序章 一話 不思議な夢
どうも、たいやきくんです。
なんとなく思いついて、ある程度構想できたので上げてみます。
不定期になると思いますので、暇があるときに読んでください。
今回はいきなり夢から始まります。
よくある話ですね。
ではでは、どうぞ~。
寝ていた俺はゆっくり目を覚ました。
目の前には自分の知らない世界があった。
青い遺跡の通路ような場所に俺はいた。
夢でも見ているのかな、と思うような不思議な光景だった。
視界が上下に揺れている。
何かに乗っているようだ。
左を見るとゆらゆらと海草のように動く金色の何かがある。
細い繊維のように揺れるそれはよく見ると綺麗な金髪だった。
その横からのぞき込むと金髪の持ち主の横顔が見えた。
整った顔のかわいらしい人形のような少女だった。
何やら緊張が肌にこびりついているような張り詰めた表情をしている。
夢の中だからか、それとも起きたばかりだからか、その子の顔の特徴はよくわからなかった。
ただ一つだけわかったことは、その子の目の色が左右で違ったことだけだった。
左目は神と同じような金色で、右目は海のようなこれまたきれいな青色に光っていた。
俺が彼女の顔を横から凝視していると、ふと彼女の顔がこちらを向いた。
俺が起きたことに気付いたようだ。
「あっ、ハウル。目が覚めた?」
俺をハウルと呼ぶ彼女は微笑みながら聞いてくる。
会ったばかりのはずなのにまるでいつも一緒にいたかのように笑いかけてくるこの少女のことを俺は何も知らない。
それに俺の名前はそんなジブリ作品の登場人物のような名前じゃない。
なのに、この関係と彼女からの呼ばれ方に不思議と違和感がない。
むしろしっくりきている。何故かはやはり分からない。
ともかく彼女が誰かはわからないが、とりあえず俺のことは仲間と思っているようだ。
少し警戒したが、敵でないと分かったので俺は素直に頷いた。
「そっか、よかった。」
彼女は俺が頭を縦に振ったことで小さくため息をついた。
随分と信頼されているようだ。
こちらからすれば初対面なので、どうしてそんなに信頼しているのか皆目見当もつかない。
俺は不安に苛まれた。
「ハウルはいつも静かだから、まさかいつの間にか寝てるなんて思わなかったよ。」
困った笑顔で彼女は言う。
それはすまなかったな、と短く返してなら他に話す相手はいないのかと周りを見渡すが俺たち二人以外に人はいない。
俺たちだけでこの謎の遺跡じみた空間を移動している、ということだろうか。
「そういえば、他の奴らはいないのか?」
「何言ってるの?司祭様の説明聞いてなかった?虹の賢者様に会えるのは虹の勇者である私とその私と契約してるムーンサーヴァントのハウルだけなんだよ?」
それとなく疑問をぶつけてみると、やれやれと言いたげな表情で呆れられてしまった。
さらに新しい言葉もたくさん出てきた。
虹の賢者、虹の勇者、ムーンサーヴァント。
どれも聞いたことがないものばかりだ。
ゲームの中でしか聞かないであろう言葉が陳列されて、頭の中が軽く混乱した。
ところで、先ほど辺りを見渡した時に気付いたことがある。
俺はこの少女の肩に乗っているということだ。
信じられない、俺は大学生なんだぞ、と自分の姿を確かめる。
すると、自分の手が茶色の丸い手に変形していることに気付いた。
よく見ると足も肩も腹も、茶色のモフモフした何かに変異している。
まるで人形になったような気分だ。
やはりこれは夢なのだろう。
こんなことが現実に起きるわけがない。
「さぁ、着いたよ。ここが賢者の間だ」
そんな感じで少女の歩行によって生じる揺れに揺られながら、自分の姿を確認していると不意に少女の声が廊下に響いた。
顔を上げると目の前に不思議な紋章が描かれた大きな石扉がたたずんでいた。
どうやら考え事をしているうちに少女はこの遺跡|(?)の最深部まで来ていたらしい。
扉から発せられている異常なまでの荘厳な雰囲気に俺は圧倒されてしまって声が出なかった。
もともと人形だったのだから声が出るかはわからなかったが。
あっ、でもさっき出たわ。混乱しててもう忘れていた。
「この先に……虹の賢者様がいるんだね……。」
虹の賢者。
先ほども出てきた謎の単語を真剣な表情を浮かべながら口に出す少女の傍らで俺は一体これから何が起きるのか予想がつかない。
人形だから汗は出ないが、人間に姿だったら背筋を汗が伝っていただろうということが解るくらい、体が緊張している。
「ハウル、準備はいい?……開けるよ。」
俺と同じくらい緊迫した顔の少女は俺に確認を取り、石扉に両手を当てて力いっぱい押し開ける。
開かれる扉の隙間から眩い光が暗い通路に差し込んでくる。
そのあまりの眩しさに俺は目をつむった。
そして辺りが光に包まれる中、俺の頭の中に一つの映像が流れ込んできた。
先ほどの場所と同じか、似ているけど違う遺跡か、どこかの部屋が映し出されていた。
その真ん中には水晶玉のような美しい球が台座の上に鎮座されている。
その周りには、中心の台座に比べると小さいものの六つの台座にばらばらに六つの色とりどりの宝玉がはめられている。
そんな部屋の中心近く、水晶玉の台座のそばに何かがいる。
小さいクマの姿をした何かが立っている。
その身には大量の赤い液体がかかっていた。
その傍らには、先ほど俺と行動していた少女が床に寝そべっていた。
――ただし、小さなクマにかかっているものと同じ、赤い液体で作られた小さな水たまりの上で。
そして、クマの手は先ほどまで俺が見たものと同じような茶色の丸い手でその先から白い鋭そうな爪が伸びていた。
その爪の先端からは、墨汁に付けた習字で使う筆のように赤い液体が滴り落ちるほどべったりと付いていた。
まさか、いやそんなことが、と最悪の状況を予想し自分の血の気が引いているのが分かる。
そんなとき、クマの顔がこちらを向いた。
そして、人形なのだから表情が変わるはずないのに、ソイツはまるで怪しい笑みを浮かべているような気がした。
俺はそれを直感で理解し、思わず意識が飛びそうになるほど恐怖した。
次の瞬間、その情景は遠ざかっていき、辺りは暗い闇に覆われ始めた。
俺は必死に手を伸ばした。
今あの場から離れたら、取り返しのつかないことが起きる気がしたから。
しかし、それは叶わなかった。
伸ばした手から逃れるようにあの情景は水晶玉に移っているように丸い像になって、遠くへ遠くへと離れていく。
それでも必死に手を伸ばした。ちぎれてもいいとすら思った。
でも手は届かなかった。あの水晶玉はどこかに行ってしまった。
さっきほどの恐怖で声が出ないはずなのにせめてこれだけでもと、知らないはずなのの少女の名を呼んだ。
「ーーーーーーー!!」
それと同時に周りの闇が消え始めて、どこからか聞きなれた音がした。
「――ピピッ!ピピピッ!ピピピッ!ピピピッ!――」
機械的な音は普段なら微塵も感じられない優しさを醸し出しながら、俺を暗闇から引っ張り出した。
次の瞬間、俺は布団から跳ね上がり、いつもの寝室で目を覚ました。
頭になぜか頭痛を覚えながら、俺は辺りを見渡す。
そこには、中学生のころから使っている勉強机、バイト代で買ったゲーム用パソコンなど、いつもの俺の部屋だった。
間違っても、青い遺跡とか大きな石扉なんてなかった。
窓を開ければ、目に飛び込んできたのは剣も魔法もない現代の日本の田舎だった。
やはりあれは夢だったんだ。
俺はそう確信した。
確信して一安心したところでアラームが鳴りっぱなしのスマートフォンのアプリを止める。
それから寝間着のまま部屋から出て、一階のキッチンへ急いだ。
今日も大学の講義だ。しっかり勉強しなくては。
――でも、あの夢は本当に何だったんだろう。
疑問に思うことはあったが、大学へ赴くためにそれを記憶の片隅に置いて朝の準備を済ませることにした。
泡沫の夢はシャボンのようにはじけた。
そして俺は、変わらない日常へと戻る。
『所詮は夢だ、これで終わりさ』
そう思っていた。
――その先に平穏と自由で覆い隠された苦難が待っているとは、とても考え付かなかった……。
いかがだったでしょうか?
まだ序章なのでわからないことだらけですが、今回出たことはいずれ解ってくると思います。
というか、この遺跡は後々出てきます(ネタバレ)。
なので、気楽に読み進めてください。
簡単なものでいいので批評や感想はどんどん頂けたら幸いです。
もう、面白かったとか、なんか読みづらいとかでもいいので思った通りに書いてください。
では、次回までチャオ!