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ちらうら  作者: 湊いさき21
本編
151/167

デイト?

 クロノアデア問いて曰く、坊ちゃん、何ですかあの試合はと。


 クロノアデアの問いに、僕は応えて曰く、氷の神の家を演ずるコトを求む故なりと。まあ、キチンと説明すればさほどのお叱りは受けずに済んだ。さほど、であって受けなかったわけではない。普通に叱られはした。と言うのも、流石に手を抜きすぎと言うか、全く動かなすぎるという点についてだ。先の試合において、僕は手から鎖を生み出して棒立ち、その後相手を縛り上げてから悠長に歩きながら近づいて、気絶させる魔術を使うった。まずクロノアデアからすれば何を棒立ちしているのですか、何故わざわざノコノコと近づいて行くのですか、などと突っ込みどころはあったらしい。


 でも、そう言った注意点を一通り言い切ると、ポミエさんから見ても私から見ても鎖の作成自体はとても滑らかにできていたし、鎖を鞭のように使い相手にぶつけた際に鎖の制御は完璧であった等、良いところを挙げつらってくれて、嬉しくなった。その話になると、今まで魔術の良し悪しが分からなかったポミエさんも、自らの知見、まあ彼女も強化の魔術が使えて戦える人間なので体の運びがどうだとかなどと言ったものを、交えて僕を褒めちぎってくれた。ああ……良い……。言葉が出ないほど嬉しい。気にも留めない相手から何を言われようとどうも思わないが、大好きな相手からはそれ相応に一喜一憂する。確か、悪口と言うのはヒトの脳のパフォーマンスを直接言われると6割までに落とし、自分に向けられてなくとも見たり聞いたりするだけで8割までには落とせるそうだ。実際にどこまで落ちるかの細かい値は忘れた、もしかしたら6割8割ではなかったかも知れない。ともかく、悪口には一定の効果があるそうだ。その点、彼女らからの悪口や褒めの言葉は僕の精神と脳のパフォーマンスに凄く影響を及ぼす。なので、話の締めに褒めてくれるのは凄く気持ちがよくウカれる。


 ウカれた気分で、僕達はそろそろと祭りを見回る事とした。二人とも、今日はメイド服ではない。どちらかと言えば、ドレスに近い。そう派手なものじゃなく、ただの普段着と言えば普段着と言えるものなのだけれど。


 クロノアデアの服は、いつもとあまり変わらずモノトーン調だが、細かな白黒の市松模様の生地を使ったスカート、絹のように光沢のある真っ白な服に、光沢はなく目に優しく僅かな青みを帯びた白いケープをつけている。また、袖は長くなく、露出する腕のきめ細やかなる肌も太陽の光に艶やかに照らされる。黒いブーツを履いていて、足元から首元までのグラデーションもあり、彼女の銀色の髪がより一層の落ち着きをもち、彼女の少女のような可愛くも美しい顔立ちを引き立てる。一言で言えば、とても綺麗だ。


 一方、ポミエさん。彼女はスラッと背筋が伸びていて身長が高く、元よりおっとりとした美しさがあるのだが、今日は少し可愛らしい服をしている。ゆったりとしたグレーの服に、明るいベージュのスカートだ。足は丸い黄色みの強い革の小履に、小さな花の首飾りをしている。しいて少し可愛くないところを言えば、彼女は僕やクロノアデアと違って自分の魔術で武器を用意することができないので、ナイフを隠し持っている事だろうか。ゆったりとした服で分かりづらいが、両脇腹、腰の辺りにナイフを隠し持っている。ゆったりとした服で隠して、その上からスカートで固定しているようだ。取り出す時は服の脇を捲り、スカートから引き抜くのだろうか。実際に役立たせる場面を考えてみると少しはしたない気もぞする、下手をすれば肌着が見えもぞするだろうに。



 まあそんなどうでも良いような考えはともかくとして、僕は二人と手を繋いで……いや、手をつなごうとしたが、何となく構図が捕まった宇宙人みたいで嫌だったので辞めて、そのまま校内を巡りに行った。色々な出店がある。焼き串、煮付け、ソーセージ、サンドイッチ、飲み物屋、パンケーキ、果物の蜂蜜漬けなどなど……。沢山の飲食物を取り扱った屋台が中々にあって巡りがいのある場所だが、それだけではなく、芝居小屋や簡易的なボウリングや輪投げのような物など、レジャー系統もそこそこあった。


 文化、文明と言うものを感じる。聞こえは良いが、傲慢なのだろうか。やはり、世界は欧州中心に回ってきてこれからも欧州は……彼らを軸とするかはともかく、世界の中心から外れる事はないだろう。アフリカ、アメリカ、中東……かの国自体、後ろ暗い歴史がないわけではない。そして、やはりアジア人の泣き言と捉えられてしまうかも知れないが、欧州はいつだって傲慢で、そしてそれを自覚しようと努力しても恐らくできない。


 フランスではイスラム過激派を風刺で愚弄するのに、イスラム過激派が不快だから辞めろと言っても辞めない。むしろ、言論の自由の為に進んでやろうとすらする。宗教に対する姿勢を馬鹿にするのなら、それに対する批判はくる事を理解するべきだし、相手から嘲笑や不満と言った相応のものを返される事も覚悟するべきではある。まあ、別にイスラム過激派からフランス国民が馬鹿にされても構わないぜ、それが自由ってヤツなんだと言うのなら理解もするが。


 それと理解できなくもない事でもない、非イスラム国のイスラム過激派への不平不満は。ローマ人の土地ではローマ人に従え、郷に入っては郷に従えという事を守らないならば、守らない人へ向ける目をされる事は承知すべきだ。移住先で移住先の法を守らなかったり、移住先に元から住む人々、謂わば先住民を尊重せずに好き勝手暴れるならば先住民から攻撃もされるだろうさ。それが嫌なら攻撃されない範囲でムスリムの法を守れば良い。信徒へ敷いた法を敬虔な信徒が半ば強制的に破らされたなら、それは豚のエキスが入った銃弾で撃ち抜かれようと死後は約束されるように許される事だろうさ。逆に、そこまでイスラムの法を守るんなら、弾圧されるムスリムを例え相手が強国だろうと守りなさいよ……なんて思わずにはいられないだろう。都合の悪い時はムスリムを辞めるのなら、そんな軽い信仰を持って生き恥を晒すくらいなら、自分達の生活を守る為に同じムスリムの民を見捨てられるくらいの軽い気持ちなら、なんてね。



 まあ、ともかくだ。欧州はユダヤ人を全体で差別したり異教徒を迫害したり、北米南米問わず病気を振り撒いたり、アジアの盟主的な立場であった当時の中国をアヘンでズブズブにしたり、北米に国作ったと思ったら黄禍論唱え始めたりと……過去に色々な傷がある。全て、過去の事だし、紙面上では解決した事だ。今更『あの時にこーいった事したんだからお金ちょーだい!』なんて言うのはおかしい事だし、言う方が恥をかくだけだが、実際にあった事をなかったことには出来ない。『ユダヤ人差別はあったがこれからは違う』と言う姿勢は『ユダヤ人差別はなかったしこれからもない』と言う姿勢に変えてはならない。まあ逆に適当にでっち上げをして『こんなにも酷いユダヤ人差別があったんすよ! まだ未解決の問題っすよね!? 金ください!』と言う態度も許されてはならないものだが。とかく、そう言った歴史の傷をよくよく調べてみると、やはり異文化に対する無知、恐怖、そして軽蔑から始まっているように思える。高校生の時の個人調べなんであまり自信はない。


 でも、自文化が一番先進的な文明でありその他は野蛮、なんて考え方は結構ある。生卵を食べるだなんてだの、踊り食いするだなんてだの、生の牛肉を食べるなんてだの、豚を食べるだなんてだの、犬を食べるなんてだの……生卵は本当に徹底した衛生管理がなければ食べられないし、踊り食いだって素材を洗う水用意できない土地ならともかくとして高温多湿など死体が腐りやすい場所では生きる知恵だ。牛肉は豚や鶏と比べ寄生虫も少なく表面に繁殖する菌さえ除けば安全だし、そのように生食して摂れる血液によりビタミンなどの必須栄養が摂れる。豚はいくら体が頑丈だろうと中東のような場所で食べるのは命取りだし、犬は猟犬や愛玩動物としての価値はあろうともそれまで、植物の命や牛の命を軽んじて犬だけを特別視するならそれはエゴだ。エゴが悪いとまでは言わないが、客観的な正当性がないことは自覚するべきだ。下すべき評価が常識なんて言う偏見で汚染されているのだから、取るべき行動が取れない。奴らは野蛮な猿であって人じゃないから好き勝手やっていいんだ、奴らは今まで俺たちに虐げられてきたからきっと復讐に来るんだ、奴らはきっと────。なんて言って、相手を理解できないから、ありえもしない妄想を名分として侵攻する。よくある事ではあるが……。


「坊っちゃん。どうしたんですか、難しい顔をして。」


「別に、何でもない。文明的だなあって思ったけど、帝国民である僕が帝国を文明的だと評するのは滑稽だなあって。」


 クロノアデアが少し驚いたような顔をする。しまった、彼女はヤマオカさんじゃない。思想が違う、笑い話で済む話と済まない話があり、大真面目に捕らえられかねない。いや、捕らえられても構わないが、それで変な感情を抱かれたくない。


「いや、帝国を文化的と認識するあまり、発展している異文化に対して野蛮とか言う発想を抱けなくなりそうだから、その、まあ……。」


 僕が早口でそう否定にもならない否定をすると、クロノアデアは良い発想ですと頭を撫でてくれた。まあ、言ってることは文化相対主義だからね。結局、学問的に考えが確立されるのは遅くとも、どんな場所にだって自文化で他文化を図ることはできないなんて言うのはそれ自体は稀でも世界的に存在する思考なのだろう。世界各地で、彼らの考え方は私たちには理解できないが、また彼らも私達を理解できないのだろうし、そこに大した違いはない。と言う考えは、さほど難しいものではないし。


「よく本を読まれていますね。三賢者の話にも、同じ事が書かれていましたが、それをこう言った場面で思い出せる人は多くない。」


 三賢者の話とは、お伽話みたいな物だ。だいぶ前に校長から本を貰ったので暇を見つけて読んでみてはいるのだけれど、その中にある三賢者の話では三人の賢者とその周りに住む人を話題にした蟻とキリギリスみたいな教訓じみた童話が沢山入っているのだが……子供染みた内容なのだけれど、中々子供には読みづらいと言うか、字も小さく言い回しも難しく、大人の為に用意された童話感がある。まあつまり、『わるぐちはケンカになるからやめようね』なんて書かれた御成敗式目みたいなものだ。現代人からしたらハァ? と言いたくなるような内容だけれども、当人達にとっては大真面目に道徳に関する規範が書かれた大変な書物である。


 あまり文字を読むのが得意ではないポミエさんが暇をしたのかそこら辺の出店から、蜂蜜漬けされた小さなリンゴを買ってきた。異世界版りんご飴みたいなものだ。りんご自体には甘みがなく恐ろしく酸っぱい物で単品ではとても食べられたものじゃないのだけれど、蜂蜜漬けにすると結構うまい。ポミエさんが作るものは中でもリンゴ特有のシャリッとした感覚と蜂蜜の風味にも負けないリンゴの匂いがまた美味しいのだけれど、流石に出店ではそこまでのクオリティはない。とは言え、こういったのも出店の楽しみだ。完璧でないからこそ、お祭りが楽しい。


 クロノアデアは串焼きを買うと僕に美味しいですよと食べさせてくれたり、ポミエさんが僕に焼いた芋を持ってきてくれたり、中々食べ物が美味しい。普段買い食いなんてできる立場にないから、これはこれで楽しい。あまり行儀のいい事じゃないからしょっちゅうするのは嫌だが、たまにはいいものだ。


 お祭りというものを満喫していると、バッタリとクラスメイトと鉢合わせた。別に避けてたわけじゃないが、身内とはしゃいでいるところを見られるとなるとなんとなく気まずい。


「お、チェルトルカ。さっきの試合見たよ、凄かったな!」


 そりゃあ、どうも。うん、あんまり嬉しくはない。やっぱりどうでもいい奴に悪口を言われようが気にならないように、褒められてもあまり気はならない。そもそも僕は二人と過ごしている最中なのに、あまりそう絡まれても困る。まあ二人の目の前で邪険にするのもどうかと思ったし、応援頼むよと軽く言ってからじゃあまたとその場を自然と離れた。危なかった、話し込まれたら貴重な時間が削がれてた。


「ご学友ですかぁ?」


 ポミエさんがにこやかに聞いてきた。まあ否定はしない。さっきの子は剣をつかって戦う子で、何度か戦った事がある。筋は悪くないし、努力はできる子なのでいい戦士になるんじゃないかと個人的な予想をする程度には評価している子だ。学業の方は……授業風景を参考にするにあまりよろしい人ではなかった気がするが。まあ彼の事はどうでも良い、他のところも周ろう。


「しかし、安心しました。キチンと同性のご友人がいらっしゃるのですね。坊っちゃん、どうか大切にしてくださいね。」


 クロノアデアがそう言うので、わかってるってと答えた。しかし、彼女に言われるとまた悲しいな。彼女は、寿命の問題でたくさんの人と別れたくさんの人と出会った。友人とはなんたるかを理解しているのだろうが……。


 そうして過ごしていると、お昼過ぎを知らせる鐘が鳴り、また風邪魔術の応用だろうか、午後の部に参加する生徒は校舎に集合して試合会場を確認してそこへ行けとアナウンスが流れた。もう少し一緒に見て回りたかったが、残念だ。二人とお別れして、校舎へ向かう。


 校舎に行く途中、ドロシー先輩とあった。先輩も一試合目で勝てたので校舎に向かっているそうだ。やっぱり勝ち上がったんだとニンマリと笑って喜ばれた、まあ自分が見ている後輩が勝ち上がるのは嬉しいか。お互い頑張りましょうねと言って、僕達は校舎へと駆けて行った。


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