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ちらうら  作者: 湊いさき21
本編
131/167

除霊

短めです、すみません(>x<)

 いやはや、驚き驚き。余程の強者共よ、まさか僕の魔術……いや、魔法が通じない事があろうとは。さてさて……どうしようかな? 僕は迫り来る亡霊を見つめながら、ボートの上で他人事の様に考えていた。


 事の始まりはあのデブ猫ニヤビさんと別れ、実際に沼地をボートで移動していた時のことだった。確かにレベルは上がり、楽々と進めることができた。しかし、問題は僕がある沼地に着いた時、なんと幽霊が出てきたんだ。幽霊は一種の魔術生物で、まあ妖精などが属する魔物の原種といっても良いだろう。つまり、魔術だけでできたとても脆い生物だ。物質的に不安定で他の何かに変換できるエネルギーが高いといっても良い。それ故、彼らは魔術師として極めて優秀だし、人が酸素の濃度に敏感な様に生命維持のために必要な魔力にすごく敏感だ。まあつまり、魔法使いであり通常攻撃に魔力をばら撒かねばならない僕はすぐ強い魔術師に囲まれた。向こうでは亡霊なんて出なかったのに……!


 実体が魔力塊だからナビさんが剣で切っても僕が炎で炙っても通じない。しかしまあ、魔力には聖属性と言うこれはこれは便利な気に食わない魔術ないし魔法を打ち消す属性がある。テンシさんの魔法がそうだ、あれは邪神側の魔法を選んで打ち消せる。もちろん、火の魔術に対して水の魔術を被せればそれは打ち消すことになるし、術式を壊したり魔術を崩壊させるには色々な手立てがあるけど、まあ聖属性は手っ取り早い力技だとでも思ってくれれば良いよ。


 で、実際に使ってみたけど流石はと言うべきか、効果自体はあった。だけど、僕自身あまり聖属性が得意じゃないのですぐに魔力が切れた。一応今はナビさんにボートを漕いでもらっている傍、MPを回復させるポーションとやらを浴びるように飲んで回復しているけど、この調子で持つかどうか。


「無能者tokage、飲み終わったら怠けてないで魔術で逃げるなり亡霊を撃退するなり何かを!」


 無能とは言ってくれるね、まあ現に役立たずなんだけど。そうだね、じゃあ僕も本気を出そう。いや、本領発揮と言ったほうが正しいかな。得意属性の魔術を使う。皆んなは忘れてるかもしれないけど、僕が得意なのはつい最近エルフの脱獄補助で見せたような使役魔術だ。14の属性で言えば聖属性を打ち消す魅了属性だ。聖の反対が魅了ってなんでだとかは前に語ったかな? 元々邪悪とか人聞きの悪い事を言われてたけど魅了とかの方が響きがいいとかなんとかって理由で変えたんだ。


「放蕩者tokage! お喋りはいいから早く!」


 おっと、いい加減怒られそうだ。真面目にやろうじゃないか、僕は腹に力を込めて魔力を練った。地球上のほとんどの生命がそうだ、人間ですらその意思っていうのは0と1が三次元的に組み上げられただけの者、コンピューターが発達し続ければ再現ができる。だから、なおさら、亡霊だって0と1でプログラミングされた魔力だ、使役することなんて訳がない……!


 より端的かつ効率的な命令が一番聞きやすく、僕は動くなと言う指示を出そうと思った。そうした指示を込めた波を発してみたのだが、まあ……うん。


「む、無能ー!」


 まあ、聞かないよね。残念ながらこの体では効率が悪すぎる。僕は聖属性のバリアを張りながらナビさんの体力が尽きない事を祈るばかりだった。




 ナビさんの脚に付着した泥水を丁寧に拭き取り、僕は恐る恐るとナビさんの顔色を伺った。申し開きはと聞かれ、特にありませんと答えた。ニヤビさんの世界で遊んでいた時のノリで、しかも自分の能力を過信していた結果ナビさんに多大なるご迷惑をおかけしたことを大変申し訳なく思っております……。許しを得て初めて僕はずぶ濡れになった体を拭いてもらった。


 場所はセーフルーム、お互いにあまり綺麗な格好ではない。犬小屋のように狭い……まあ、人間には狭いサイズの部屋に備えつけられているボロ切れで体を拭いたからだ。汚れた物で清めたってそりゃあ清めきれないってものさ。


「わかっているなら今度から私が勝手に備品を買ってきます。いいですね?」


 まあ、別に攻略にお金が必要って時以外には使わないからね。今みたいに魔力切れにならない限り魔法使いなら現実と同じようにはいかないけど全部自分でできるし。今回の件で如何にセーフルームが重要なのかはわかったよ。逃げ込む時に活躍するんだ、健康保険と一緒だね。活躍しない方がいいけどだからといって疎かにするのは愚か者のすることさ。


 さて……問題は攻略だ。聖属性の強化、レベルアップで足りるのだろうかと思っていたのだけれど、魅了属性も聖属性も魔法使いには扱えない属性だと言われてしまい、また聖水をばら撒くしか方法がなくなってしまった。まあジョブが魔法使いである僕が聖属性も魅了属性でも使えるってのはシステムによらない僕が今現在持っている能力によるものってことだ。現実で訓練すればレベルを上げずに対抗できるんだ、それも程度ってものがあるがすぐに実現可能だなんて最高じゃないか。


「違反者tokage、と本来は諌めるべきでしょうが、今回は看過します。貴方だけ本来の能力を制限するわけにも行きませんので。」


 それは……カモノハシにしてから言うには遅すぎるんじゃないかな? そんなこんなで、僕はゲームを終えた。




「クロノアデア、今日は聖属性に関して訓練する。効率のいい亡霊の退治方法とか、色々と考えておいてね。よろしく。」


 起きるなり出し抜けにいったものだから少し彼女を驚かせてしまった。まあとりあえずお告げがあったとでも答えておいて、適当に安心させておく。僕の奇行がまた始まったかと思うと彼女も気が気でないだろうからね。いや、亡霊の退治方法を早急に身につけろってお告げがあったというのもそれはそれで不味いか。別に亡霊が近々出る予定があるわけでもないと付け加えておく。


 さて朝だ、今日も変わらぬ朝が来た。やはり、口にするのは何度目だと自分でも思うが、ここ最近は不安定な日々が続いている。僕は荒れた海洋のような人生ではなく、グラスの中の水のような、穏やかでこじんまりとした人生が過ごしたいんだ。まあ神子という時点でそれは叶わないだろうが。とは言え、僕が進んで荒海に飲まれるような行為をする必要はない。手始めにと言ってはなんだけど、僕は愛する人と過ごせれば幸せなんだから、今このクロノアデアとポミエさんと一緒に過ごす一時を大切にしたいね。


 僕は口をゆすいぎながら彼女たちを横目に見て、今日も幸せを噛み締めた。どうかなされましたかとクロノアデア達が聞いてくるので、僕は水を吐いて口元を拭いてもらい、素直に思いの丈を述べた。たまには君達と丸一日のんびりして過ごしたいし、学校なんか休んでしまいとも思うほど君達と離れるのは云々って感じだ。もう一度語るにはあまりにも恥ずかしい事が口から出てしまったが、彼女達はまあ喜んではくれた、少なくとも悪いようには思わずにいてくれたようで、今日は学校を休みますかだなんて言われてしまった。


 まあ僕のような小学生くらいの子にお母さんがいなくて寂しいだなんて言われたら、僕だったらまず間違いなく今日は休んで明日頑張ろうかなんて言ってしまう。だがそれじゃあ困るんだ。さしたる理由もなく学校を休みたくはないし、多分一度休んでしまったらそれが癖になってしまう。たしかに彼女達は母親以上の価値があるが、それでは情けなさすぎる。例えそれが世間に知られようが知られなかろうが恥ってものさ。とは言え抗い難いものでもあるが、まあ……僕は若干遅刻しそうになりながらも校舎へと向かった。


 校舎に着くと、クラスの男子にまた休んでどうしたのかなんて質問された。僕は魔術で才能に恵まれた一方で肉体的には病弱なのさと適当に言い訳をして、それよりも昨日の授業はどうだったと話をそらした。昨日は明日にある、まあ昨日の明日だから今日にある先輩との合同訓練の為に色々と教官から特訓があったらしい。聞きたかった午前の授業に関してはあまりよく聞けなかった、そもそも体育と違って退屈な物だからあまり覚えていないとか。まあ、わからなくもないけどさ。


 でも、僕と同じ転生者のヤマオカさんはちゃんと覚えていて、ちゃんと授業内容も教えてくれた。昨日は特に魔術と関係のない平凡な物だったらしい。算数とか国語とかだ。まあ情操教育は魔術に不可欠だろうし、本職ほどとまではいかなくともちょっとした計算は貴族として活躍する以上はもらわないと困る。まあそれに、本気で大きな物を造ろうとすると意外と設計の為に数式が必要だったりする。でもそれは力学関係だし豊富な魔力があれば適当にハニカム構造の採用や魔術陣を仕込むだけで終わってしまうようなものなんだけど。……もしかしてこのせいか? こちらの文明が発達しないのって、いや、僕は……ううん、朝から考えるべき話ではないか。


「ねえ、昨日は本当に大丈夫だったの?」


 まあね、なんなら日常茶飯事の域さ。僕はヤマオカさんからの心配に適当におどけてみせた。彼女にも心配をかけてばかりなので平気じゃなくとも平気なように振舞わなければならない。僕はそれよりもと今日の午後の訓練とやらに何をしようかと言う話を振った。僕は基本的に弓で戦ってはいるけど、本気で戦う時は剣だし、一人で動くなら剣を持って戦う方がいいかもしれない。


「相変わらず自信家……いや、弓を取らないって言っているからちょっと真面目に取り組む気なの?」


 もちろん手は抜くよ、僕が本気で取り組むとなると一人で圧勝するからさ。僕達は笑った、ここど僕が調子乗った発言をすると言う冗談なんだけど、お互いにある程度は相手の事を分かってないと成立しない冗談な上に、今の僕は実際にそれができうるのであまり笑ってもいられない。冗談だよと言わずとも良い言葉を付け足して、僕は朝を過ごした。


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