インターミッション 「静かな帰路と誤った道筋」2
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「よう」
オハヨウ
久しぶりだな
「何故ここに来た、質問の答えも持たずに」
地下牢に捕らえられている「獣」はそう僕にたずねてきた。
イイヤチガウ
尋ねられているのは君では無く、彼の方だよ。
そこには若く幼い自分が居た。
いや違う、自分が老けすぎてるのだ。これじゃあ老人だ。
獣は毛を逆立てながら独房の隅へと逃げる。何故逃げ出さないのだろうか、独房に天井は無く底からは空の大地が臨める。
「成すべき事を成したのか?」
質問の答えは?
カネハナラセタカ?
記憶はどこまである?
残酷さ本質ってなに?
独房の獣のステータスを呼び出す
【名前:デズモンド】
「貴方が……蒼の王なのか」
幼いルカが尋ねた。
獣は光を恐れる害虫のように、部屋の隅で卑屈に体を縮こませて、恐怖に濡れた瞳で誰かを睨んだ。
「早く気づくんだ。お前たち全員、間違った方向に進んでる」
何も正しい事なんてできちゃいない
タダシサ?
それって……ねぇ
「まぁ、確かに難しい問題ではある」
番組の途中で男が突然話しかけてきて、僕は驚く。
「一つ意見を言わせて貰うと、君の反応はあまりよろしく無いことが多々ある」
檻の中の獣が突然立ち上がる。
「あまりだと……」
そして巨体を震わせながらよって来る。
「全然違う、まったく、全然、何一つ」
獣の吐息を浴びる、雨に濡れた草花の臭いがした。
「僕は、あの女には勝てない」
「あの女……とは、誰ですか」
もう十分でしょう。
オキロ、キミハキズツイテナイノダカラ。
目を醒ましなさい。
君
達は間違った道を進んでる。
荒野に僕の意識が戻った。荒い風の吹き荒む、灰色の植物に覆われた世界。地平線の向こうに暗雲が見える、暗く救いの無い世界に大きな災禍が降り注ごうとしている。
何度も見てきた夢だ、でも今回はロナの姿が見えない。
僕に背を向け遥か前方に立つ、その姿を確認できない。
僕は何か間違ってしまったのだろうか?
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ベッドの上で目を醒ますと、そこは見慣れた僕の部屋だった。
ブラザーフッドのギルドハウス、地下一階の一室。
「え、なんかめっちゃ体痛い」
思わず口に出すほど体の節々が痛む、成長痛を想起させるようなジワジワとした気持ちの悪い疼きだ。
怠い体をどうにか半身を起こして軽く伸びをする。関節という関節が壮絶な音を立てたのでびっくりする。
「何日寝てたんだ僕は」
起き上がってベッドから降りる、同時に強烈な違和感に僕は襲われる。
なんか……世界がデカい。
ベッドとか、机とか、部屋そのものが異様に大きい気がする。剣立てもデカい、てか着てる服までもがなんかズルズルで……
そこで姿見に映った自分の外見に気づいた。
「は?」
僕が……僕じゃなくなってる。
小学校低学年程度のガキが鏡の中にいて、今の僕と左右逆の動きをしている。
「……は?」
え、なに?
自分の手の平を改めて観察する。自分の手じゃない、体も、どこかしこも。
慌て姿見に近寄り今の僕の外見をよく観察する、そして気づく。
「これ、昔の俺じゃね?」
7年ぐらい前の姿だ。
ステータスを表示してみる。
【名前:ルカ・デズモンド
HP:12/12 MP:10/10
ジョブ:魔剣士
レベル6
筋力:1 技量:1 知覚:1 持久:1 敏捷:2 魔力:3 精神:11 運命:5
状態異常:退行(深度4)薬物中毒(深度2)】
大体理解した。
薄らぼんやりとした記憶しかないのだけれど、多分僕はチャズマと闘って負けたのだろう。
そして……転生した。不死の力で蘇り、赤ん坊からやり直して今に至ったのだろう。
多分これは「レベル引継ぎ系異世界転生、俺だけ不死身で異世界で無双しちゃった系」のそれか。
「元のレベルが低くちゃなんの意味も無いだろ……てか、転生のタイミングがおかしいよ」
そんなくだらない言葉を吐き出すと、さっさと自分の部屋を出る。
誰かからウェイストウッズでの事の成り行きを聞きたかった、そしてリスベットの安否を確認したかった。
結局夢の内容は、何も覚えていなかった。




