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ちらうら  作者: 湊いさき21
本編
128/167

異世界間ピンポン

 壁画でいっぱいの部屋で一人、魔力を垂れ流しながら横になっている。オーバーフローによって出てきたヘドロの中に泥の様に眠ろうとしていた。そして半ば気絶のように僕は眠り行った。




 まあ、何度も言うけど毒っていうのは量だ。少量なら薬になる物質もあれば少量では毒になる物質もある。例えばトリカブトの毒はフグ毒の中和剤になり、推理小説ではそれによって遅効性の毒によるアリバイ作りにも扱われる。まあ推理小説が現実からネタを輸入したのかもしれないけど……とかく、それはお互いの作用が体のバランスを真反対の方向へ崩す物で、右に45度傾いた物を左に45度傾ける事によりバランスを保つ様なものだ。中和を目指すなら少なすぎてもフグ毒に負けるし、多すぎてもトリカブト毒が残ってしまい結局服用者は死ぬ。pHとおんなじで、少量でも大きく変わってしまうのが難点だが……まあ、毒に関しての加護だ。腐っても加護、ちゃんと適応すればしっかりとした効果を発揮する。僕は毒で眠りにつく事により、ゲームにログインした。


 全く、あの邪神は何か勘違いしてるんじゃないだろうか。僕は今やプレイヤー達の手引きにより赤の世界へ訪れる事ができるんだからな。適当な嫌がらせはすぐに対処できるんだぞ。僕はナビさんに言って、すぐに赤の世界へ移動した。赤の世界に入るとやはり邪神どもの影響か少し虫が活発になり、粘菌やら地衣類やらコケ類やらが生え始めていた。ふざけるなよ、ここは僕の世界なんだから僕の思い通りになっていてくれないと困る。一刻も早く元の赤い世界にしなければ。


「おや……人の心は手が加えられないから美しいと言うのに、無粋な者がいる様で。」


 その無粋な者って言うのは君たち邪神なんだけどね? ナビさんがため息混じりに言うので、僕は心が読まれていると知っていながらもそう思わずにはいられなかった。まあ、ナビさんが直接手を下したわけでもないんだし、ぶっちゃけ僕の失敗が元で邪神達から加護が与えられたって言う自業自得の話なんだけどね。秩序の神の方向へ傾ければ良いんだけどさ。


 素早く僕はボクと合流して、ホムラビとテンシさんに早く神の力を強めるように頼んだ。この世界じゃあ僕は僕の神格しか使えないので、どうも彼女らを経由しなければならないのがめんどくさい。幸いな事に、テンシさんが存在を拡張したとかなんだとか、すぐに対応する事ができた。一先ずはこれで安心だが……とは言え、こんなのは対処療法であって根本的解決にはならない。毒風の加護を制御できなければ意味がないのだ。


 どうやって加護の悪影響を解除しようかとホムラビは少し考え込んで、難しいと呟いた。訳を聞くに、毒風の加護を授けた神格がこの赤の世界に居ない事が原因らしい。普通は力を与えるなら適当な分霊を、例えばワタツホムラビメにとってのホムラビだったり僕の家にとってのアカグモとコクダだったり、あるいはテンシさんやアンナさんみたいに本体を置かなければならないんだとか。


 だが、僕達がどんなに探ってもこの世界にいる神格は9つしかなかった。僕が使える7つの魔法を与えた神格と、僕達とナビさん合わせて9人だ。ナビさんに毒風の加護をついているわけでは無いので、どうも邪神固有の技術を使った線が濃厚だ。元々、あの世界ではmpとか言う魔力を勝手に消費して勝手に魔法を発動させるスキルなんて物がある。スキル製の魔法はオートマチックと言うか自由が効かないので多分外付けの回路か何かがキャラクターに積まれているのだろう。その技術のスピンオフだろうね、まあ……超直感で考えた物だから、若干風邪で頭が働いているか怪しい状態で思いついたこの意見がどれほど近いのかは、いやどれほど遠いのかは僕に知れることではない。


 しかし毒風の加護ねえ。加護が今回牙を剥いたのは僕が毒風の加護に対するキャパシティがギリギリだったからのような気がしなくもない。無理に積んだ加護が勝手に発動して自分にだけ影響が出た、と言うところだろうか。まあクロノアデア達や学生という子供が近くにいる状況だからこんな程度で済んで良かったと思うべきか……そもそも邪神側の目的だよなあ。


 本当に享楽だけでやっているんだったらお手上げだけど、仮にも言語と言う神聖かつ高貴な活動をしてみせる物だぞ? そんな事はないと信じたい。で、向こうの目的が不明瞭なので今の現状を整理をするとだ。


 1、邪神の一柱により呪いをかけられ、対応を常にとってなければ体が弱って死ぬ。2、殺す事が目的ならば僕に真の姿を見せる事ですぐに達成されるためその可能性はない。3、帝都に僕を切り口に深刻な疫病を蔓延させるつもりなら魔術の使える僕よりも奴隷市民など適当な人がいるため多分違う。4、邪神呪いにより僕はテンシさんとホムラビの力を使い続けてなければならないが、テンシさんはともかくホムラビがいることにより本体ワタツホムラビメにパスがつながっているため秩序の神の勢力を弱める事は目的ではない。5……ううん、ダメだなあ。


 頭で整理しやすいように番号をつけてまで思考を進めているけど、直感はピクリとも反応しないし、本当に目的が見えてこない。意味がないんだよ、今僕に対してちょっかいを出す事の……僕だからか? 僕は生贄で、どんなメカニズムかは知らないけどいる事で秩序の神への支援となるらしい。それは向こうにとっても例外でなく混沌側へ近づける事が目的か? いや、でもまだ人魔大戦は比較的休戦期のはず、魔族側も人族側もそんな戦争に躍起になってるわけでもないし、そんな急に戦争を吹っかけるようなことあるか?


 そうこうして、あーでもないこーでもないと僕達とホムラビの三人で話していると、ナビさんが話がついたのでログアウトをしたらどうだと提案してきた。直接話せばわかる物もあるだろうとかなんだとか。邪神側の言い訳は『普段僕が受け入れよう受け入れようと振舞っているのでキャパシティを見誤った。とは言え与えた加護の特質上こちらへ加護を返上するのは無理なので、そちらで対処してほしい。お詫びとして聖石を送ったので我慢してくれ。』……だそうだ。聖石って言うのは綺麗な石で、課金アイテムらしい。正確にはゲーム内で使える疑似通貨らしく、傭兵を雇ったりできるらしい。詫び石と言うやつだね、聞いた事もあるようなないような。ガチャみたいな物もあるのかしらず、まあいいや。邪神から与えられた物なんてどうせ碌なことになんないし。


「それは私の事を指しているのですか? 無礼者tokage。」


 イテ、ナビさんから睨まれながら抓られた。そんな訳がないだろう……ああいや、ナビさんも邪神側から派遣されたAIだからそうなるのか。物……そうか物か、存在的に与えられた物って言う分類になるのか。クロノアデア達も、ナビさんも、ホムラビ達の力も全て与えられた物だ。僕が自分で得たものといえば観察する目とお喋りで飛躍しがちな思考、それも超直感と言う一つの物になる。それも前世の遺産であって言わば神から与えられた様な力、今世では何も得てないぞ……。


「前世の遺産も恵まれた地位があったからですよ。」


 機嫌を損ねたらしい、ナビさんから突っ込まれる。ボクはそう言われると弱いんだけどなあと言って僕を保護しに回った。確かに抓られはしたけど保護されるほどの害はないんだが……まあ良いか。さて、何はともあれ理由はハッキリしたんだ、そろそろ帰るとしよう。その自白が信用できるものかは定かではないが、対処自体はこれで焦った秩序の神、その手先のホムラビ達がなんとかしてくれるだろう。僕はそろそろログアウトするとしよう、じゃあまたね、ボク。


「僕もまたね、って言っても夜にすぐに合うんだろうけど。」


 まあどうやっても毎晩のログインは避けられないからね。じゃあナビさん、帰ろうか。ああいや、意図してなかったとは言え不快にしたからね、悪かったよナビさん。個人と認識してて、無神経だったね。


「私はAIですので、気にしてませんよ。」


 そう言って涼しい顔をしてはいるが、AIだから顔の操作くらいはできるだろう。まあ本人が本当に気にしていなかった場合においてこの思考こそ本人の癪に触るかもしれないので、思考停止するしかないのだろうか……。そう考えながら、僕はいつも通りログアウトをした。いつもの邪神どもとの謁見はアイツらがまだご機嫌で、こちらとしては少し不快だったと言っておこう。




 頭が痛い。値段が張る為サンプルデータが少ないけど後遺症もないと聞くキセノンガス的な物をイメージしたけど、ちょっと気持ち悪うっぷ。浄化の力を強めると、すぐに不快感が消えたのでやはりエセキセノンだったな……。まあ例えキセノンガスを真似できてなかったとしても魔法製である事はすぐに搔き消せるという利点だ、いい事じゃないか。


 ぬたりとした泥から起き上がると、頭から蜘蛛が落ちてきた。あ、糞垂れやがったなコイツ汚ったない……アンナさんとマシエッテさんの力を使い体を洗い流すが、スカートの裾は泥に塗れていてそれどころか僕の玉肌に張り付いて少し不快だ。いっそのことと思って僕は美化の魔術を自分の服にかけ、泥が付く前の服へと戻した。最初からこうすれば良かったな。まあいい、今日はたまたまお気に入りの服じゃなかったからぶっちゃけ汚れても構わなかったと思ってたんだ。魔力が無駄になったという面では確かに損だがそう大した問題ではない。この服に思い出がないわけではないが……館のみんな元気にしてるかな。


 僕の服は彼女らの服を縫い直したお古だ。彼女らの事が偲ばれる。今生の別れという訳でもないのだけど、距離が距離だけにね。メリーさんとか、少しドジだし今日も何かしでかしてるかも。ここは実質的なクラス分けである寮分けをしているから、多分年度終わりくらいには長期休暇だってあってくれるかもしれない。まあ暇を見て彼女らとは会いたいな、僕に残された家族のようなものだし。ま、前世の記憶を失ったのは僕なんだけど。いや、そうではない、いや、ちがう……なにか、おかしい……。


 頭を押さえ踞っていると、部屋の外からクロノアデアが入ってきた。今は泥で少し体が冷えているけど、火に当たれば寒気は消える。元どおりの健康体になったのだが……少し、体が発光してるな。この異常にクロノアデアは慌てて僕の周りでワタワタとするが、彼女の綺麗な洋服が汚れてしまったので魔術をかけ、取り敢えず一緒に部屋から出る。


 部屋から出ると、準教皇が待っていた。マクニヌシ族だったか、東洋人みたいな顔立ちをしている。準教皇は僕を見て目を見開き、固まった。まあ発光する子供だからな、驚くのも無理はない。どうやって光っとるねんっつー。これは多分元々キャパが限界な時に更にテンシさんの力が強まった為にテンシさんの力が暴走しているのだろうけど……急に準教皇が恭しく頭を垂れてきた。きゅ、急に跪いてどうしたんだ?


「神子様、貴方の後光は我らが使える主の聖光。主に使える身故に主に愛された者を敬うのです。」


 え、あ、あー……そう。曰く、準教皇など一部の高位の神官も似たような性質を持つ光の魔法、彼らの言い方では奇跡を使えるようだが、全身からその光を出せるのは教皇や神に選ばれし勇者の他いないとかなんとか。神子もその教会にとって特別な意味を持つ区分に入り、同等の敬意を持って接しなければならないそうだ。じゃあ今までどうだってんだよと思いはするものの、まあ聖光とやらが発しない限りは自分たちが選んだ教皇であろうと勇者であろうと制度上において一般信者と変わらないらしく、まして公爵家の次男または長女という他に使えている神がいる子はお客様でしかないとかなんとか。色々と問題がある説明だが……まあ今は突っ込むまい。


 話は戻ってそういえば、テンシさんって確か秩序の神から僕の保護の為に『新しく作られた神』なんだっけ、彼女の力が発光という形で暴走するまで僕に捧げられてるから、僕が秩序の神から愛されていると判断したと言うことになるのかな。てことは先代の巫女も同じくテンシさん的な神格から保護の為にキャパを超えた力を注がれてたという事にもなる。……いやしかし神聖な光がその身に不相応な力を持っていることの証明とは皮肉な事だな、彼らはその事を理解しているのか? でも、信仰って言うのは絶大だからなあ。藪を突いて蛇を出す必要はない、黙っておいた方が吉か。


「準教皇、会話に難が出るので立ち上がってください。話がしたいならお部屋で椅子に座りながら、お互いそれが良いでしょう。」


 敬われる立場になってしまったので取り敢えず尊大に振舞っておこう。取り敢えず話がしたかった、と言うより相手側がしてほしいと思ってそうなのに僕が急に発光なんかしちゃったせいで疲れたから帰りたいとか我儘が通りかねない状態になった上、クロノアデアの過保護っぷりならそう言うかもしれないのでそうせざるを得なかった。


 さあ、部屋への移動する間に話の内容を考えねば。多分向こう側が聞きたい事はどうして急にこちらへ来る事になり、部屋を借りたのか。どうして急に光るようになったのか。事が急に進みすぎて恐らくまだこの2つしかないだろう。こちら側としては光って神子として認められた以上何かあるのか、くらいだけど……まあ僕も少し混乱している。他に聞くべきこともあろうから、今日はこの神殿で一日を潰す気でじっくり話しこもうじゃないか。

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