十字架:国賊への刑具
清掃と言っても、箒でさっさと履いていたら子供の十数名ではいつまでたっても終わらない。魔術師なんだからゴミなんか風でビューッと吹っ飛ばすだけだ。まあ消音とかを工夫しなければ馬鹿みたいに五月蝿いし、筒を作るなり渦を作るなりなんなり、風を飛ばす方法を工夫しないと消費魔力が結構多かったり、色々と大変なんだけどね。
「こう言うのでも回転かけると結構便利なんだね、知らなかった。」
ドロシー先輩が爽やかな笑みをしながら言うが、実は渦を作って物を飛ばすのは結構穏やかではない物からの技術転用だ。現代で言うライフリングとかが結構近い、ジャイロ効果だね。こう言うのでもと言うあたり、ドロシー先輩も本来は砲弾を効率良く飛ばすための物だとしっているのだろうか。まあ今回は風という不安定な物だから、真ん中にデカイ渦を作ってその周りに逆回転の小さい渦を敷き詰めたりちょっと独自の改良を加えて威力を高めているのだけれど、魔術と言う手軽に大量殺戮行為を簡単にできるシロモノがあるから人類の誕生から気の遠くなるほどの時間が経っていても核なりミサイルなりが開発されていないと思えば、まあ嬉しくもあり悲しくもあり。ぶっちゃけ、イかれた魔術師がミニチュア太陽を作ってしまう可能性がないわけじゃない。魔術は魔力さえあればなんでもできるから、敵国に太陽の一部の召喚でもなんでも、不可能じゃない訳ではない。
核の事を考えていると、なんだかしみじみとした気分になる。ぶっちゃけ日本は頭がおかしい。世界で唯一の核爆弾被害国の癖して当の核を二発も落としてきた国とヨロシクやってるし、核の傘の下にいて自分は核濃縮の為の技術も施設も持っていてしかもロケット打ち上げ技術も持っている癖に非核三原則を言い出したり中々図太い。まあ核保有国が核製造しようと決めている国に『核辞めない?』とか、まあソレがワールドスタンダードだよねとも思わなくもないけど。とにかく、日本は核に対しての距離感が少しずれている様な気がする。原発反対とか言ってる割には核に関してあまり発言できていないと言うか。
ダブルスタンダードと言えば『国を背負うのは君たち一人一人の人間なんだ!』なんて、見くびるんじゃないよと言いたくなるほど高校生だからって随分と都合のいい事を言ってくれるものだよね。いやさ、その種のダブルスタンダードはいつもの事だけれどさ。日本を背負っているのは大人なんだ、良くも悪くも。18歳以上の全ての日本国民が特に、17歳以下の日本国民もまあまあ。これが日本の背負われ具合だ。大人達はいつも今の子供は軟弱だの将来が不安になるだの、愛国心に満ち溢れていることは構わないがまずは貴方がしっかりとしたら如何なのですかと思わざるを得ない。18歳以上の投票権とて、国政に関わらせるのは良いが若者の事を大切に思っている候補者が探しても見つからない中で誰に投票しろと言うのだ。全国の大学生以下の投票権を持つ有志が共同で選挙活動費を稼いで出馬しろと? ましてや、増税はしないだの赤字国債を抑制するだの挙げ句の果てに党名ロンダリングだの、大人達の舌が何枚あるかもよくわからない内に政治に関わったって。……欺瞞に溢れた大人への不信感はどの国の子供も共有のものなんだろうか、それとも、曲がりなりにも平和と言う歪な環境にいる国だけなんだろうか。
歪な日本だけれども、愛しい国ではある。愛しいのは歪であるが故か、瞼閉ざせば懐かしい町の様子が思い出される。鬱陶しい蝉の声、ジメジメとした蒸し暑さ、外観を考慮する事なく乱立された電柱、近くに畜産農家が居て家畜臭いコンビニ、夏の夜は畑の周りにゲコゲコと蛙の鳴き声が。しょっちゅう台風はくるし大雨で山が土砂崩れするし一年中地震は起きるし冬は火事だのお年寄りが餅を喉に詰まらせて倒れるだの夏場は学校の行事で熱中症で何人か病人送りになるだの……悪い事を数え上げれば暇がないが、今では全てが遠き祖国よ。
結局、僕は日本を捨てられていない。外の人なんだよ、この世界の。ある外国の方は日本以外の異国で自分は〇〇人なんだと思い、日本に来ると自分は日本人ではないんだと思うらしいが、一人の日本人から言わせて貰えばそれはとても簡単な理由がある。内ゲバばかりの日本人がその人の出世国だとか人種だかなんだかに高性能な脳を必要とする行為ができる訳がない、ローカルルールを自分で調べられてその上で煩雑なソレを守れるか守れないかだ。まあ簡単に言ってしまえば部族の一員になる覚悟があるかないかだ。
例えば、いきなり”Excuse me,would you mind ~?”だのと聞き取れない速さで話しかけられれば身構えてしまうしけれども、こんにちわやどこどこへの道を教えてくれませんかとか、そう言った簡単な日本語を使ってくれれば好意的に接するさ。電車では大きな声で話さないしジロジロと不躾な視線をぶつけない、これを守らなければ自国民ですら白眼視する。ISクソコラグランプリだったっけ、日本人がルールを守らないヒトなら血だのなんだの下らないものを無視してヨソ者扱いする良い例だよ。お客サマ相手に身内と同じ感覚では接しないのだ。ま、世界で10番目に使われてる言語の、その話者の殆どを占めているムラの話さ。まだまだ語りたい愛郷の心はあるが、それは置いておこう。
とにかく、それと同じく、僕は外だ。ルールもわからないから、周りに馴染めていない感覚がする。思春期に入る事もそうだった、他者と自分は決定的に違う事を意識し始め、心が荒む。なぜ彼はこうしないのか、どうして彼女はコレを理解できないんだ、どうして親なのに僕を理解できないんだ……思春期にありがちな事だね。まるでスポンジケーキみたいにブクブクと自意識は膨れ上がり、自分ですら攻略できない心の迷宮を他人は理解せず、無神経とも取れる酷く常識的な対応に、話がこじれていく。そう言う物に心疲れて自らを閉ざせば『なあんだ、全てはこんなに下らない事なのか。』だなんて、ニヒリズムに染まりもするが。
軍事技術の転用について考えていたらおかしな所まで飛んだ物だ、まあ思考の旅は楽しい。いつもそうだ、深く掘り下げても何にもならないからと言って話題をコロコロと変えてしまう。でもお陰で監督のせいでお喋りもろくに出来ないお掃除も終わり、先輩達の出番となった。木陰で働いている様を眺めながら蟻のようだなあと感慨を抱いていると、ドロシー先輩が近づいてきた。
「やっほー。ゲニー君はお昼どうするの? 良かったら皆んなと一緒に食べない?」
お昼のお誘いだ、皆んなと言うことはバートリーさんやフランソワーズ君も誘われているのだろうか。まあ別に構わない、まだ昼食は手元にないがクロノアデアに言えばすぐだし。寮にいるメイドからお弁当を受け取ってからすぐ向かうと言ったが、一緒に行きたいと言われたので、一緒に取りに行くことになった。手が触れ合いそうなほど彼女は歩く距離が近い、年齢のこともあり男女という垣根のなかった小学校入学前後の時を思い出す。あの時は確かに辛くもあり楽しくもあった、生身の感情があった。人生経験と言うのはいくら増えようとじゃあ偶には減らしてみるかとはならない単純増加の物なので、事物は歳をとるごとに新鮮味が薄れていく。サンタさんはいるのかなとか小学生の悩みを大人になってまで引きずってたらイカレてンだろ。人生経験がこの問題は何処にでもありふれている陳腐な事で解法も確立されている物だと教えてくれて、人を無感情で無機質な存在へと変えていく。
「ねえ、ゲニー君ってメイドさん好き?」
唐突にそんな事を言われた。まあ嘘を言う必要もないので好きだと答えるが、そも嫌いなメイドを雇いつづける事がのだろうか? ポミエさんもクロノアデアも優しいし喋っていて楽しいし一緒に過ごしていて心が落ち着く。そう答えると、ドロシー先輩はそうなんだと言って少し黙った。一体それがどうした事なんですと聞きたかったが、口を開くより先に先にじゃあ私のことも好きと聞かれた。そりゃこうして昼も一緒に取る程度には好きだけど、何が言いたいのか。取り敢えずの返事としてもちろん先輩も好きですよと答えると、私もと返事をしてニッコリと笑ってきた。
「おや、坊っちゃん。今お昼を持って行きところでしたが、取りにきてくださったのですね。」
クロノアデアがドアを開けて出てきて、丁度鉢合わせになった。いつ見ても可愛い、見飽きない魅力のある女性だ。その声は鈴の転がるように幼さを孕んだ物で、年若く瑞々しき肌を持ちまつ毛は長く薄っすらと浮かべられる微笑みは優しげだ。服もモノトーン調の質素な物の筈が、彼女が着れば途端に華やかな黒のドレスとなる。彼女ほど服を着ると言う言葉が似つかわしい、つまり服に着られると言う言葉が相応しくない人間はいないだろう。
お昼はこちらになりますと風呂敷……ナプキンに包まれた物を渡される。少し暖かだ。そう言えば、海外に弁当という文化は有ったのだろうか。日本で弁当と言えば具材を入れた握り飯やチマキ干し飯が古くより有って、それが江戸時代などの比較的平和な時代から段々とお弁当として発展してきた物だとは思うのだけれど、海外ではお弁当と言うか持ち運べる料理と聞いてピンと来るものはない。日本みたいに戦時とか、お弁当が必要となる時はかなりありそうな気もするが、やはりここと同じくサンドイッチくらいなのだろうか。僕の昼食は基本サンドイッチだ。偶に水筒の様な物でスープだったりを渡される事もあるが、皆んなサンドイッチにいくつかのおかずとお茶と言うのがスタンダードな物で、あまり面白みがない。まあ騎士の子供でも公爵の子供でも格差なく同じメニューを出される給食よりかはマシだけれども、それでも日本みたいなお弁当に面白みというかバリエーションがないのは物寂しい。まあ日本の物だと管理がめんどくさいし、別にそこまでは気にしてはいないけれども。
いつもありがとうと御礼を、いやさ金銭的な報酬を払われてはいるのだろうから不当な謝辞でありともすれば侮辱にも近い物だとは思うが、個人的には御礼を言いたかったので言わせてもらい、ドロシー先輩とともに一緒に皆んなの所へ歩いて行った。ドロシー先輩はなんだかご機嫌だ。どうしたんですかと聞くと、皆んなでご飯を食べるのが好きだから嬉しいのだと答えてきた。まあ、そう言う事もあるだろう。魔術師は孤独に強いが、好きで孤独でいる訳でもない。苦にならないだけだ、弱い人が自分から離れて行ってしまうのに比べれば。魔術師が俗世と関わると伝え聞いた内容だけでも煩わしいと思えてしまう事ばかり起こるので俗世から離れるざるを得ないだけだ。
魔術師様雨を降らしてくだせえから始まり水車を作ってくだせえ外敵から守ってくだせえパンを作ってくだせえ死者を復活させてくだせえだの……魔術師は神じゃないのにそれを理解できないので無茶苦茶要求してくる。最初は善意で応えていた魔術師もそれはできないと答えたら陰で悪し様に言われ終いには諸悪の根源は魔術師だと超理論を打ち立てて勝てっこないのに徒党を組み襲撃を仕掛けてくるそうだ。慕ってきてくれていた村人だから施しをしていたのに、石を持って追いかけられればそりゃあ泣きもするだろう。魔術師が全員聖イエス様みたいな心の持ち主ならそれでも許すだろうが、聖イエス様が聖イエス様と呼ばれるのは常人とは違って常に立派な行動ができるからで有って全員が全員そんな存在だったらここまで崇め奉られてねーっつーんだよ。敵を愛することが当たり前の様にできる事なら態々そうしろだなんて言わない、普通に考えてまず出来ないだろうから神の名の下に置いて命ずると言う形を取っているんだ。まあこの世界にはイエス様が来ていない様な、と言うかキリスト教的な意味でない神が実際にいる、言い換えて主や天使以外の超常が存在する世界なので世が荒れるのも仕方がないね。この世界に今後キリストに当たる人物が生誕するのかは謎だけれども。……僕はキリスト教のロードやゴッドと言う単語が日本語の神と言う単語と対応しているとは思っていないので、そこら辺の気遣いで少しややこしいな。
ドロシー先輩に案内されて風の寮から校舎までの道を歩いて行くと、金属製のテーブルとベンチが置かれた小スペースに着いた。普段は馬車や石板を飛ばしての移動なので気付けなかったが、こんな場所もあるのか。いや、テーブルの下の草が周りの物と比べて何か変わった所が見受けられない、つまりソレはいつもテーブルの下に日光が当たっていた事を意味する。また金属製であるにも関わらず椅子や机に目立った汚れや錆が見当たらない、日頃から手入れされているか最近になって設置されたと言う事だ。魔術師の学園、生徒は腕前にもよるが椅子や机を生み出すことは容易い。元々開けた場所ではあったが、あの机や椅子はドロシー先輩が設置したと見て良いだろう。まあ、そこら辺は何をトチ狂ったか寮の談話室のインテリア全てを10年生に合わせた規格で製作しているのにここにあるのは一年生や三年生が使える机や椅子である所からも推測できるな。教室以外で見かける子供用の家具は基本的に生徒の自作だろう。
時に、烈日、光強かに、緑盧は地に滋く、樹間を渡る温風は夏至の近くを告げていた。できれば樹間も上手く変換したかったかな、緑盧なんて存在しない熟語まで作ったんだし。盧が黒い物と言う意味があるから緑盧で緑の深い草木ね。いおりと言う意味が一般的だけど、お茶碗や酒場みたいな意味も持っている。その経緯は知らないが、多分歴史が古すぎて意味が遷移しすぎた結果、てんで違う意味も持つ様になったんだろう。まあ無理に山月記の引用をする意味はなかったか。それと、君達は虎だの今回の件だので僕が山月記をいたく気に入ってるものだと思っているのだろうけれど、僕は自戒の意味で虎となった李徴を気にかけているだけであって、別に好きである訳ではないぞ。どちらかと言えば曹操の方が好きだな。『僕の言う事は正しい、僕の成す事も正しい。僕が天下に背こうとも天下が僕に背くことは許さん。』引用する機会がないだけで、機会があればすぐにそうしたいと思ってる。ま、厚遇してくれた人の家族を勘違いから全員殺めた挙句、現場を見せないと言う気遣いでその人も手に掛けて仕舞う様な場面は中々ないだろうし、あって欲しくないが。あれ、自分の言動は全て正しいって元ネタでは言ってないんだっけか、あまり覚えていないが……。
「みんなで食べるとおいしいね。」
唐突に話しかけられた。ああ、そうだね。ナプキンを広げて食べ始めてしばらく、食べている最中にバートリーさんが話しかけてきたので、僕は口に含んでいた物を飲み込み丁寧に相槌を返した。フランソワーズ君は黙々と食べているが。お昼は彼の正念場だ、本戦に上がれはしないだろうが、万一の可能性にかけるのはいい事だ。それに出場できなくともしようとして出来ないのとしようとせずに終わってしまうのでは評価は断然前の方がいい。
「ゲニー君も、カーネル君も、私も頑張るから頑張ってね。応援してる、対戦相手として当たったら全力で行こう!」
ドロシー先輩が爽やかに言った。全力ではいかないが、まあ相手を侮辱しすぎない範囲で頑張ろうと思いつつ、ええと返し、先程から黙々と昼食を腹にかっこんでいるフランソワーズ君にも同意を促した。彼は性根が腐っているとか歪んでいる訳ではないのだけれど素直じゃないので、フンと言って顔をそらした。ドロシー先輩も少し困り顔だ。
「ああ、そう言えばフランソワーズ君。君に渡すものが、昨日の奴だ。」
話を続けようと、僕はまた思い立った様に彼へ話しかけた。適切な話題が思いつかなかったので、昨日の冗談を思い出したので、それで話しかけた事にする。昨日僕は勝負の如何によっては何か褒美をやるとほざいていたから、それを実現してやろうと言う訳だ。要らないと言われてしまっていたが、まあ現物を見てもらってからでも悪くはないだろう。取り敢えず何がいいのかわからなかったので、僕は魔術を使い金属で十字架のネックレスを即興で作った。極まったキリスト教徒ではないので、あまり十字架に強い想いはない。そうとは言え十字架と言うと聖なる印象があるので、そこそこに強い魔術が込められる。取り敢えず、魔力を溜め込む性質を作っておいてあげて、そこに魔力を乱雑にぶち込んでおく。ま、よくある外付けバッテリーだ。呪文を刻む事で、所持者が極度の魔力欠乏にならない限り発動しない様にしておく。
「コレを持っておくといい。フランソワーズ君は魔力が少ないから、いざと言う時に魔力が足りなくなり易い。命の危機に陥った時に延命する程度の効果はあるよ。」
魔力を回復させるだけだから術式破壊系の呪いをかけられてたらどうしようもないけどねと注意をしておく。状況が怖いと突っ込まれるが、弱っちいんだから万が一の事故が起こった時の保険はあるに越した事がない、僕だってこう見えて実はめちゃくちゃ保険があるんだと教えておく。まあ実際に自分がどれくらいの攻撃まで耐えられるかとかを悟られたら危険だし、ジャラジャラとこんなに保険を持ってるんだと見せるべき物ではないのだが、服にも体にも魔術が込められていて僕が本気になると本来の魔力量の1.5倍は多く魔力を消費できた。できた、過去形だ。今は違うので保険を見せても別に問題はないのでチラッと見せてみる。肉体にかかった呪術を少し弄って発光するようにしてみせる。僕の体に蜘蛛の巣の様に張り巡らせた術式が浮かび上がり、ちょっとしたビックリ人間みたいになる。
「気持ち悪っ……なんだコレ、術の呪文が細かすぎて文字列が糸みたいになってんのか?」
フランソワーズ君が良いところに気がついた。そうだ、コレは体に呪文を刻み込んでいるのだ。よう分からん特殊なインキに魔力を込めて体に筆を使って書き込まれた物だ。当然、全身に書き込むのだからか僕ではない第三者が書き込まなければならない部分がある。実はクロノアデアが懇切丁寧に僕の成長に合わせて何度か書き足した物なのだ。で、魔力保持だけでなく魔力孔の開閉も補助をするなど、術者の腕に相応しい高性能な物になっている。しかも三次元的な術式なので複雑すぎて彼女の弟子である僕でも完全に理解できない代物だ、弟子であるならばこの刻印の意味に辿り着いてみろと言うある種の課題だね。自慢げにその事を話すと、筋金入りの魔術師だと3人から少し引かれる。君達だってそうなるさ……まあ、同意が得られるとは思わないので言わないでおくが。
それと、コレはみんなには秘密なのだけれど、さっき今は違うと言ったが今はホムラビを始めとする神格からもらった魔力が多すぎて、かつてとは事情が大きく異なり実際にどれほどの比率になってしまったのかは一回調べて見ないとわからないのだ。まあ、流石に1.2倍未満になるのは確定で1.1倍ですら怪しい。それ程までに神の力は大きい。しかし、保険があってもなくても変わらないレベルまで急に魔力が増えたのだ、通常なら保険を更新しなければならないのだけれど……今の魔力量だと流石に器に限界というものが見えてくるだろう。それは物によって保持できる魔力量が違うのだけれど、以前と同じく自分の保有する量の半分の魔力を貯めようとすると材料費にお金がとてもかかるし特殊インキで済むものではなく装備がゴテゴテしてくるので返って邪魔だと言う悲しい理由がある。
「凄いんだね、やっぱりゲニー君のメイドさんは。」
師匠が褒められて嬉しい、本当なら『でしょう。』と更に賞賛を引き出したいところだが照れ笑いをして置く程度に留めておく。まあとにかく、そう言って僕は保険を発光させるのをやめ、フランソワーズ君に十字架を押し付けた。あって困る物でもないし、試合を補助する物でもないので君のフェアプレー精神を妨げる物でもない。受け取らない理由はないはずだと自信を持って押し付けた。いや、純粋にプレゼントであって嫌がらせではないのだけれど……。




