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ちらうら  作者: 湊いさき21
本編
123/167

武力による仮初めのカリスマ

 

 校長との訓練を終え指定された生徒へ次は貴方の番だと伝えて、一年生がいる校庭へと戻ると、フランソワーズ君含め幾人かの男子とヤマオカさん達が僕を待っていた。フランソワーズくんにヤマオカさんとクラリスさんはまあ残れって言ってるから分かるけれど、男の子達はどうしたんだ?


 僕はこっちこっちと手を振る男の子達に応えて少し強化を強め小走りで近寄ると、馴れ馴れしくも男子その1が肩に手を回して来た。ええっと、確かこの子は、ロータコメート君だっけ、長いから君達に言うのはタコ君で良いか。タコ君は弓と槍を持って、訓練に参加させてほしい旨を伝えて来た。……まあ、虫のいい話だとは思うが、僕は快諾するような笑みを浮かべて許可を出した。お前、お前らが笑ったフランソワーズ君の為の訓練に良くもまあおめおめと参加させてくれなんて言えるな、どんな恥知らずだって言うか、まあ当人のプライドと言うか価値が下がるだけだから良いけれど、少し自分の行いを考えたほうがいいんじゃないか?


 いやしかし、僕を含めず七人か。七人も監督するのは少し難しいぞ。いやまあ、昨日一昨日とかは監督もできなかったけれど、彼らに宿題出してこれやっといてねなんて言うとおそらく反感を買う。なんで俺たちをぞんざいに扱うとかなんとか、特にそう言うわけでもないのに。いやしかし面倒だな、ここはいっそもう、今日なんとなく学んだ一対多の戦い方で全員の面倒を見るか? いや、別にフランソワーズ君達に帝国式の戦い方を学んでほしいわけではないし……ああ、そうだな、七人か。


 なんだかんだ言って、学校教育っていうのは完成形に近い教育だ。少なくとも開始当初よりも現代の方が確実に効率化されてるだろうし、今と比べて未来もきっとそうなのだろう。なので、こんな未開の地ならば多分日本の教育方針を顰に倣えばきっと上手く行ってくれるだろう、なんて言ったって僕は自分でも気持ち悪く思うほどにかわいいからな。美少女なら顰に倣ったってかわいい。そう思いながら僕は編まれた髪を解き、ポニーテールをちょこっと弄ったお団子へと変えた。魔術を使っているのでだいぶ手っ取り早くすむが、こうい時に本当に魔術への有難さと言うか感謝が一番高まるのはどうなんだろう。面倒くさい日常の動作が簡略化されることがまあ確かに一番心に来るのかもしれないけれど……うむ。


 僕は適当な2人組を作り、それで組手をするように言った。定期的にパートナー交換をすればいいだろう。そうすれば沢山の相手と戦うことができるし、一人で戦う術を学ぶことができる。完璧だね、僕は上機嫌になりながら作り出した剣を手遊びに振り回した。ヒュンヒュンと気持ちのいい音だ、僕が作ったんだから当然だけれども僕にあった形と大きさをしている。


 取り敢えず僕の最初の相手はバートリーさんになった。彼女は……相手をするのがある意味難しい。彼女が男子なら気兼ねなくはっ倒すだけだけれど、女子相手にするわけにもいくまい。そうだな、彼女はとっとと魔術を打つことに慣れてもらわなければならないから、そう言う形式で行くか。


「じゃあ取り敢えずバートリーさん、風の魔術を打ってくれる? 手袋はしたままでいいから。」


 そう言いながら僕は剣に魔力を通し、呪い返しの呪いをかけた。呪い返しの呪いはいくつか形式があるが、今回の物は呪いを分析し解除、魔力片を辿り相手に同種の呪いをかけると言う形式だ。正直術式が複雑な上に、予め指定した形式の呪いしか返せないので限定的な物で普通は全く役に立たない。それはまあアレだよ、インフルエンザA型専用の薬みたいなものだね。ビタミン錠剤みたいに安定した働きはしないし誤った使い方では大事に至る事もあるが、A型インフルには適応できるみたいな。今回のインフルAに値する物はバートリーさんの魔力球、魔力片を辿ると言う術式を少し弄る事で球をテニスみたいに打ち返すことができるんだ。まあラケットが石の刀でボールがサッカーボールあたりという違いはあるが。


 僕が剣を構えると、バートリーさんは戸惑いながら魔術を打ってきた。まだ杖で打つことは慣れてないらしく、手袋がオレンジ色に発行する。あの手袋は僕が術式を打ち込んだ物で、装着者の手を装着者の魔力を無理やり奪ってでも守る魔術を発動させる。防御魔術の最大出力は僕、つまり公爵家の子供の50%くらいなので結構高性能だが、コスパで言えば結構悪い。アレが発動するという事は彼女はまだ杖での魔術行使ができないらしい、それはどうもと言うか……まあいい。僕はこちらへ飛んできたボールを打ち返し、バートリーさんの足下へ飛ばした。特にどこかを狙ったわけじゃないが、ナイスコントロールだ。でも今度からはちゃんとバートリーさんにぶつからない様にしよう、腐っても侯爵令嬢、魔術が強く結構危ない。


「こっちの事は心配しなくても大丈夫だから、じゃんじゃん打ってきて。」


 僕がそう伝えると、バートリーさんはまた打ってきたが何というか、やっぱり育ちがいいと言うのか、一発一発ずつ打つだけで、二発同時に打って見たりとか、あまり積極的に魔術を使おうとはしない。まあ、彼女の場合は強くなることが良いのか悪いのか微妙な立場だからね。一度彼女の杖を手に取らせて貰ったけれどなんの変哲も無い一般的な補助道具だった。ただの家ならばそれでも良いのかもしれないけれど、彼女が突然変異というわけでもないのだし、彼女には彼女の家にあった杖が渡されるはずだ。親から魔術で傷つくことを望まれているのかどうか、彼女の家の意図は不明だが、彼女がまともに成長する事を望まれている事は考え難い。政治的に女性が強いとまずいのか、それとも何か家庭の事情で彼女が冷遇されているのか、そこはわからないが……まあ、自衛の手段くらいは持っていても問題はないだろう。緩やかに、密かに力をつけて貰えば良いのだ。


 それから数分、粗方の組み、と言っても僕達も含め四組しかないのだが、全ての決着がついた様なのでパートナーを交代させた。次の人はヌメリマスだかメルリヌスだかの家の子供で、フランソワーズ君の自己紹介を笑わないでいてくれた子供だ、例の僕に突っかかってきた伯爵の友達でもある。ああいう子供はコウモリとか言われて嫌われそうだが、流石の容姿とでも言うか、そこまで悪い評価を聞かない。まあ入学して一年も経たずして悪評を聞くというのは流石に人間性が悪過ぎるという事なのかもしれないが。


 彼は子爵の子供、つまり伯爵の一個下の貴族子供で、魔力量としては下の中から上の子供だ。確か授業中の組手では大きく歪んだ刃を持った剣と小型の盾で戦って、魔術はあまり使ってこなかったような気もするが……。歪んだ剣の刃は片手斧の縁取りをした様になっていて、『?』クエスチョンマークにも似た形の両刃の剣だ。その形で『?』で言う左側に振る事により敵の盾を迂回して突きをくりだしたり、右側にある僅かな返しを敵の盾に引っ掛けて盾を奪ったりするらしい。僕は剣一本だから良くわからなかったが。




 まあ彼を二、三打ちのめした後、今日はもしかしてこないかもと淡い希望を抱いていたクラブの使いに見つかってしまった。連日のクラブ活動なんて聞いてないぞ、入会した時と話が違う。今日来たのは牛族の女性だ、あの僕を兄の元へ連行した時にいた血の薄いお姉さん。だが、僕の直感が囁いた。この人なら説得すればいけるんじゃないか、優しそうだし懐柔とか余裕そうだし、絶対いけるいける。悪い僕の囁きにのせられた僕は少しメルリヌスくんの相手をやめ、いかにもな女の子を装って近ずいた。いや、何というか、交渉は女子の方がやりやすくて……。


 牛族は確かその贅力から帝国開墾に大きく貢献した種族で、そこそこの地位を築いていた種族ではあるものの、まあ王国とか言うヒューマン至上主義の旧政の負の遺産というか、若干の冷遇を受けつつも栄える種族だった気がする。大体ローブからして子爵か伯爵の子供だろう、て事はまあ、公爵からバックアップのある僕と殆ど同格あたりだ。多分少し強請ったらもう少しだけは訓練を続けさせてくれるだろう。結局は連れていかれるだろうが、今のところはそれでいい。何回も何回もおねだりしてたら相手も折れるだろう。同情や妥協は制度の腐敗を起こしてくれる。人類の有する中で最も素晴らしいツールの1つと今の利用者としての僕はそう評価するね。


「……わかった。シオンにもう少しだけ待ってって伝えてくる。」


 シオン? 察するに例の女子、僕を連行した先輩なんだろうけれど、シオンっていう名前なんだ。シオンって言うと英語ではZionと書きシオニズム運動に代表される土地の名前で、一般に男性名だった気がするけれど……キク科の美しい花の日本名に紫苑という物もあり、日本人にとっては女性名だったりする。どうなんだろう、僕の知識があやふやだっただけで、女性名にシオンってあるのかな? あれ、つーかコーネリアさんじゃなかったけか彼女は、兄にそう呼ばれていた記憶はあるが……別人? いや、そうだな、今の僕の名前で言うアロガン呼びとゲニーマハト呼びみたいなものかな。最初の名前は目上の人か家族以外は呼べない名前で、真ん中の名前は誰でも呼べる名前だ。多分あの先輩はコーネリア・シオンなんちゃらとか言う名前なんだろう。


 まあいい、こうなったら時間は限られている。課題決定の時間だ、今日の宿題は各自強化の魔術の練習と行こうか。強化の魔術は属性を練りこむことができる。例えばこんなようにと僕は強化の魔術の中の、ホムラビの魔力と僕の魔力を強めて体を炎の包んだ。僕の強化とは少し方式は違うが、服に強化の魔術か不燃の呪いをかければ同じことが可能だ、つまり炎に包まれながら衣類もなにもその影響を受けないと言う。まあ火は見た目が派手なだけだから非魔術師以外には何ら効果がないが、自身が危なくない様に強化の魔術を怠らないと言う癖はつく。まあ火の魔力で体を強化しつつ、火で怪我をしない様に普通の魔力で体を強化する。これで負荷と言うか魔力の消費は何倍かに膨れ上がってくれるので、訓練にはもってこいだ。孔も整えられるし一石二鳥という訳さ。


「強化の魔術は移動、耐久、白兵、全てにおいて重要だから皆も頑張ってやってみて。」


 僕が適当に説明をして宿題を命じると、ヌメリマスくんが引き気味でお前って……と言い淀んだ。ああ? なんだってんだ? お前も女子なのかって聞く気か? 俺は違えって言い張ってんだろうが終いにゃ見せるぞブツを、あ? まあ第二次性徴迎えたらはっきり分かることだろうが、お前マジ……いやいい。僕は冷静を装って君も僕を女子だって言う気かいと、辟易したアンニュイさと確かな反骨精神を滲ませつつ尋ねた。まあ別に今更こんな奴に言われようが気にする必要はないんだけど。


 気を取り直して僕はバートリーさんに声をかけ、貴女は普通に魔術を打つ訓練をしなさいと行っておく。今のまま強化を使うと多分体がズタボロになる可能性が高いし、もしするんだったらバーディアさんと一緒にやる事と伝えておく。バーディアさんは魔力量がそこそこ多い方だ、医学の知識、と言うか衛生の知識はあるから応急処置くらいできるだろう。まあ一年で理転からの奇跡の医大志望になったのかもしれないけれど。……あれ、彼女って成績良かったんだっけ、そこですらあやふやに……いやまあ、親の顔も忘れて何言ってんだという話だけど。




 僕がとぼとぼとクラブへ参じようと歩いていると、曲がり角でさっきであった先輩と会った。近くには、まあまあ見慣れた水色の髪の女の子がいる。ドロシー先輩。僕の頭の中に少し不快な気持ちが巡った。ドロシー先輩に迷惑をかけたばかりの癖に、お前らはまた……! 制心術が働き、一気に落ち着いた。こういう一気に沸騰するのには強いんだけどな、どうも徐々にボルテージが上がるのは判定が難しいのか、あまり反応しない。常時発動型にしたほうがいいのかもしれないけど、それはそれで問題がありそうな気がするし、うーん。まあいい、僕はドロシー先輩へ挨拶をした。


「久しぶり、と言うと少しおかしいですけど、まあお久しぶりです。」


 ドロシー先輩は挨拶を仕返してきた、まあ普通の反応だ。特にストレスはかかっていない様に思えるが、わからん。ああ、そう言えばあの女性の異種族ばっかりいるスカラークラブの内部派閥は被差別的階級に分類される人だからな、クラブに居づらいけどクラブから居ることを求められてる人があそこに行くと言うことならドロシー先輩もまあ分からなくもないな。


「あ、ゲニーマハト君。……その、大丈夫だった? 色々と大変だったて聞いたけど……私のせいで。」


 ドロシー先輩のせいで大変だった? 何を言っているんだろう。何かあったか? 迷惑をかけた覚えこそあれど、いやそうか、彼女は僕がどれだけクラブからご執心されてるか知らないのかも、僕が公爵家の不倫でできた子だと勘違いしてれば、そう言った事は思いつきそうなものだけど……ああ、僕がこんな見た目だから恨むに恨めないのか? PTSDに罹りかけたんだし、人前で思う存分に僕を罵ってもバチは当たらないと思うけれど。


「ドロシー先輩、僕の方こそ、ご迷惑をおかけしまして。ドロシー先輩は悪いことなんて何もしてませんから。」


 それはガチでな。まあ説明責任が僕にはあるのだろうが、進んで友好的な人に嫌われるほど人間できちゃいない、僕はお二人は何方にと尋ねた。どうやら、クラブに行くらしい。学徒会からの脅威を避けるために学徒会に入会するだとか、まあわからんでもないことを教えられた。


 クラブに入る事のメリットとデメリットは、味方ができることと敵ができることだ。今までのドロシー先輩の立場だと日和見が多かったのだけど、学徒会に入ると今まで仲が良かった子が少しよそよそしくなったり逆に今までよそよそしかった子が急に親しくなったりする。子供の時からの付き合いと言うのは、現代社会においては大人になったらあっさりと切れる程度のものだがこちらでは違う、全てが帝都中心に回ってる弊害かどうも大人になっても貴族の付き合いは変わらない。だから親が子供の付き合いに口を出すのはもう日常茶飯事で、クラブも親の政治が関わってくる。どのクラブに入れとか、この子と仲良くしろとか、そもそも特に親しい家とは入学前からパーティーで引き合わせたりして居るはずだが、そこは年の事もあり長距離移動が難しく、何週間もかけて馬車旅をしないと行けない様なあまり遠い家との繋がりは薄い。そこでクラブに入ることによって子供同士交流を築かせつつ、将来のアレソレの準備をするんだけど……。


「学徒会……スカラークラブに、本当に入りたかったんですか?」


「えっと、入りたかったって言うと違うけど、入れるのは嬉しいよ。……て、ごめんなさい先輩。別にスカラークラブに魅力がないとかじゃなくて。」


 ドロシー先輩は別に嫌がっていないようだ、本当に強い、悪意なしに言えば図太い人だなあ。あんな事があってものびのびと子供らしい振る舞いができる事はすごく尊敬できる。僕がドロシー先輩の事を微笑ましく思っていると、僕が変な事を言うからと少し叱られてしまった。元気なようで何よりだ、やっぱり子供はこうでなくちゃなぁ。


 僕は先輩たちとお話をしながら三人でスカラークラブに足を運び始めた。


 いい日だ、こんな日がずっと続けば良いのに。僕はお昼を過ぎて少し傾いた日が窓から廊下を照らすのを見てそう思っていた。

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