表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ちらうら  作者: 湊いさき21
本編
111/167

ライドオンチョーシ

 ゲームは1日1時間、と言うつもりはない。実際に何時間もしてるしね。でも、流石に100人を倒す様な戦闘の後にまたグール退治をする気はない。呪いが自然生成なら良いのだけれど、人為的な物ならど長丁場になりそうでどうも。


 朝クロノアデアに起こされれば着替えて朝食をとって、まあいつも通りの生活の始まりさ。学校に行ってわかってる様な事を聞いて、それで運動して家に帰ってようやく修行……めんどくさいとは思わないが、ねぇ? 授業で魔術生物を扱ったり文化について教えてくれるならまだしもさ、魔術の初歩だったりなんだったり、飛び級ができるものならとっととさせてもらいたい。まあ良いんだけど。


 立場にかこつけてクロノアデアとペチャクチャとお喋りするとすぐに学校に着いて彼女とはお別れだ。ヤマオカさんやクラリスさん、フランソワーズ君達男の子もいるから学校が嫌いってわけじゃないが、僕は彼女が居なければそれだけで空虚さを覚える程度には依存している。そうまで依存してるってのは最近わかった事だけど、まあゾッコンなのは何となく理解できていたからショックは少ないね。ああしかし、煩わしい生活だ、鳥にでもなりたいね。ロータコメート君だかなんだかに挨拶して適当な会話をして、適当な挨拶とともにハゲチャビンに挨拶をして、こっそりと寝始める。ぐう。


「アロガン・ゲニーマハト・チェルトルカ。話を聞いていたのか?」


 ぐうと寝てたらハゲチャビンに指されて、問題に答えさせられる。それで彼は僕に教科書に書いている事を聞いても答えられると知っているので、魔術で使い魔を作成してみろだとか言ってきやがった。まあ構わないのだけれど、使い魔はつい最近めんどくさい事になったからなぁ、気をつけよう。


 正直なところ、クロノアデアとの訓練を重ねている事により、土塊を魔術で作りふうと息を吹きかければできるレベルで僕は使い魔の魔術が得意だ。多分僕が言うところの変換効率が高くなったと言うか魔術に慣れたというか、まあそんなところだ。今回はそうだな、万一の事を考えて人畜無害な奴がいいな、人畜無害なやつと聞いて思い浮かんだのは小動物、そして小動物と意識した瞬間に僕はむこうでの僕、カモノハシを想像してしまった。土塊が勝手に姿を作り勝手に意識を持つ、やってしまったか?


 だがまあさすが僕のアバターにも選ばれた生物、大人しく僕の手から腕を這って肩に乗っかる程度に納めてくれた。ハゲチャビンはあまり愉快な顔をしていない、いやまあ元から見ていて気持ち悪くなるような部類の顔だが、不愉快そうな顔をしている。土塊の僕がゲームよろしく火を吹いてみせた。器用な事に火で空中に文字まで書いてみせる、何々……は、げ、ちゃ……僕は早急に呪文をかき消した。日本語だから良かったものの、この小動物はあまり可愛くない性格だ。


「……では、使い魔の造り方を説明しなさい。」


 はぁ? なんで僕が……まあいい、僕は使い魔の依り代とかそう言うのも割と適当にして魔術を使ってるからね、間違っていたらハゲチャビンから訂正が入るのだろうし、僕だけ密な授業を受けられると思えば……。僕は教室の前に歩いて深呼吸をした。


 使い魔作成のアプローチはいくつかあり、中でも簡単なのがあらかじめ決まった命令を実行するだけのアルゴリズム型、擬似霊魂を入れて契約をするヒューリスティック型があって、僕がよく使うのはこれの混合型だね、どちらにも利点がある。ああ、ヒューリスティックの意味はあまり考えない方がいい、アルゴリズム型の反対だからって適当言ってるだけだからね、で、アルゴリズム型の利点だけど、確実な命令の実行だね。逆にヒューリスティックは作成者の分身的な感じで、まあ確実に命令を実行するとは言い難いけど汎用性が——


 残念な事に、僕の座学の授業は休み時間にも長引いたので打ち切った。別に火の魔術を依り代にする場合とかの発展的な内容を説明していただけで使い魔の作り方は説明し終えていたので、まあ鐘の音とともにぶっちぎってしまったが構うまい。数週間前の僕はつったってろと言われたら馬鹿みたいに昼休み中も突っ立ってしまっていたのでまあだいぶ進歩したと思うね。て言うかハゲチャビンは僕が喋り出したら止まらないのを知ってるんだから話を振るのをやめて頂きたいね。と言うかそもそも時計がないのがいけないんだよ、時計。なかったらちょうどいい塩梅とか素人に分かるかっての。


「相変わらずお喋りと言うか、でしゃばりだね。」


 そいつはどうも、僕は話しかけてきたヤマオカさんに肩をすくめた。ヤマオカさんは授業は退屈かなんて聞いてくるもんで、勿論と言う他ないねなんて妙な言い回しをして答えると、それではソナタに良き報せを……なんて妙な調子で返された。二人してニヤけて話を進めると、どうも次は楽しい楽しい幻想動物の授業らしい。幻想動物とは簡単に言って魔物の事だね、人狼とかロック鳥とか、あるいはグリフォンとかの混じりものを扱う。しかし幻想動物ね、いいじゃないか、らしくなってきたと思う。


 動物は好きだ、狸とかふくら雀とか丸っこい動物は可愛いし、マヌルネコとかメンフクロウとか、そう言うハッキリとした可愛さから少し外れた可愛さなんかはもう言葉では語りつくせないほど好きだ。醜い人間とは大違いで、なんて思いながら彼らを見ているのは悪い事だとは思うけど。


 その後になんか知らないけど絡んで来た男の子を交えて適当な話をしていると、覆いがかけられた鳥籠みたいな物を持ったハゲチャビンが入室してきた。ハゲチャビンは魔術でカーテンを閉じ部屋の光量を落とし、薄暗い部屋の中で授業を始めた。




 今回彼が扱うのは水棲生物らしい、彼は光に敏感なので光の魔術を使わないようにと言って鳥籠のような形状と思っていた物の覆いを取った。飲み口のないワイングラスの様なといったら伝わるだろうか、球形の水槽が出てきた。覆いがかぶさっていたので球形であるとはわからず鳥籠の様なと表してしまった。まあ僕の失敗なんてどうでも良い、水棲生物に関しての先生の話を聞こう。


 水棲生物はぱっと見る限りは自分で発光する小さなカッパに近い。頭に皿はのっけてないし甲羅は背負ってないが、口先がスネ夫みたいに尖っていて痩せぎす、皮膚は青緑の青磁色をベースとした紺青のマダラで黒っぽい藻が少し付着している。しかし発光するのに光に弱いのはある種の極限環境生物なのか、暗すぎても生きて行けず明るすぎても生きて行けず……なんて考えていると、仮称ミニカッパが突然姿を消した。いや、消してはいない、発光するのをやめたので暗闇に溶け込んだのだ。発光してないミニカッパは深藍かもしくは殆ど黒色をしているのだ、僕はなんとかボンヤリとだがミニカッパを目で捉える事ができた。ハゲチャビンが魔術で徐々に部屋の光の段階を上げていって、ミニカッパを衆目に晒す。


「この生物は姿は知らなくとも名前やその活動に関しては皆も知っているだろう、これがヴォジャノーイだ。」


 いや、存じていないが。先生の授業によると、ミニカッパ改めヴォジャノーイは僕の赤の世界に住み着くマシエッテさんと同じく水際で人を襲う存在らしい。まあマシエッテさんの方がだいぶ見た目は恐ろしいけれど、本質は変わらないだろう。そう思うとなんだか親近感が湧いてくる様な気もするが、しかしあんな地球儀くらいの水槽に入る大きさ、ウシガエルくらいの生物が人間を襲えるのだろうか?


「この生物は月の満ち欠けと共に大きさを変え、今日は新月なので一番弱い姿になる。他に特徴としては、捕食活動時には姿を変えることだ。」


 話によれば満月の時には太った成人男性と同じくらいの大きさになるんだとかなんだとか。しかし姿を変えるのか、例えばどんな風にとかの具体例が聞きたい。なんて考えていたら、ハゲチャビンは無能だ、そう言った説明は無しに授業を進めようとしていたので挙手をしてわざわざ僕が質問をする羽目になった。


「やれやれそんなことも知らないのか? チェルトルカ。」


 なんていやらしい笑みで馬鹿にしてくれるハゲチャビンによると、ヴォジャノーイは特定の姿にはならない事は童話やらなんやらで一般常識らしい。その人が一番恐れるもの、あるいはその人が一番惹かれるもの、そういう風に感情が強く揺さぶられる物になるんだとか。ハゲチャビンにはムカつくが、まあ事実として知らなかったのでありがとうございますと答えておく。覚えてろよハゲ……。不快になった、その後の説明は省こう。水辺の小動物がどうだこうだなんてのはもう良い、なんにせよマシエッテさんから力の一部を貰ってる僕にはそんじょそこらの水棲生物は脅威になり得ないし、そいつらが水の寮周辺にいるとか言われたって僕が潜った時には見えなかったんだから、実力もわきまえず襲いかかってくる様なそこまで凶暴な魔物じゃないのだろうから真剣に聞く必要もない。はん!




 続いての授業は如何にも魔術師らしい魔術の練習さ、と言っても僕はあまり好きじゃないがね。授業の流れはこうだ、先生が今日習得する呪文を教えて、各自練習、授業終了の少し前に使える様になったかのテスト。ハッキリ言わせてもらうけど、ゴミだね。何がと言われれば僕のレベルに合ってないことだ。僕は魔力量の関係でやろうと思った事はまあ多少のランクダウンなり何なりはあってもある程度は出来てしまう。


 時間を引き延ばしての瞬間移動や、ネズミとかの生物をコップとかの物に変えたりその逆だったり、小さい頃は魔力の扱いに慣れてなくて無理だった空を飛んだり擬似的な瞬間移動したりね。だから呪文を使いこなせる様になりましょうじゃなく、呪文を使える様になりましょうなんて授業は嫌なんだ。めんどくさくってしょうがない。そりゃあ、まあ、僕にだって『できる』と断言できない事はある。生物学的無知であるために毒の無効化は難しいし、あるいは単に魔力不足なので擬似的な脳の作成も難しい、でも、程度の差を無視すれば術自体ができない事はない。だから一年生が使う魔術では物足りないというか何というか……。


 ああそうだ、僕の班員に本日の課題、壊れた椅子など木製製品を治す呪文について指導をしている間に適当な事でも語ろうか。あー、そうだね、属性に関してでも語ろうかな。今まででもちょくちょく説明に挟んできた様な気もするけれど、きちんと語っていこうじゃないか。それに今度から火属性魔術の特性とか、そう言う物に関して語りやすくなる。


 魔術っていうのは12ないし14属性に分類できるらしい、少なくともこの学園ではそう教えている。まずは火に風に水、それらの派生の爆発に雷に氷、他に光に魅了に土とそれの派生の闇と浄化と鋼。プラスアルファで無属性と独自魔術。実は今のはクロノアデア方式の並べ方なんだけど。まあ、そういうのはどうでも良いか。


 ところで、今言ったのはどれもコップに命を与えたり瞬間移動したりに当てはまりづらいとは思わないか? そう、そういうのは全て無属性魔術に乱雑にぶち込まれてるんだ。魔術の矢もそうだし空中に作る足場もそうだ。まあそれもこれも即戦力が欲しかった戦争中の名残らしいんだけど。戦争中は魔術師も多くはなくて非魔術師の戦闘班に魔術師が混ざる感じだったらしく、空を飛んだりだのなんだのをするよりかは武器製造やら臨時拠点の作成やらなんやらをしてくれみたいな感じで、無属性魔術とかは発展しなかったんだとかなんだとか。


 まあそこら辺はクロノアデアの受け売りだ、疑う理由はないが僕自身は発言に責任を持てない。でもまあ無属性魔術にはどの属性魔術に対してもそこそこの防御力を発するし、今ではなんで一括りにされてるかわからないくらい細分化がされているから古い基準のままだって言うのは正しいんじゃないかな、魔術師は古いものこそ大切にするし。


 ああついでに、独自魔術に関しては特に前から聞いているだろうけど、神様の加護を得る前の僕のオーバーフローに見られる様な、他の人には使えない固有の属性さ。ああ、そうそう、今回習っている呪文なんかは僕の独自魔術に近いね。木製の椅子なんて魔力を通せばすぐ治ってしまうので、今回の授業は余計に退屈だよ全く。でもまあ、木を治す呪文と巻き戻したり早送りする僕の魔術は性質的に大きな違いがあるから一緒というわけではないんだけど。


 僕は2人が直そうとしている椅子をそれぞれ右手と左手で取り、右手には独自魔術用の魔力を濃くした僕の魔力を流し込み、左手には魔力を流し込むとともにフィックスと唱えた。fixとは、例えば取れかけたボタンを縫い付ける様な自力でなんとかできる物を修理する様なニュアンスの英単語だ。面白い事に……いや、笑えると言う意味ではなく興味深いと言う意味で、この学園では何故か英語で魔術を教えている。


 しかも古英語ではなく現代語で。あり得そうな線としては僕やヤマオカさんよりずうっと前にイングリッシュスピーカーの人が転生したとかそう言う感じだけど……まあ微妙だ。転生した人が他にもいる、だからなんだって感じだし。そりゃあヤマオカさんに会えた事は嬉しいけれど、もう彼女がいるから他の同郷の人はもういいって思う。あまり昔の記憶がないからヤマオカさんだけで手一杯だしね……。


 なんて思いながら、僕は手本までも見せたのにテストまでに呪文を習得できなかった2人を見ながら天をあおいだ。僕の教え方が悪いんだろうけど……なんだかなぁ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ