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奴隷と労働 3

 名前を呼ばれた気がした。

 目を開くと、いつの間にか世界は朝になっていた。

 僕はゆっくりと体を起こし周囲を見る。背丈の低い雑草と切株が広がる平原、さらに遠くにぐるっと森。まるで樹海の中心をくり抜いて無理やり作った広間のような平原だ。

 正面方向には街が見えた、その街は周囲をぐるっと壁に覆われていた。距離にして1キロぐらいだろうか?

「あれがウェイストウッドですか」

「いやー、一応そうなんだけど、なんか……」

 ジェロームの声がやけに固い。その後ろ姿も妙に強ばっていて、緊張感を漂わせていた。

「様子が変じゃな、正門が壊れておる」

 ティトの声がした。良く見ると彼の膝の上にティトは座っていた。手には手綱をもっていて、どうやらシェムトの操縦を教わっていたようだ。

「そうそう、そんで誰も修繕してる様子が無い」

 言われて僕も目を凝らしてみる。

 確かにこの道の先には街へ入るための門が見え、それが中途半端に閉じてるように見えた。

「朝だからかなー、壊れたのが昨日の夜でまだ気づいてないとか? うーん」

 そんなに気にする事か?

 疑問に思いながらも観察していると、街の中から何か群れが飛び出てきた。

「お、馬じゃ馬じゃ」

 それは騎兵隊だった。

 栗毛と黒毛の馬に跨った兵隊が10人ぐらい隊列を組んで飛び出してきた。

 全員がしっかりとした武装に身を包んでる、これから何かの討伐に向かうのだろうか?

「おい、ルカ君――」

 呼ばれて視線をジェロームさんに戻す。

 彼は膝の上のティトをつまみ上げると、荷台に戻す。

「――二人共、戦闘準備を、早く」

 へ?

「戦闘……準備?」

 意味がわからず馬鹿みたいにオウム返しをする。

「いいから、急げ!」

 蹄の音が近づいてくる。

 僕は再び顔を上げ、騎兵隊の先頭の男のステータスを表示してみる。


【名前:キリアン・ゼヒエム


 HP:188/223 MP:0/0


 ジョブ:放浪者


 レベル8


 筋力:14 技量:8 知覚:14 持久:10 敏捷:7 魔力:0 精神:11 運命:9


 ん?

 放浪者? 最大mpが0?

 別の騎兵隊のステータスも呼び出す。


【名前:ロッツ・スティルツキン


 HP:182/257 MP:0/0


 ジョブ:放浪者


 レベル10


【名前:ガザ・ハインダーグ


 HP:214/214 MP:0/0


 ジョブ:放浪者


 レベル9


 蹄の音がさらに近づく。

 馬達のけたたましい嘶きが空に響く。

「早く武器を手に取れルカ! こいつらは放浪者( ワンダラー)だ! ウェイストウッドがワンダラーに占領されてるぞ!!」

 僕は弾かれた様に身を起こし、ティトの方を見る。彼女は直ちに僕の影に手を突っ込むと、中から二種類の得物を引きずり出した。

 エレマイトスパタと鋼鉄のスパタ

「お前さんはどっちを?」

「エレマイト」

 武器が投げ渡される。残った方をティトが装備する。

 蹄の音が大きくなってくる。まるで僕らを追い詰めるかのように。

 彼らとの距離は残り500m程だ。

「占領って……一体どうなってるんですか? ワンダラーは、彼らは奴隷なんでしょ!?」

「知るか。早く荷台から降りるんだ」

 僕はティトを伴って降りる。

 ジェロームさんは御者席から荷台に移ると、荷を縛っていたロープをナイフで切断する。

「何してるんですか?」

「……いいかいルカ君、死にものぐるいで戦え、そして逃げろ。俺の事は気にするな俺にも君を気にする余裕は無い、なんとかあの馬を奪って逃げるんだ、そして森で上手く振り切れ」

 言うだけ言うとジェロームは荷袋の一つを持ち上げる。そして――

「死ねやオラァあああッ!!」

 荷袋が放り投げられた。

 重さ150キロの物体が、中の鉱石をボロボロと撒き散らしながら宙を舞う。鮮やかな放物線で迫る騎馬隊へと飛んでいき……

 騎馬隊はサッと左右に別れそれを避ける。統率された見事な動き、騎手達には些かの動揺も見られない。

 だが道にばら撒かれた大量の鉱石を馬が嫌がり隊列が乱れ、若干縦長になる。

「荷台の後ろに隠れるんだルカ君。最初の突撃をやり過ごしたら散れ、それで上手く乗り手を倒して馬を奪え」

 言いながらも更にもう一つ荷袋を投げる、今度は体勢を崩した馬に命中し、騎手の体が派手に吹き飛んで転がる。

 僕はティトの手を掴んでひっぱり、言われた通り荷車の後ろに隠れる。

「わ、儂は怖いのじゃぁ」

 ティトが弱々しい言葉を漏らしながら僕の服を掴む。

 奴らはもう目と鼻の先だ、彼らが着込んだ鎧と鐙がぶつかる音まで聞こえる。 荷車の隙間からもう一度騎兵隊をみる。騎馬隊の中に一人、明らかに格好が他と違う奴がいた。鎧ではなく焦げ茶色のローブに身を包み、鉄の槍ではなくネジ曲がった真鍮製の杖を持った仮面の男がいる。

 僕は彼のステータスを見ようとする、が。


《エラー:スキャン失敗

 対象が正しく指定されていません》


 え、何この表示?

 仮面のせい?

「ジャタル、行け。我々は側面を取る」

 仮面の男の声が響く、それに応じるように3騎が加速した。

「来るぞッ! 備えろルカ!」

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