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ちらうら  作者: 湊いさき21
本編
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はいりょ

 ちょっとした気の緩みで気分が沈んでしまったが、しかし噂に聞こえし華の都、帝都についたのだ。

 少しだけ崩れた化粧も直したことで、いざ見回りへ。


 ここで帝都に対して聞きかじった話をしよう。

 帝都にはまず大きな特徴として水路が整備されている。

 常に生活用の綺麗な水が出される蛇口が街の各所に点在し、そして各施設には生活排水を捨てる下水道も用意されていてかなり綺麗だ。


 語って気持ちのいい話ではなかったので多くを語っていなかったけれど、館ではツボに溜めていたものを森へ捨てて行くと言う方法を取られていて、館や森に近寄りづらい一角ができていた。館や村でも酷い有様だったのに、こんな都市だと捨てる場所にも困るからと、勝手な場所に捨てられでもしたら酷い惨事になってしまう。


 これも帝都に住む魔術師が年中無休で水を流したり、水道の管理をしているおかげだ。


 そう考えると、前と比べてこっちの世界は文明の起こり方が面白いのかもしれない。魔術師という稀な存在さえいれば、川沿いに家を建てる必要もないのだから。


 水の整備がなされている帝都の魅力をもう一つ。

 なんと帝都では魔術師がかなり優遇される。


 魔術師は小さいものだったら家なんか要求すればすぐにもらえるし、税も軽いらしい。その代わりとしてずーっと水道の処理だとか、新しい施設の工事だとか、徴兵だったりとかされる訳なんだけれども。


 あと魅力というか、ただの特徴なんだけど……。

 帝都の市民は三つに分けられる。


 一つは上級市民、魔術師がなる階級で、さっき説明したみたいに多くの貢献をして多くの見返りを受け取る人達だ。


 次に一般市民、これは魔術が使えない普通の人間……まあ、普通に生活をして普通に税を納める人達だ。鍛冶屋だったり服屋だったり、魔術師と比べて目に見える貢献はないけど、それでもコイツらがいるおかげで都は潤っている。


 そして最後に、奴隷市民。あー、うん個人的にはこの人達はかなり慎重に扱いたい人達だ。やっぱり元日本の男子高校生としては奴隷と聞くと少し抵抗がある。


 まずこの人達は生まれてから成人するまでに小分けにして、全身に入れ墨をされる。


 これは奴隷紋と言って自分が帝都に住む奴隷ですよっていう証だ。入れ墨は魔術師によって刻まれる一種のルーンで身体能力が向上したり、素直に(・・・)言うことを聞くようになったりする。


 そうしてできた奴隷市民は例えば下水道の掃除だったり、犯罪者の遺体の処理だったり、人がやりたくない仕事をやらされる。


 住居も水路の地下だったり、下水道に隣接というか、組み込まれてたりする場所で衛生環境もよろしくない。


 こんな感じにちゃんとした……いや、まあいい暮らしが出来てる市民と隔離されている奴隷市民は独自の文化を気づいていて、奴隷紋を掘る時は魔術師に頼んでアートにしたり、後は奴隷市民だけが使う言語とか、通貨も奴隷市民専用の紙幣があるらしい。


 言語については詳しいことはよくわからないけど、紙幣については実物を見せてもらってあらかじめどんな物かを教えてもらったので語ることができる。


 紙幣は適当な判で押されたボロい紙なので偽造はする気になったらできそうだが、まあ有効なのは帝都だけだし、正直に言って紙幣で買えるものにろくな奴はないのであまり偽造する価値はなさそうだ。


 それに奴隷市場に供給される物資は帝都市場に繋がってない、いわば独立した市場なので紙幣が偽造されてもあずかり知らぬところでインフレが起きるだけらしいし……。


 ああでもこの人達は帝都に使える奴隷なので、別に他の市民の言うことを聞かなきゃいけないとかそう言うことはないのだけれど、まあ何というか、多少の暴力は振っても問題になりづらかったり……彼らの扱いには注意を払いたいものだ。


 まあ奴隷市民が一般市民権とやらを獲得することもできるらしい、現一般市民からの推薦と算数やら教養のテストが必要だけど。まあそんなことがなくとも魔術が使えれば一発で上級市民になれるから、彼らに生まれてついての権利が保障されていないのは可哀想に思えるが、なんとなく感覚が麻痺してきた自分としてはそこまで哀れとは思っていない。


 これは由々しきことかなと思いつつ、哀れに思えない自分というのはいる。だいぶ僕もこちらに染まって来たのだろうか、いや別にそんな環境にいたわけではないから、これが素の価値観なのかもしれないけれど。


 ついでに上級市民1割、一般市民9割、奴隷市民4分程度だ。アバウトな情報だから10割を超えているけれど、まあ気にしないでくれ。


 僕の館には全員が魔術師だったから10人いれば一人は魔術師ってのがどれほどの割合なのかはよくわからないけれど、魔術師の都って言われる帝都でも一般市民がかなり多いってことは、外の町村と比べたら相当なんだろうな。


 まあそんなこんなで【帝都アエテルヌム】の大まかな情報はここで終了だ。


 ここからは普段通り僕が見て感じた事を述べていこう。

 まず帝都は木材を使った家が少ない。どちらかと言えば土や石などの材料で、コレはおそらく魔術の産物だ。


 次に街並み、城壁をくぐってしばらくは直線の道が続いていた。だが少し脇へ目をやれば斜めに道が繋がっていたり、どう見ても狭すぎる道があったりで、計画的に作られた部分と作られていない部分が見えた。


 水道にかかった大きな橋を馬車で渡った際にはゴンドラ的な船や、水瓶を持って川から直接水を汲んでいる人が見えた。水道には水鳥が泳いでいたり、屋根を猫が走っていたりしたのが見えた。


 そうしてしばらくすると大きな城を横切った、帝王様のお城らしい。間近で見れば、立派な物だった。バロック調の荘厳さや、ロココ調の繊細さも見えた気がする。

 まあ建築様式に関してはズブの素人だからあまり詳しい事を口に出してボロを出したりはしない。

 それに絵画もほとんど独学だし、きちんとした教室には通ってないからあんまり美術史に詳しいわけじゃないんだよね……。


 そういえば魔力の反応で上級市民と一般市民はわかったのだけれど、奴隷市民の方は全くと言って良いほど目に付かなかった。特徴的な姿をしているからすぐに見つかると覆っていたんだけれど、向こうも伊達や酔狂でやっていないからね。町の清掃やらをしている筈だけど、奴隷言語やらがあるあたり本気で姿を隠しているんだな。


 さて、城を横切ってたどり着いたのは煉瓦の塀で仕切られた土地だ。場所なんて言わずに土地と形容するのは範囲が広いからだ。まっすぐな塀沿いに敷かれた道を進む馬車だが、煉瓦の塀を視界に入れ始めてからもうかなりに時間が経っている。庶民がこちらを見ていたり、他にもガラガラと車輪を回す馬車などがあるから馬車自体のスピードが早くないのもあるだろうけれど、それでも塀が長すぎる。


 視界に映る塀が切れ、代わりに大きな門に変わったのは長いと思い始めてから数分の後だった。馬車の窓の上辺ギリギリに覗けるほど高い門の天辺には『第7代アエテルヌム大帝立アエテルヌム軍事学校』


 ……アエテルヌム好きだなぁ、帝都って。帝都の名前がアエテルヌムだから、例えば東京にある大学が東京大学になるって理屈で学校名もアエテルヌムなんだろうけど。


 ついでに言っておくけど、アエテルヌムっていうのは帝王の名前だ、それも神様から貰う方の。例えば現在の帝王はアエテルヌム・サエブヌ・イリガルという人で、実際に見たことはないが凄い武人らしい。神様から貰う名前が使い回し、じゃない、世襲制ってのもまあ特別な事だよね。


 さらにこの帝王の話をすると、イリガルっていうのは母方の姓で、普通だったら帝王に名字はつかない。前帝王がアエテルヌム・サエブヌって名前だったんだけど現帝王がサエブヌ2世と名付けられて、本人が2世と呼ばれたくないとか書面上で混乱するからと現帝王自らイリガルの姓を名乗っているらしい。


 まあとにかく、門を曲がってちょっと進むと敷地の見取り図の載った大きな看板が建てられてあった。


 敷地の真ん中にはそこそこ立派な宮殿的な建物が描かれてあって、その四隅に丸だとか六芒星だとか扇型だとかイカれた形の建物が描かれてある。残念なことにあれが学生寮だ。王子やら帝都に住む貴族はあの寮に住まなくていいのが少し羨ましい。


 しかもこの学園のイカれ具合は凄い。どうやら地図によると風の寮は森の中に、土の寮は丘の上に、水に寮は湖の上にあるらしい。馬鹿か何かかと思う、そりゃ魔術師にとってイメージは重要かもしれないけれどさ。それじゃあ風の寮は森の中に置く必要ないだろって、自然的なイメージなんだろうけど安直すぎる。しかも火の寮は普通の立地にあるし、徹底して火の海で囲んどけよな。


 ていうか火の寮は優遇されすぎじゃないか、寮が住みやすそうな長方形だし立地は普通だし。差別か、まあ相手が鎧着ててもただの服を着てても効果的な火が優遇されるのはわかるよ。土魔術とかは壕とか拠点作ったり、水は貴重な生命線だもんな。その点風魔術って言えば何するよ、フーフー吹くならファンファーレでも吹いている方が似合ってるって話だよなぁ?


 まあ風魔術も移動の際に音を消したり、風上を弄ることによって匂いによる追跡とか毒の散布とか色々できるんだけど、どれも要求してくる魔術師のレベルが高いからね、地味だし。暗殺とかあんまり貴族的には褒められる話じゃないし、風魔術よりかは火の方を優先したいなってのもまあわかるさ。だけど何でこんな都会に来てまで森……。


 まあそんな事はここにくる前にクロノアデアからの説明でわかってた事だ。ぐちぐち言うのはみっともない気もする、できるだけ避けていこう。


 さて……あれ、そう言えば観光は?


 え、あ、うん。一旦寮の部屋についてから。そう……。


 こうして、僕が華やかなる帝都を探索するのは先延ばしにされた。


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