同等かそれ以上の実力を持っている。 その証拠に先程からうるさかったデルタの声がピタリと止んでいる。
知らず、俺は身構えてしまった。それを察したのかスフィアさんはさっきまでのふんわりとした雰囲気に戻った。
「あらあら、ごめんなさいね。脅かしてしまったかしら?」
「い、いえ…」
「大丈夫よ、その悪魔は大した強さじゃないわ。」
「でもこいつは古代の悪魔で…」
「本当?少なくとも私は布切れ寄りの封印布に封印されているのが古代種だなんてとても思えないわ。」
おいおい、じゃあもしかしてデルタは嘘をついていたっていうのか?実際悪魔だし平気で嘘つくかも…
そんな事を考えれば余計にデルタに対する印象が悪くなっていく、とその時、意識が朦朧としだした。
抵抗する間も無く景色が暗闇へと変わっていく。
ふと気付いた時にはまたあの白と黒の世界に立っていた。
「ここは…封印があるのに何で…」
「それはここが貴様の魂の世界だからだ。」
「っ!?まさかデルタ!?」
背後から質問に答える様に声が聞こえて来くる。俺はバッと後ろを振り返った。
だがデルタの姿が見えない。あいつは何処に行ったというのか?
キョロキョロと探してみてもデルタの姿は無い。聞き間違いかと思ったその時、声がまた聞こえる。
「おい!何処向いている!?此処だ!此処!」
声の出所は…下か!…………下?
目線を下に向ける。そこに居たのはあの白髪のイケメン、ではなく白髪の子供だった。どうやらこいつがデルタの様だ。そうか、こいつが…
「ちっちゃくなっとるぅぅぅぅぅぅ!?」
いやいや待て待て待て!何でそうなった!?
「貴様!おれっちがちっちゃいだと!?」
「ブフッ!一人称まで変わっとるっ!」
随分と可愛らしくなったデルタを見て思わず吹き出してしまった。
「馬鹿にしやがってぇぇ!早く封印を解けよ!この野郎!」
ハッとした、そういえばデルタの封印はどうなっているんだ?
「デルタ今封印されてんのか?」
「はぁ!?お前がおれっちを封印してんだろ!?ほら!これ!」
そう言ってデルタは自らの腕を見せつけてきた。見れば手首に変な形の光の輪が付けてある、どうやらこれが封印らしい。なら身体の方は安心だ。
そうなるともう一つの疑問が浮かんでくる。
何で俺はまた此処に来たんだ?………さっきデルタが白と黒のこの世界は俺の魂の世界だとか言ってたな、あいつは何か知っているのか?
現状何も俺は分からないのでデルタに聞くしかない、取り敢えず俺はデルタに話を合わせる事にした。
「封印を解くにも先ずは此処から出ないといけないんだけど…どうやって出るんだ?」
「お!解いてくれんのか!?こっから出るんならな、意識を強く持って浮いていくイメージを思い浮かべれば良いんだ!」
言われた通りにやってみる、すると体が透けてきた。何これ怖い…
「待てよ!おれっちの姿元に戻せよ!」
「はぁ?戻し方なんて知らねぇよ?」
「貴様のイメージが影響されてんだよ!」
全くもって意味不明だ。なので詳しく話を聞いてみると二つの事が関係していた。
先ず一つはデルタは怨念、つまりは呪いから生まれた存在であること。
その為個としての姿を持たないらしい。
そして二つ目、此処は俺の魂の世界であるという事。
この世界は俺の精神状態や力の状態によって左右される、デルタがこんなちんちくりんになったのは俺の中のデルタのイメージが崩れたからだそうだ。
「は〜ん、成る程。んじゃ俺は戻るわ。」
「おうそうか…いや待てよ!おれっちの姿ーー」
デルタが言い終えるよりも早く俺は魂の世界から脱出した。
目を開く、暗かった目の前が急に明るくなり思わず目を細めた。
「目が覚めたようね。良かったわ、突然意識を失うんですもの。」
「悪魔に呼ばれまして…」
「悪魔に?まさか封印が?」
「いえ、封印は出来ているみたいです。ただあいつちんちくりんになってて…まぁ話しやすくはなりましたよ。」
「そう、でも信用はしないようにね。悪魔は、平気で嘘を吐くから…」
何やらスフィアさんが不穏な事を言っている。頭の片隅に入れておこう。
「そうだったわ、これ。」
ふと思い出したように机の上にあるハンコの様な物を俺に手渡してきた。
「これは?」
「その道具を体に押し付ければ封印布が無くても一刻の間くらいなら封印布の代わりをするわ。それ、絶対必要でしょう?」
スフィアさんの言う通りだ、お風呂に入る時やトイレをする時なんかは絶対に必要になる。
「夫が迷惑かけたお詫びよ、遠慮なく受け取って。」
そうは言うが、正直対価に何を要求される事か…
そんな考えが顔に出ていたのかスフィアさんは対価は要らないと言ってきた。じゃあ一体何故…
「海斗君、貴方は私の夫の若い頃に似ているわ。理由はそれだけなのよ。」
「似ている…俺が?」
「えぇ。」
ガチャ
とそこで奥の部屋のドアが開く。中からイケメンホモが出てきた。
俺はすぐさま立ち上がりお礼を言う。
「スフィアさん!お茶ありがとうございました!それではまた!」
「えぇ、また会いましょう。」
そして素早く、それでいて乱暴にならないように注意しながら玄関を開けて外に出たのだった。
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「うふふ、貴方随分嫌われたわね?」
「そうだね!少しばかりしつこかったかな?ついシンパシーを感じてしまったよ!」
「似てるものね、本当に昔の貴方にそっくりだわ。」
海斗が出て行った玄関を見つめながらスフィアは感傷に浸る。懐かしい、10年ほど前の若い頃の記憶。
その頃のレイスに海斗はよく似ているらしい。
「彼には僕みたいな失敗はしないで欲しいものだね。」
「えぇ、あの優しさが仇とならなければ良いけど…」
「海斗君、頑張れよ。優しいだけじゃ、後で後悔するぞ。」
2人はそれからしばらくの間心配そうに玄関を見つめていたのだった。
コケェェェェェ!!
皆さん!お久しぶりです!光輝くニワトリでぇぇぇす!
最近ようやく落ち着いてきたのでぼちぼち更新してまいります!お楽しみに!コケーーー!




