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ちらうら  作者: 湊いさき21
本編
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失踪前夜

古典的名作や古今東西のラノベを読んで「ファンタジーっていいなぁ」と思って書き始めました。

設定とか正直決まってないし、不定期更新になること間違い無しなんですがほんわかと読んで頂ければ……!

平に、平に!

 十一月十四日(曇りのち晴れ)


 今日は蜘蛛と蛇を意識する日だった、そう書いておこう。


 蛇は変温動物であり気温の低い間は活動しない。対して蜘蛛は同じ変温動物である癖に、民家が外より暖かいためなのか、冬の前後によく見る。いやさ、その冷涼なる静けさの内に見る蜘蛛が美しいために夏より印象に残る。しかしその美しさは多くの人にとての醜さであり、嫌われ、よく駆除されている。不快害虫って言葉を考えた奴はマジ悔い改めろ。


 朝、自分の自転車に蜘蛛が網を張っていた。もう何年も昔に買ってもらったやつで、タイヤはすり減りフレームは錆びついている。最近は乗っていなくてたまに使う程度だったけれど、人が捨てたような物を、実は今まで蜘蛛が有効利用していたのは驚きだった。まあ、使うときに邪魔だったから巣は撤去したんだけれど。


 使わない自転車をいつまでも持っているのは都会に住んでいるなら駐輪場代がなど色々考えるが、産まれも育ちも田舎者の自分には関係がない。思えばあの自転車とも長い付き合いで、中学の頃はよく乗っていた。同級生の子とよく買い食いをしながらフラフラと帰ったものだ。


 中学三年間の通学路の景色は今でも覚えてる。


 夏は朝焼けに染まる茜色の空と漫然と登る日、黄金に輝く雲と山に沈み行く太陽。冬は深く冷たい霧とぼんやりと道を照らす街灯、白くなる息と満点の星空。


 楽しかったあの頃、久しく見てない美しい四季折々の風景がまぶたの裏をよぎる。あの光景だけでどれだけの絵を描いた事なのだろう。ああ、なんでも素直に感動できたあの頃は良かった。


 センチな気持ちを冷たい空気で洗い流そうと、ふと窓を開けるべくカーテンを開けたら、イエオニグモが窓に網を張っていた。邪魔に思って網を破ってやった自転車の蜘蛛が引っ越して来たのだろうか。朝はガレージにいた癖に御苦労なこと。


 蜘蛛の習性には少し詳しい、美術に少しでも役立てばと思ってそこそこ雑学を学んだからだ。確かイエオニグモは網の近くに巣を作って暮らす、朝に網を撤去して暮れに網を張り直す、なんて色々と忙しい蜘蛛だったはずだ。


 セコセコと働く蜘蛛を見ているとなんだか、勿論そんな歳でもないが、ノスタルジックな気持ち、更にセンチな気持ちになっていた。


 別にこいつがいても困る訳じゃない。

 そう思えてしまって、網は破らないでおいた。


 窓際にいる蜘蛛なんかどうせ夜が二回明ける頃にはスズメにでも食われてるさ、そう思って今夜は後先短いコイツに宿を貸すことにしてやったのだ。


 そう言えば、帰りに蛇を見た。アオダイショウの様な種ではなく、夏の山の様に美しい黒を持った小さい蛇だった。気になり図鑑を引いてみると、本土にいる蛇で黒い種は高千穂蛇という種になるらしい。本土にいる多くの蛇と同様に無毒で繁殖期は夏。そのため今ごろは本来は森の暖かい地中にいた筈だが、まあ遊び盛りの子供が森で走り回ったのか腹の減った狸が地面を掘り起こしたのか、そう言う事情があるのだろう。


 あれも無毒なのに害獣として扱われていたなあ、美しいのに。かく言う僕も感性が変わるまでは苦手だった。蛇形の爬虫類に哺乳類は本能的恐怖を受けると聞いた事がある、今はその美しさを知れる分、感性が壊れて良かったのかもしれないな。


 話は途中だが日記が長くなった、今日はここで終わり。〆。


最初は短めですが、段々と文字数が伸びてきます。

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