成長
今回はそこそこに描きやすかったです(o^^o)
誕生から3年経ち、当時の赤子は子供へ成長した。
子供の三年というのは早い。屋敷の姿も使用人達の顔ぶれも多少は変わったが、それ以上に子供はスクスクと育って行った。
「坊ちゃーん、着替えの時間ですよー。」
乳母が、子供用のヒラヒラとした服を持って笑いかける。
「や、ひとりでやる。」
子供は乳母から目をそらしてボソリと言った。
「そんなこと言わないでくださいよぉ。さっきからずっとそうじゃないですかぁ、私達困ってしまいますぅ。どうしても嫌ですかぁ?」
3年の間でいつのまにか乳母の手伝いをするようになった厨房の女中が子供の頰を撫でながら言う。
「いやなものはいや! ぼくひとりでできるのはやる!」
顔を赤らめて、当てられた手を振り払うように子供は言った。彼は僅か三年で、立派な自己を持っていた。
「くう、坊ちゃん前はあんなに手のかからない良い子でしたのに。最近は強情になってしまって……。」
そう言って乳母は数年間の記憶を語る。
おしめを変えるときは嫌がらないどころか、催したらすぐに教えてくれた事、抱っこをされたら動かないでじっとしていた事、食事の時はどんなご飯でも嫌がらずに食べた事。
「これが幼児のイヤイヤ期ですかぁ……恐るべしですねぇ。」
今までは若い声を震わせながら泣いていれば子供が折れて素直に言うことを聞いていた。しかし今回は流石に騙されていると気づいたのか、その幼い顔で必死に乳母を睨む。
「べつに、きがえるのがいやじゃないの。ただきがえさせられるのがいやなの! いーやーなーのー!」
ムキになっているところが女中達を夢中にさせることに子供は気づけない。
「ああほら泣かないでください。わかりました、わかりました。今回は私達の負けです、ね? ポミエさん。」
しかし、乳母は本人が嫌がっている以上あまりくどくするのはよろしくないと思ったのか譲歩する形で話を終わらした。
子供の方は今回という言い方に不満を持っているようだが。
最近、時間の感覚がようやく治ったというか記憶がちゃんとするようになって来た。
一週間ほど前までは昨日の記憶がある事はまちまちだった。下手したら一瞬ほど前のことですら。しかしここ最近は、一週間ほど前からは記憶がしっかり保たれてる。
まあしっかりする前の記憶もなんとなくは残っているが。自分の記憶と感覚では、まだ転生したと自覚してから1ヶ月も経っていないように思えるが……体の成長ぶりをみるに結構経っているみたいだった。
具体的に何歳とは言えないけど、保育園とか小学校に入る前の年齢だろう。
まあ記憶がはっきりして来た事で、色々はっきりして来た事がある。
例えば僕の立場。僕はやはり貴族の子供だ、どれほどの地位の子かはまだわからない。けど、相当だと思う。
まず服の素材だ、僕が着る服は絹のような光沢のある滑らかな奴や、レース生地のような手の込んだ物がフリルとかでふんだんに使われているが、この屋敷に働く多くの人の服はそのような高価なものではなさそうだ、茶色や紺など地味な色だし。
この屋敷で働いている人はおよそ30人くらい。
特に屋敷から出ている様子もないから住み込みだろう。
散歩した限りじゃ森番や庭師もいる。
コックや子守さんとか多くは女性だけど、森番さんとかは結構なおじさんだった。
昔は男性の方が給料が高かったって聞くけど、結構なデカさの屋敷にそれ相応の庭もある。
女性が多いが男性も含む使用人が30人くらいいて、大きな屋敷を持つ。これは、これはそこそこの貴族なんじゃないか?
ただ1つ気になる事は親には一度もあっていない事。
記憶がハッキリしてから一度も会ってない。
まあ、我が子を他人に面倒見させるほどの文化なんだから一切関わりがないというのもまあまあ納得できると言えば納得できるけど……だけど一週間で一切合わないのは変じゃないか?
これがたまたま出張なんかで子供の僕を置いて言ったというだけなら良いけど、なんか違う気がする。
もしかして、嫌われているのか?
まあ考えても仕方がない事だ。
ついでに、わかった事は他にもある。
言語とか常識とかね。
例えばここの文化圏じゃ性別じゃなくて仕事によって服がかわる。
女性の馬とか豚の家畜番さんがズボン履いてたり、男の僕がヒラヒラしたワンピースみたいな服を着たり。
森番さんはよく童話で見る小人の木こりみたいな服装だった。特徴的なとんがった帽子、ピーターパンみたいなやつで伝わるかな。
制服とか、こういう人はこれを着ろっていう文化が強いんだろうね。
特に僕の服がすっごい。本当に女物なんじゃないかってほどヒラヒラふわふわのやつ、絶対フリルとかいらないって。見てる分には可愛いけど着たくはない。
まあ子供のうちはまだ何とかなるけど第二次性徴の時とか地獄絵図になるってコレ……。
そういえば今回調べてわかったんですけど
実はイギリスのコックさんって女性が多かったらしいですね。
今じゃシェフとかコックって聞くとヒゲを蓄えたおじさんを思い浮かべがちじゃないですか?
え、違う? そう……。
(>_<)