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ちらうら  作者: 湊いさき21
本編
121/167

先に我が振りを直せ

 第一回! ドキドキ!?僕を争え!神子世界会議~! わーわーどんどんぱふぱふ~。


 ボクは壊れたのだろうか、1人でそう言ってはしゃいで、皆んなに盛り上がる様促した。ホムラビがズズと湯呑みで緑茶を啜り、アンナさんがカップを傾け紅茶を含んだ。テンシさんとシュテンドウジは動かず、アカグモとコクダは虫達代表のイモムシを脅かしている。やめんか。


 ナビさんが静かに手を挙げ、ボクがナビさんを指した。無言が辛いらしい、指す時にこうして合うのは初めてだとか頤立場があるからあれだけど仲たがいが起きないと嬉しいとか余計な事を言うが、無視され、ナビさんはコッチを見てきた。えっと、何か言いたい事が?


「司会進行役tokageの許可を貰ったので発言します。何故この神格が集まった会議に通信機風情と虫ケラがいるのか疑問を呈します。そしてこの会議の趣旨が見えないと主催者に発言します。」


 おっとぉ? いきなり不穏というか、邪神側の内ゲバ始まったぞ。ボクも少し顔が引きつっていい質問だネと答えた。前半の部分は無視するらしい、彼はこの会議は親睦会というわけではないが、この世界に住む人間がお互いを知る機会になれば良いなと思って開いた会だと説明をする。


「はン、混沌の神なんぞに仕えるややこがよう言い張りますわ。ウチこそなんで居座り強盗まがいの事をできるのか甚だ疑問に思います。流石混沌の方はウチらとは違うわ~。」


 ホムラビが口を開くが、ナビさんは無視、それどころかボクが仲良くしないかと言っても挙手をして、会議を開いたのだから司会進行役に指名されてないのに発言するなどと言った野蛮人の様な振る舞いは慎んだ方が良いとボクに対して発言した。おお、なんか……言ってる事が分からなくもないので注意しづらい。僕がそうねと軽く引き気味で同意すると、ホムラビが坊主はどっちの味方なんと怒り出し、会議は二人を中心にヒートアップした。舌戦は凄まじく、口撃に次ぐ口撃、AIと人の信仰という感情が生み出された存在の論戦、感情論とそれをストローマンじみた手法で否定する論客、もはや親睦会議は、会議名の様に僕を『争う』場になって居た。


 今はエグエグと泣きじゃくるホムラビを僕とナビさんを除くその場にいた全員が慰めて、僕は勝ち誇る様な笑みを浮かべるナビさんのお膝元でそのご寵愛を受けていた。具体的には仰向けにさせられ腹の毛並みを撫でられているのだけれど、なんだか胃に潰瘍のできそうなほどの心苦しさを味わっている身からしては、元凶その1からの行動ではあるものの若干の有難さはある。


 ナビさんはなんだろう、流石人工知能というか、多分口喧嘩では勝てないだろうという感覚がある。例えば今回の件に関してはホムラビを泣かした事に関して彼女を責めたとしても、そもそもの立場の違いとかそう言う話をして自分の正当性を確実に僕へ教え込むだろうし、その件に関してはどうも部が悪い。だがしかし、ホムラビがややこと言ってたけれど、なんとなくそれもわかる様な分からない様な。彼女はアレだ、あり方が幼い。全方位を敵に回して生きていけると思っているし、実際に今は生きていける。だって、開始から物の数秒で同じ邪神側からの支持をなくし、そんな心的不利の中ホムラビを泣かせるまで口論し合うと言うのは、何というかかんというか。


「敗者の泣き言程耳心地のいい物はありませんね、愛玩動物tokage。」


 ……動物かぁ。いやまあ、いいんだけどさ。ナビさん、彼らは僕の友人でもあるし、僕は彼らへ向ける愛情と同じくらい君への愛情も持っている。だから君達が対立するのは非常に心苦しいんだけど、どうにか彼らへ歩み寄ることはできない? 僕がそう言うと、彼らから来たなら相応の態度を見せてもいいですが、自分から彼らに対して下手に出ることはありませんと言われてしまった。まあ……うん、普段の僕が僕であるだけに彼女へ強く出ることはできない。フランソワーズ君に対して無理に打ち負かした時、僕は今の彼女よりも酷かったし、その点、僕から彼女を切ることはできない。つまり彼女が真に孤立しない事はないけれども、僕に絶対はないし、共依存になりそうで怖いと言うか、二人だけと言うのも寂しい物だ。


「あー、僕。その、ようやく再開できたばかりで悪いけど、少しナビさんと一緒に外を歩いててよ。こっちはボクがなんとかするからさ。」


 僕は構わないけれど、ナビさんが納得するかどうかと言うか、そもそも君だけで慰められるのか? まあいい、ナビさん、ずっとここに居たいなら仕方ないけど、外へ行きませんか。僕は体を捻って仰向けをやめ、ナビさんに話しかけると、ナビさんは意外と乗り気でそうですねと言って僕を抱きしめて小屋から出てしまった。下手に行動できる子供ほど親の束縛から逃れる存在はないと言うか、まあ一個人を親なんていう肩書きだけで御せると思う事が間違いなんだけど。まあ人類普遍の保護というか、親愛を持って接したければ接すればいいと言うのは、個人の自由なわけだから僕は彼女が僕以上に人として好ましい人間と言う方向へ成長するまでは味方であり続けておこう。彼女だって我儘な子供というわけではなく彼女の論理で生きているだけだから、僕の言う人として好ましい方向へ変わる事があり得るのかも微妙だけど。


 まあ論理が違うと言うのは厄介な話だよね。例えば小学校の先生が4年生の男の子が余りにも授業に不真面目だったので説教としてやる気がないなら帰れと言った時に、男の子が反発をして実際に帰ったとする。この場合において悪いのは誰かと言えば、教員と言う立場でありお給料を貰って更に契約をしている、付け加えて言うなら国民の義務の1つである教育を受けさせる義務を背負っている教師で、子供はあまり、いやそこまで責任を求められない。それと言うのは教師は大人であり社会人の論理を皆んなに求められているからだ。子供が特権階級なのはその将来性やその不幸性もあるが、何より持っている論理が社会の論理ではないからであると言ってもいい。遡及法はイケナイだろう、それと同じで子供は大人へ成長するまでに社会の規則を学び成長するのだから、大人にもなっていない子供へまだ習ってもいない社会の規則を子供へ何も言わずに押し付けるのは忌避すべき行為だ。今日急に法律へ夜食に麺類を食べてはならないと言うものが加えられてそれが公表されずに実効されたら皆も反発するだろう、悪いことと教えられずに悪い事をしたけれどそれを考慮しないよなんてものは社会の論理では許されない事なのだ。なので教師は社会の論理によって罰せられ子供は社会の論理によって守られると言うわけだ。まあこの場合の教師は直近的前時代の論理に従っていただけで現代の論理に果たして本当に適応していたかどうかは謎ではあるが。


「創造者tokage、見てください。この腐り移ろう世界を、これが貴方の世界だとは。私は一種の感動さえ覚えさせられます。」


 それは、どうも? ナビさんは僕を抱き上げてブラブラと歩いているうちに小さな丘陵に登って僕を高く掲げた。子供に父親が高い高いをするみたいな感じでそこを考えるとアレだけれど、やあやあどうも、確かにナビさんが言う通りあまり一般的な風景ではないね。タンパク質の腐敗で臭いし、虫がヘドロの上でプンプンと飛んでいたり、いつの間にか出来上がっていた村にも変な粘菌みたいな物が付いてたり、中々にエキゾチックと言うかオリエンタルと言うか、人類には早すぎる景色の様に思える。綺麗好きなナビさんには申し訳ないが、この世界はある程度は僕の精神構造や感情に結びついているのでそう簡単には変えられないんですが、僕にどうしろと?


「いえ、責めているのではありません。ただ、この景色は人の精神の素晴らしさを私に教えてくれる。ただただこの感動を貴方と共有したいのです。」


 この血みどろの世界が? まあ別に僕自身の精神世界をもしも僕の目で見つめたら世界がこの世界であるからまあ別に僕自身の忌避感はあまりないんだけど、およその人はこんな不衛生な場所は好まないと思うんだけど。僕がそう言うと、彼女は評価点が違うと言ってきた。彼女にとって、この世界の素晴らしさは手が加えられても本質が変わらないと言う所らしい。プレイヤーが幾ら開拓しても浄化されない不毛の土地、そこが如何にも人間らしく、単一存在の被造物の自分からしたら考えられないほど素晴らしい物だとか。


 随分な物を言ってくれるねぇ、貶してるとしか捉えられないぞ。僕から言わせれば、この世界を象徴する赤は血で、僕にとって血は特にキリストに深く結びつき、死や悲しみと同時に復活や明るくなる未来を象徴する物だ。パッション、受難を象徴する血は多義的な物だし、キリストは聖の象徴なんだから浄化とかそう言う話ではない。ナビさん、言っておくけど僕の自己批判は謙遜とは違う物で、自制のために態とするもので他人から言われるとそれなりに傷つくんだ。僕の非難を気にせず彼女は湖畔や乾いた血でバリバリになった家屋を周った。幾人かのプレイヤーとすれ違うが、皆んな遠目からこちらを見てささっと避けてしまう。なんだって言うんだ、まあ血まみれの動物を持ってはしゃぎまわるアンドロイドを見て動揺するなと言う話こそ無理かもしれないが、逃げなくたっていいだろう。


 ボーッとしていると、テレパスがかかってきた。例のチンパンジーからだ、今のナビさんは暴走状態にあって危険らしいので直接対面はしたくないんだとか。まあ、ナビさんも分霊的な僕にかかりつけになってる個体はともかくとして、もよもさんを一瞬で殺せるほどには強いからね、分霊が本体の力を一時的に与えられた結果の暴走とかも考えられるから、そこはどうも責める事はできない。だが、彼はどうも腹立たしい事を聞いてきた。曰く、『君はAIなのか?』だってさ。人が気にしている事を随分と気軽に言ってくれるじゃないか。取り敢えずは質問に答えず、人に被造物かどうかを尋ねてくるなんてどう言う意図があるのか、そして仮に被造物であれば何なのかと聞いた。


 返信によると、ナビなど重要キャラクターと関わりがある事、僕の現実での情報があやふやである事、このゲームではそう言った存在が稀にある事が僕をAIではないかと思わせ、そしてAIであれば重要なキャラクターであり専用のイベントがあると言う事らしい。なんだ黙って俺たちにイベントを攻略させろってか? ふざけやがって、僕は苛立ち紛れに自分にAIであると言う自覚はない事と同時に自己がAIでない証明は誰にもできない事、そして自分がAIであろうとなかろうと何ら変化はない事を伝えた。AIであれ人であれ、思考するという事実は変わらないんだ、その思考に苦痛や快楽などと言った感情と言われる物が加わればなおのこと。AIであればイベントがあるとは言うが、仮に僕が演出上AIである事を否定するAIとして作られたとしたらどうだ、僕の言葉を鵜呑みにしたらイベントとやらを逃すぞ。そんな事は嫌だから結局は僕に気遣いたい人は気遣えば良いし、気遣いたくない人は気遣いせずにどうとでもすればいい。そう送ると、なんだか怒ってないかと返信が来た。アイデンティティと言うか自己存在における問題に関して会って半日程の人に突っ込まれて怒らない人がいるのか? それに、君達には伝え方を変えているが大分決めつけられた言い方だったんだ、『お前AIだろ?』って感じの、腹立たしい。


 懲りないチンパンジー野郎から、普通の人はそこまで怒らないと思うのだが、なんて事を言われて僕は言葉を失いかけた。僕だって普通の人から『君AI?』なんて聞かれても距離を置くだけなんですがねぇ。僕はナビさんにそろそろ小屋に帰ろうと語りかけ、ナビさんはこちらを向いてはいと返事をした。


「激昂者tokage……忍耐ですよ。」


 半笑いで言われ、僕はチンパンジーに切れた。


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