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第三話

Q、魔法を使いたい。

A,来世で頑張りましょう。



 メイドさんとの勉強中に重要なことが分かった。使われている言語が英語……に近い何かってことだ。正確には文法がそれに近いってだけで実際には完全に別物だ。単語も知らないものばかりだし発音も全然違う。

 そうは言っても文法が理解できているかどうかで大分解読に差が出るのは明らかだ。

 さぁ!メイドさんや、俺にもっと知識(単語)を寄越せ!全部覚えてやる!


 そういうわけで、メイドさんにはいろんな本を読んでもらうことに。しばらくはメイドさんの手作り絵本でそこからランクアップして簡単な物語、小説、果ては聖書っぽいものも読ませた。

 因みに手作り絵本以外は家の中歩き回って見つけた書庫から引っ張り出してきた。小説まではよかったけど最後の聖書はメイドさんの顔が引きつってたな。俺も読めって言われたら絶対嫌だもん。めっちゃぶ厚かったし。


 そんなこんなで周りの言っていることがある程度理解できるようになってきて俺自身もかなり喋れるようになってきた。未だ舌っ足らずな感じが抜けないのはご愛敬ってことで。


 言葉が分かると自分と周囲の事もだんだんと分かってきた。父親の名前がショーン、母親がセイラ。俺の名前がカールハインツで愛称がカール。俺に読み聞かせをしてくれているメイドがニコラ。メイド長っぽい人がサンドラ。そして執事のゲイル。あとは厨房担当のソフィーア。

 以上がこの屋敷に普段からいる面子だ。他にも掃除とか雑用をこなしてくれるメイドさんはいるけど、こっちは持ち回りのせいか定期的に入れ替わっていてあまり接点がなかったりする。なんでも、王都にも屋敷があってそっちの管理が大変だから、基本的に人員は向こうに回しているらしい。

 家の名前もゲルハルドって事までは分かったけど貴族かどうかはまだ判明してない。兄弟姉妹の姿は見えないからたぶん俺が長男じゃないかな?いや、父親の年齢を考えると俺の母親が後妻って可能性もあるか。まだ油断できない。


 そうそう、この世界についても少しずつ分かってきた。一日が二十四時間、七日で一週間、三十日で一か月、十二か月で一年の周期で成り立っている。

 曜日は無、光、火、水、風、土、闇で無の日が休日の扱い。月の読みは単純に一ノ月、二ノ月となっている。

残念ながら国の名前とか、今俺がいる地名とかはまだ全然わかっていない。それっぽい単語は聞こえてくるんだけど、どうにも位置関係が分からないせいかいまいちピンと来ない。そのうち地図でも見つけて覚えるとしよう。

 そうだ、月日の概念が分かったから俺の誕生日も分かった。三ノ月の十七日が俺の誕生日でもうすぐ三回目の誕生日だ。二年目の誕生日プレゼント?靴と積木と服だったよ。本がほしかった。



◆◆◆◆◆◆



 リビングでおやつに出されたスコーン(?)にベリー系のジャムをたっぷり塗って食べる。うん、普通にうまい。

 予想通りというかこの世界、砂糖や蜂蜜はそこそこの高級品だ。おかげで甘味が少ない。代わりにジャムや果物で補っている感じだ。夏や冬に気温の差が出るけど年中通して穏やかな気候だからサトウキビとかはないだろうね。サトウダイコンとかどっか生えてないかな?


「カール様、ジャムが服に垂れています。もっと綺麗にお食べになってください。」


おっと、考え事してたらサンドラから小言をもらってしまった。って、あー。本当にジャムが垂れてら。取りあえず拭くものどっかにないかな。


「サンドラ、カールはまだ三歳になってないのよ?そんなに厳しく言わなくてもいいでしょうに。」

「しかし、カール様はゲルハルド家の未来を担うのですよ?嫡男としてふさわしくなっていただかないと困ります。」


母さんから援護射撃が入るもサンドラには通じず。あと、サンドラがめっちゃ重要なこと言った。今、嫡男って言ったよな。つまり、家が貴族かどうかはともかく俺が後継ぎなのは確定か。あ、それより何か拭くものを……シミになる。


「そうは言っても騎士から男爵に成ったばかりの家よ?あの人もあの通り実力重視のきらいがあるからカールのマナーが多少悪くても誰も気にしないわよ。それより厳しくしすぎて大人になる前に具合が悪くなるほうが嫌だわ。」

「それは旦那様に誰も口をはさめない実力があったからの話です。もし、カール様に才がなかった場合は目も当てられませんよ。それに、礼儀作法は身に着けておいて損になることはありません。」


またすごい情報が来たな。我が家は男爵家と。しかも騎士から成った。結構すごい家かも。

 騎士に男爵ってことはその上に子爵、伯爵、侯爵、公爵があるってことかな。でも、情報よりも今はジャムを拭くものがほしい……あ、ニコラが持ってきてくれた。


「はーい、カール様。お姉ちゃんがフキフキしてあげますねー。」


うん、なんていうか……ニコラって黙って仕事に専念しているときはメイドとして非常に優秀なのに、なぜか言動と行動はポンコツなんだよね。

 例を挙げるときりがないけど現在進行形で『頼れるお姉ちゃん作戦』が発動している。『カール様に実の姉のように接してもらいたい!お姉ちゃんって呼ばれたい!頼られたい!そんなわけで奥様に内緒でカール様をプチ洗脳する!』と、俺が言葉を理解していないと思って思いっきりぶっちゃけてくれた。まぁ、がんばれ。たぶん無理だろうけど。


「あららー、完全にシミになっちゃいましたねー。でも、大丈夫!お姉ちゃんに任せてください!」


ニコラが拭いてくれた場所は完全に真っ赤になっていた。こういう時に限って着ている服が白だったりするからね。余計に目立ってしまう。

 さて、ニコラが何をしているかと言えばハンカチを水で湿らせてシミ抜きの準備をしている。残念ながらこの世界で液体の中性洗剤を見かけてない。だからニコラさんや、それで裏に当て布して表からトントンと叩いたところで大して綺麗にはならないよ?

 そう思っていたら何故か表にだけハンカチを当てて目をつぶって集中している。で、おもむろに目を開けて一言、


『水よ、わが意に従い流れ給へ』


すると、あら不思議。シミがハンカチに全部移動している。って、なにこれ!?すげぇ!


「ふふん。どうですか、カール様?これがお姉ちゃんパワーです。」


いや、それは絶対無い。


「何がお姉ちゃんパワーですか、生活魔法程度で偉そうに。そういうことはカール様をお守りできる上位:下級が使えるようになってから仰いなさい。」

「ちょ、サンドラ様ひどい!せめてネタばらしまで私にやらせてくださいよ!」


サンドラの突っ込みにニコラが噛みつくも俺への教育がどうのこうのと説教コースに入って説明役が不在の状態に。……いま、さらっと魔法ってサンドラ言ったよね?


「あら、カールは魔法を見るのは初めてだったかしら?」


びっくり顔のまま固まっていたら母さんが反応してくれた。ええ、初めてです。前世でも奇術(マジック)しか見たことないです。

 魔法が何なのか知りたいし、実際に使ってみたい。


「まほう、つかいたい。」


自分の舌っ足らずな感じの喋り方にものすごい違和感を感じるからあまり喋りたくはないけど、口を使わないと上達しないのでここは我慢しよう。まあ、魔法を使いたい欲求が勝っているから今は気にならないけど。


「うーん、カールにはまだ早いと思うわよ?」

「じゃあ、おしえて。」

「出た、カール様の知りたがり病。」


サンドラの説教から解放されたニコラが何か言ってるけど聞こえんな。


「三歳前の子供に教える内容じゃないんだけど。まあ、いっか。お母さんが少しだけ教えてあげましょう。」

「あ、奥様。それ禁句です。」


ニコラ、止めるのが少し遅かったな。さーて、教えてくれると言質はとった。質問タイムと行こうか。



◆◆◆◆◆◆



「……ニコラが読み聞かせの後、やたらと疲れている理由がわかったわ。」

「……わかってもらえてニコラはうれしいです、奥様。」

「……カールの顔がすごいツヤツヤしてるわ。」


いやー満足、満足。ものすごい有意義な時間だった。厨房のほうからうっすらと夕飯の香りが漂ってきているけどそんなものは些細なことだ。


 さてさて、専門的な言葉も出てきたけどおおよそ魔法がどんなものかは理解できた。簡単にまとめると


・魔力は基本、誰でも持っている。

・魔法にはランクがある。

・魔法の使用には杖や指輪、腕輪といった触媒となるものが基本的に必要になる。


と、重要なのはこの三つだろうか。


 まず魔力は大なり小なり誰でも保有している。ファンタジー物でよくある「魔法が使える=貴族」の図式はこの世界では成り立たない。「基本、誰でも」というのは何十年かに一度、極稀に魔法を発動できないレベルで魔力が弱い人が生まれるからだ。ただ、そういった人でも微弱な魔力を使って魔道具と呼ばれる物の起動と停止はできるから、さして困らないそうだ。



 次に魔法のランクだ。下から順に下位、上位、封印の三つに分類される。さらに下位と上位はその中で下級、中級、上級に分けられる。

 ランクの基準は下位:下級は各属性での干渉。これは火属性なら物を温めたり、水属性なら物を少し湿らせたりと、魔法において最も基本的なこと。

 下位:中級は各属性への干渉。言葉は下位に似ているけど内容は全く違う。水属性なら桶に張った水を操るといった内容だ。ニコラがジャムのシミを抜いたとき使ったのがこれだ。ハンカチに含んだ水を操ってシミ抜きをしたわけだ。

 下位:上級は各属性の発現。物に火をつけたり水を出したりと、使いようによっては人を傷つけられるけど殺傷能力が乏しい魔法がここに入る。

 サンドラが言っていた生活魔法というのは一般的に下位魔法全般を指している。で、下位が殺傷能力がないなら上位は当然、人を殺すことができる攻撃性の高い魔法になる。

 

上位魔法の括りはもっと単純で、攻撃範囲で決まっている。下級は一人から三人を、中級は十人前後で多くても二十人程度、上級はそれ以上を相手にできる。ゲームで言うなら下から順にボール、ウォール、全体攻撃といった感じかな。


 最後の封印クラスは使える人が居ないor使える人が非常に少ない魔法。封印クラスは母さんもよく知らないそうだ。

 因みにニコラは下位:上級がたまに成功する程度で母さんは上位:上級が二割ぐらいの確率で成功すると言っていた。けど、二割の成功率でも十分すごいらしい。なんでも、上位:下級までならちゃんと指導を受ければ割と簡単に到達できるけど、そこから中級が安定して使えるようになるのは極一部だそうだ。



 最後の触媒は人によっては無くても発動できるらしい。というのも説明中に冷めた紅茶を母さんが何も使わずに温めていたからだ。そうは言っても有ると無しでは効率がだいぶ違うから基本的には下位:下級か使っても中級程度までだそうだ。ニコラもサンドラも触媒無しじゃ下位:下級も怪しいそうだ。



 うん、話を聞けば聞くほど魔法を使ってみたくなるね。ダメもとでもう一度頼んでみよう。


「まほう、つかいたい。」

「うーん、そうは言ってもねえ。」

「奥様、まずはカール様にあれ(・・)をさせてみては?」

「あれ?……ああ!あれ(・・)ね!」


何かわかんないけど、いい感じ?


今年の更新は恐らくこれが最後です。

恐ろしいほど遅筆で申し訳ありません。


次回更新ですが一月が筆を執る暇が恐らく無いので、二月の上旬か中旬にあたりになりそうです。

一月さえ乗り切れば更新ペースを上げられるのでよろしくお願いします。

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