謎の計画が進行中
ログインした僕は、眉を顰めた顔のナビさんに迎えられた。顰に習えるレベルの顔だが、流石に健康的な表情でもない人に色っぽいなあだのと呑気な考えも抱けまい。僕はどうしたのだろうと心配して話を聞いた。
「覚醒者tokage、困りますよ……。」
僕に問題があるらしい。曰く、チート行為が発覚しただとか。チートと言われてピンと来なかったので話を聞くに、外部ツールを利用したり運営に許されてない行為を勝手にやる行為らしい。いやしかし、外部ツールも何も僕は君達の機会に触れてないし……と言うか産業スパイさんはどうなるんだ?
「幾ら向こうの人間がアクセスしようがデータは弄れませんので。それよりも今回は貴方がデータが弄られ、ステータスが変わらずにレベルが上がってしまいした。」
それは……いや、待ってほしい。ナビさん、今の僕はまず何がチートとして作用したのか、そしてチートでどう言う効果が出たのか、それがわからないので一から十まで丁寧に教えてほしい。そう心で願うと詳しく教えてくれた、君達には僕がこの程度の説明が適当だろうと言う範囲で話すと、僕がクロノアデアとの訓練で時が見えたとほざいた瞬間があっただろう? アレが僕の神格の大々的な拡張された瞬間であるらしく、元々レベルアップはそういう神格の拡張をリソースとして利用してステータスやらを上げていたいたのに、向こうでレベルアップされるとステータスがあげられないし困るだとかなんだとか。だが……いや、ナビさんそれは無理筋と言うものでは?
そもそも僕は意図して神格の拡張をできるわけではないし、逆にそれを防ぐ事も出来ない。何より僕は形として秩序の神の陣営にいるのであるからして、邪神側がレベルアップで僕の神格を勝手に利用して勝手に神格のうちに邪神側が占める割合を増やされるのはマズイし、むしろ意図的にそれができるのであればドンドンやって秩序側で利用できるリソースを増やす方が自然じゃないか。
「それはそうですが……私は、貴方に死んでほしくは……。」
そう言うとナビさんは「いえ、なんでもありません。」と言って、今日の予定を聞いてきた。今日はストーリーを進めていこうとは思うものの、死んでほしくないだと? それはどう言う事だろう、いや、心当たりはあるな。僕は元々の僕から精神の核として取り出された存在で、邪神側にとって元々の僕は心臓を握られているようなものだ。邪神側が僕を生かしているのは僕が自分達に利益をもたらすからであり、僕が害をもたらす存在となったらすぐに殺してくるかもしれない。流石にそれはマズイか……。
「あの、私が言ったという事に関しては何かないのですか?」
ナビさんが言ったという事? へ、ああ。そう言うことね。いや勿論感謝してるし、君に死んでほしくないと思われているのは嬉しいよ。ごめんね、事がことだけにソレを考える余裕がなかった。まあでも、死なない程度に上げていくさ、向こうも僕を生かす利があるから生かしているんだ、ギリギリを見極めて少し余裕を持っておけばいきなり殺して来たりはしないんじゃないかな。
「そんな……いえ、本心からのようですが、何事も正直であれば良いと言うわけではありませんよ。」
お世辞や嘘がつけるとして、ソレは君に対して失礼じゃないかと思うところがあってつい……その点に関しては悪かった。ごめん。でも本当に嬉しいからね、思ってくれていてありがとう。もう良いですとナビさんは言ってそれよりもとストーリー攻略をしましょうとセーフルームのドアを開けた。セーフルームは一種のワープ装置であり、接続先の扉は任意で指定できる。ナビさんは接続先を僕が宴会から逃げたオソレヤマの扉ではなく、僕が最初に訪れた街、ナモナキ街へ繋げた。前に見た時より今日は人がやけに多いように見える。プレイヤーか? ナビさん曰く、僕を意識するプレイヤーが増えたからどうしてもルームを閉じきれないのだとか。
そんな事があるのかとコソコソと隠れる様にしていると、街を歩く如何にもなゲームプレイヤーから声をかけられた。曰く、握手して貰って良いですかだとか。別に構わないけど、コソコソと隠れるプレイヤーに話しかけるとはどう言う了見だろう。多分キメラ組が探してるとかそう言う話だろう。奴らが来るまで時間を稼ごうとしているのかも知れない。魔法使いなら野良パーティー組んで狩りに行きませんかなどと言われ、そう言う話はちょっとだの良いじゃないですかだのやってる内に僕よりも一回り大きい巨大な猫がのっしのっしと歩いてきた。
「君がトカゲ君だね?」
猫はすっごい渋い声で聞いてきた。ええ……マジ? 可愛い見た目のくせしてその声? いや、僕とて一般的な男の子の声だけどさ。猫さんは灰色の毛並みで手足が短い
【そうですけど……やっぱり、貴方達が網を張ってたんですね。】
念話で語りかけると、やはり無理に声帯を猫にぶち込んでいるから辛いのか向こうも念話で語りかけてきた。彼の渋い声が頭に響く。曰く僕にはどうも誤解があるらしい、別に向こうは僕のゲームを妨害する気は無いらしく、何か喧嘩別れのようになってしまっている状況が心苦しいだとか。喧嘩別れ……? ああ、そう言えば僕がなんか騙されて長々と拘束されたけど……。別に、喧嘩別れって事は。
『そうは言うが、トカゲ君は何も言わず消えてしまったそうじゃないか。ウラジーミルも心配してたよ、大丈夫だったのかい?』だとかなんだとか、それを言われると弱いが仕方がないじゃないか。僕は、事情は言えないけどあの時は立て込んでて挨拶する事を忘れてしまった。確かにソレは認めるけどだからと言ってまた僕を拘束するのは違くない? しかし僕の被害妄想とは違いうだうだと話すつもりは相手にはなかったらしく、適当に話した後にすぐに別れてくれた。こちらとしても必要以上に君へ接触するつもりはないしオンラインプレイを避ける必要はないよだとかなんだとか。いや、確かに避けてはいるけど、ソレは別に人付き合いが苦手だからで合って……。
【そうだ、お詫びと言う訳ではないが、何処か行きたいフィールドがあるなら連れて行こうか。赤の世界が気にいるなら黒き地下楼とかも気にいると思うんだが……】
黒き地下桜? 地下牢と掛けているかな、いや……そうだ。別に僕は赤の世界だから行きたかったんであって地下楼とやらは行かなくてもいい。しかし、南ドワーフに行ってみたい。水を出す柄杓とやらを手に入れる予定なんだ。盗んだホートを使って向かうのも良いが、セーフルームで移動できるならそうしたい、躍起になる事はないが無駄な戦闘を避けてレベルを上げないようにしたい。そう伝えると、それならどっちがホストになるかは任せるが一緒にパーティーを組んで遊ばないかとも言われた。ホスト? どう言う話なんだろうかと思えばナビさんから説明が入った。フレンド間で一時的にパーティーを組むとホストとして指定したメンバーの世界へ移動することができるらしい。
普段はなるべく世界が似た二つの世界のプレイヤーをその中間的世界に移動させて二人が別れた後に、その世界での行動を自分の世界へ同期させているらしいが、パーティー制では相手の世界での活動が全く自分の世界へ影響を及ぼさないと言うことだ。例えとして山一つ焼いたとしよう、パーティーを組んでいなかったら自分の世界でも山が焼かれたままになる。しかしパーティーを組んでいたら相手の世界で山が焼かれただけでパーティーを解散したら山は自分の世界のまま、綺麗な状態のままになっている。大体そんな感じだ。クエストが進まないと言う欠点はあるが、それを利用して色々なことが出来るらしい。世界に一つしかないはずの物を何個も所有したりとか。
いや、しかし初心者である僕が誰かと組んでも迷惑になるしそこは辞退させてもらうと言う切り口で断ろうとすると、転職したばかりでジョブレベルは同じだろうから心配しなくて良いと言われた。ジョブレベルってなんだよクソ聞いてないぞ……。一度断る口実を作ろうとした以上ほいほいと理由をつけるわけにはいかない、僕はわかりましたと言って申し出を受け入れる事となった。そうと決まればとネコさんの自己紹介が始まる。ネコさんはニヤビと言う名前で、アサシンと言うジョブをやっているそうだ。暗殺者とは物騒な……。それで、いつの間にか一緒に来ることになっていたスクショやらなんやらで僕の足止めをしていた人、彼はツキノさんで錬金術師と言う回復役だそうだ。ポーションなどを原材料より作り出すことができるそうな。近接攻撃担当と回復担当、それに僕が魔法で遠距離攻撃か……随分とめんどくさい。魔法は人を巻き込むから嫌いなんだよなあ。
実際、楽しくはなかった。やはり自分で一人遊ぶのが性に合ってるのだろうか。いや、全く複数人で遊ぶのはめんどくさい。そもそも明確な目的もなく、ただ適当にセーフルームから目的の沼まで移動するだけだった。確かに、道を飛ばしたからか敵キャラクターが今までよりも強く、ナビさんとだけなら苦労したろうが、それもゆっくりと進行していれば回避できた事だ。あまり嬉しくはない。強いて言えば、レベルが低くても済んだと言うことにはなるのだろうが……今後彼らと道を共にする気もないし、後の僕が苦労するだけじゃないか。モノカルチャー経済の様に何かに依存しすぎる行為は危険なんだぞ?
そう言う不満を抱きながら、僕達は二人と沼でフラフラと散策をしていた。沼は泥濘みがあまりにも危険で溺れる可能性さえあるので移動はボートになった。敵はゾンビではなく、野生の動物だ。動物と言っても、僕たちが知っている様な物ではなく、ホートの様なキメラ動物だけど。大体はコビトカバの上半身とワニの下半身をくっつけた様な動物が襲ってくるけど、偶に蛙と猿が合体した様な動物も来る。その殆どがニヤビさんの尻尾や爪で撃退されているが……。ニヤビさんが暗殺者というのは、なるほど本当らしい。爪やら尻尾やら牙やら、至る所に武器が隠されている。毒でも塗られているのだろうか、ボートが通った後にプカリと死体が浮かんではしばらくして光るドロップアイテムを残して消えていく。僕がニヤビさんに関心していると、ツキノさんが僕に質問を投げかけた
「そう言えばトカゲはルート選択はどんな感じになっているの? 今のレベルでこの場所ってことは多分無頼だろうけど、ナビがいるから古代文明ルートでもあるの?」
ルート? 僕がそう聞き返すとニヤビさんが説明をしてきた。このゲームはルートと呼ばれるストーリーが大きく分けて8つの体系に変わるらしい。超古代文明はナビさんが作られた当初の文明を復活させて光線銃とかの未来の武器で戦うルートで、無頼ルートと言うのはどの組織にも属さずに自力でアイテムを探すルートだとか。他にどんなルートがあるのかと聞くと、残りの6つを上げられたが、特にきになったのは 気になったのは鬼ルートと帝国ルートだ。鬼ルートでは悪行に悪行を重ねて虐殺をしていくルートらしいけど、帝国ルートは帝国にいる貴族と恋愛をするルートだとか。
この2つは実に興味深い。このゲームでは様々な行動がポイント化されるらしく、例えばいい事をすると善カルマ値が上がり、悪い事をすると悪カルマ値が上がるなどだ。で、鬼ルートに入るには悪カルマ値をたくさん稼がないといけないのだけど、帝国ルートに入るだけで悪カルマがルートに入る為に必要な値よりも5倍ほど多く稼げるらしい。帝国に関しては聞いた限りでは僕の住む帝国と同じ存在だ、名前もアエテルヌム帝国であり全く同じ。しかしこれは一体どう言う事だ? 帝国に肩入れをするだけで悪業を犯した事になる。邪神どもが帝国を嫌っているか帝国がとんでもない悪を犯しているか、だろうか。全くの謎だし、いっそ邪神に直接聞いた方が早いだろう。
しかし、帝国自体が嫌われるとなると、ナチュラル帝国勢力である僕は自然と鬼ルートに入ってしまうのでは? でも、ゲーム上別に鬼ルートで進行してるわけではないそうだから、多分ゲーム内で帝国勢力につく事が悪行に繋がるのだろう、て事はこのゲームのストーリーは帝国が超重要ポイントに? いや、今の段階では特にどうとでも言えないか……。
【さて、トカゲ君はそろそろレベルが上がったんじゃないかね? 一人でここの敵も倒せる程度までいったかい?】
そう言われると、確かに魔法が扱いやすくなった気もする。周りを照らしたり敵が何処にいるかを調べる事しかせず特に戦ってなかったが、パーティーを組んでいる以上はしっかりと経験値が貯まりレベルが上がるのだそうだ。これで大体の地形も頭に入ったし、ゲーム進行も滞りなく行えるだろう。そこで、ツキノさんから質問が来た。また穴とやらを開けて来れないかだそうだ……まあ確かに今回は僕がお世話になったけど……。と言うかジョブレベル云々の話はどうなったんだ? そこまで聞くと、僕の様な魔法使いが稀少なんだとか。スキルに頼らないタイプの魔法使いは酷く効率がわるいが、しかし僕の場合は効率よく自由のある魔法使えるので良いとかなんだとか。人材に関してはまあ僕が孔を開けたからあと暫くすれば段々と育って来るらしいが、とにかく今は孔を開いた人が欲しいらしい。
まあ、今回の接待は確かにそれでも良いけど……しかし、そんなゲームで接待なんかやってて楽しいのか? まあ大事の前の小事、悪魔は細部に宿るとも言う、僕ごときの接待をしてでも何かやりたい事があるとかが妥当な所だろうか。
しかし何だかなあ……。僕はナビさんに毛並みを撫でなれながら、ボートに揺られて言った。




