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鋼鉄と硝煙 2

「面白いな、こいつ……」

 ダミアはそうつぶやきながら、再生を始めたルカの右腕を切り落とした。

「影をつかって無限に再生するのか、こんな魔法初めて見る」

 部下の一人がそんな感嘆の声を上げる。

 ルカは全身に大量のボウガンを受け、まるで昆虫標本のように壁に貼り付けられていた。

 舌顎に刺さったボウガンの矢は脳まで貫通して、顎を固定している。その為にルカは魔法の詠唱ができない。

「ひょっとして、普通のイベルタリアンでは無いんじゃないの? だからファリアもコイツを見逃したのじゃね?」

 彼らは口々に意見を交換しながら、ルカの体を切りつけて実験をしている。

「……まぁ、遊びはこの辺にしよう、おいルカ聞こえてるか?」

 ダミアはそう言いながら肝臓にボウガンを打ち込む。

 ルカのくぐもった声が響く。

「ルカ、こんな事しておいて言うのもアレだけど。俺達は君を気に入ってる、勇気はあるし行動力もある、そしてその面白い不死身な体。どうだ、仲間に入ってくれないか?」

 彼はルカに近づくと、その顎に刺さったボウガンに手をかけた。

「ルカ……君がもし、俺達と共に行動してくれるのであれば。リスベットも解放してあげよう。他にも可愛い部下を沢山つけてあげるよ、なぁどうだ?」

 矢が引き抜かれる。同時に下顎がもげて、切れた舌が地面に落ちた。真っ黒な血がベチャベチャと垂れてルカの胸を赤子の唾液のように濡らす。

「……ナドラは?」

 必死に下顎を再生させながら、ルカは尋ねる。

「は?」

「ナドラも救え」

「無理に決まってるだろ、彼を処刑するのがこの街を占領した最大の目的なんだから」

 ルカは血痰を吐きかける。

 それは顔にこそ掛からなかったが、彼のコートの肩には引っかかった。ダミアは苛立たしげにそれを拭うと、再びボウガンを撃ってルカの下顎を破壊した。

「……まったく、バカはどうしようも無いな。おい、お前ら、もう十分待っただろ、屋敷に火をつけろ」

 ダミアの命令に、松明を持った数人の部下がナドラ邸の敷地に入っていく。

「どうせリスベットもナドラも地下に隠れてる、煙で炙り出してやれ」

 屋敷から火の手が上がる。大量の可燃物が中に詰められていたのか、あっという間に火の手が上がり、炎が吹き上がる。

 ルカがうめき声をあげる、体を壁から引き剥がそうと藻掻き、血が体中から吹き出す。

「恨むなよルカ。ちゃんとこれを避ける機会は与えてやったんだから。悪いのはお前だ」

 その時、奇妙な音が屋敷の中から響いた。

 巨大な獣の鳴き声のような、謎の重低音。

 しばらくするとそれにゴリゴリとした、何か硬い音が混ざり始める、それは次第に大きく、そして速くなっていく。まるでエンジンの駆動音だ。

「なんだ? 何が燃えてる音だ?」

 ダミアがルカから離れ、屋敷へと近づく。

 音は更に大きく、まるで怪物の咆哮のように……

 次の瞬間、炎で崩れかかっていた屋敷の正面ドアが吹き飛んだ。

 そして中から――

「おい、冗談だろ」

 ――中から鋼鉄の巨人が飛び出してきた。

 全長4m程の、鈍い黒色に輝く鉄のロボットが、大轟音と共にかけてくる。

 ダミアの体が巨人の足で蹴り飛ばされ、一瞬でひき肉になる。

 呆気にとられてる他の戦士達も、次々と蹴り散らされていく。

 まるで世界が唸ってるような、強大な駆動音と共にその巨大兵器は他を圧倒し、あっという間に周囲を制圧してしまった。

 ロボットの肩から何かが降りてくる。

 リスベットだった、彼女は直ぐにルカの元へと駆け寄ると、ボウガンの矢を引き抜いていく。

「ごめんルカ、起動するのに思ったより時間が掛かった」

 体が壁から引き剥がされる。

 ルカは急いで足と腹の筋肉を復活させ、目の前の鉄巨人を見上げる。

 黒を基調としたカラーリング、ワンポイントで黄色のラインがモールドに入っている。腕はニ対、長く無骨な一対の腕と、胸から伸びる短く華奢な一対。両の足は短く太く、一歩毎に地響きを起こす。

 背中には緑色の液体が充填された大きなタンクが4つ装着され、それぞれに弁が付けられていて、不定期に大量の蒸気を噴出している。

「か、かっこいい――」

 思わず幼稚な感想が口から漏れる。

「――あ、あれには誰か乗ってるんですか、まさかナドラさんが?」

 リスベットは少し意外そうな表情を浮かべ、目を二三回瞬く。

「え……えぇ、そうだけど。うん、ナドラ様が操縦してる……ルカ、貴方なんか妙に察しが良いときがあるね」

 彼女の困惑に全く気づく様子も無く、ルカは子供の様に目を輝かせてその巨兵を見上げ続けた。

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