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罪悪と悪運 2.5

 ジェロームさん目掛けてゼドの矢が降り注ぐ、だが彼はそれを全て剣で防いでみせる。

 そんな様子を横目に僕は全速力で階段を駆け上がる。最上部ではゼドが二の矢を番え、カイネルが魔法の詠唱を始めてる。

「ティト! 頼んだぞ」

 僕は背中の彼女に大声で呼びかける。

 それに答えるように、ティトの体重が重くなった。

「……『一射』『一殺』衝天(ピンズキル)

 早く強い弓矢が僕の背中目掛けて放たれる。

 ジキッと鈍い金属音が鳴った。ティトが影から取り出した盾がゼドの攻撃を防いだ。

 ナナクが階段をゆっくりと下りてくる、僕を迎え撃つ気だ。

 一見武器は何ももってないように見えた。

「やつの武器は篭手じゃ、油断するでないぞ」

 ティトが呟く。確かにナナクの両の手にはやたら重厚そうな篭手が装備されていた。

 僕はスパタを引き抜き、魔力を溜める。

 もうあまりmpに余裕は無い、短期決戦に持ちこむ必要がある。

 ナナクが目前に迫る、僕は勢いよくスパタを振り上げた。

「……『一心』『一律』衝天(ピンズキル)

 ゼドの三の矢。

 それは振り上げたスパタの先に命中し、僕は体勢を崩してしまう。

 ナナクはその隙を逃さない、一瞬で僕の懐に入り込み、強烈な拳を胸に叩き込んできた。

「グェッ」

 悲鳴をあげ、無様にふき飛んで階段を転げ落ちる。

 後ろから上ってきていたジェロームがそんな僕を飛び越えて行く。

「ルカ! 後衛二人は俺がやる、君はナナクの注意を引け」

 そんな無茶を……

 ぐちゃぐちゃになった肋骨を必死に整形しながら、僕は立ち上がる。見上げるとジェロームが前を走り、ティトがナナクと戦っていた。

 ティトの奴、いつの間にか僕から降りてたのか。

 小さな体でひょいひょいと動き、ナナクを翻弄している。

「『天より振る』『留めらるる』『制約なき存在』、雷鳴球(サージ)

 階段上で魔法使いが詠唱を終える。

 次の瞬間、ナナクを中心に球状の雷撃が発生する。ティトはそれをもろに喰らう。

「ギャッ」

 全身を流れる高圧電流に耐えかね、少女の動きが止まる。そこをナナクは容赦なく殴りつけた。

 ティトの体が枯葉のように舞い、螺旋階段の下へとまっさかさまに落ちていく。

 ジェロームがナナクの元へと突撃する。

 鈍い金属音が響く。

 二人の強撃が激しくぶつかり合う。空気を切り裂くような金属音が鳴り響く。

 上ではゼドが四の矢を構えている。

 防がなくちゃ。

「『唸れ』『達せ』『輝け』――雷撃(ボルト)!」

 高威力の魔法を僕は右手から飛ばす。だが狩人はそれを一切避けようとしない。

「……『一射』『一殺』衝天(ピンズキル)

 弓矢が放たれる。同時にゼドの肩に雷撃が命中し、肉の焦げる音がした。

 放たれた矢は的確にジェロームの利き腕を貫く。

 彼の表情が苦痛に歪む。その隙を逃さず、ナナクは的確な攻撃を――

「うっぉおおおおお! 雷襲(ブリッツ)!」

 僕は叫びながら全魔力を込めた魔法を詠唱する。

 強力な電気信号が両足の神経を貫く、常軌を逸した速度と力で筋肉が収縮そして解放され、まるで弾丸のように体が前方へと飛んだ。

 そのままナナクへと体当たりし、彼を突き飛ばす。

「よくやったぞ、ルカ!」

 危機を逃れたジェロームは、穴を空けられた右腕を抱えながら階段を上っていく。

 ナナクは直ぐに立ち上がり、追いすがろうとする、だが僕が立ちふさがる。

「どけ!」

 僕の足からは蒸気のような汗が立ち上っている。両足の筋肉は先の魔法のせいでほぼ全てが断裂していて、まだ再生も終わっていない。

 ナナクが拳を振り上げる、顔面へのストレートだ。

 回避行動は取れない。僕は両の腕を顔の前で組んで防御の体勢をとる。

 強烈な衝撃、ガードしていたはずなのに頭蓋骨の全面が凹み、後方へと飛ばされる。

 階段の角で後頭部を強打し、頭蓋骨が前後でべこべこになる。

 見ると両腕も複雑骨折していた。

 そんな僕を見て殺しきったと慢心したナナクは、死体みたいな僕の体を飛び越えジェロームを追おうとした。

 ……生き物ってのは、獲物を追うとき一番隙だらけになる

「本当にその通りですね」

 僕はへし折れた腕を伸ばして、ナナクの足にしがみ付く。そして腰のミゼリコルデを引き抜き、彼の太ももに突き刺した。

 彼の血が僕の目にかかる、直ぐに引き抜きもう一撃を……

「このッ!」

 ナナクが僕の後頭部を掴み、その怪力で無理やり僕の体を自分の足から引き剥がす。

「死にぞこ無いがぁッ」

 そして壁に頭部が叩きこまれようと……

「やーめーるーのーじゃ!」

 ティトの声。

 彼女はナナクの背中に飛び掛り、影から取り出したナイフを突き立てた。

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