魔物と契約 3
力が。
僕を食い破るはずだったはずの力。
人智を超越した圧倒的な力が、自分の中に宿ったのを感じる。
【新魔法を習得
<闇哭>
<死線の綻び>
<黒水の鏡>
<汚穢の加護>
<悪意の領域>】
自分の手の平を凝視して、ステータスを映し出す。
【名前:ルカ・デズモンド
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念のため作業?$$゜?;??t?ータを保存し、プレイをPW???断してログア?$|??$ください。】
また、このエラー表示か。
ダズと同じ、魔物と契約した人間のステータス。
結局目的であった自分のデータを見る事は叶わなかったが……まぁいい。
感触で十分分かる、僕は強くなった。
いままでとは完全に別次元の存在に、自分が進化したのを感じる。
「どうじゃ? 満足かのう?」
黒い女が、凍えるような撫で声で僕に尋ねる。
彼女の声と共鳴するように、僕の内側の黒い液体が波立った。
それは両の手の平より、まるで湿った雑巾を絞るかのように、邪な黒毒となって滴り落ちる。
それは魔力の塊であり、僕の心を満たす祝福でもあった。
「あぁ、満足だ」
僕は半ば一人言のようにそう呟いて、その液体を顔に塗りたくる。
それは優しく僕の皮膚を多い、外側はゆっくりと冷えて硬化していった。
「ほう? 仮面か、まぁシンプルで良いかもしれんのう」
コールタールの様な液体は、僕の思うがままに成形が進んで行く。
「過去の自己を否定する儀式としては、打倒じゃな。それで、それは何の仮面じゃ?」
「そっか、こっちの世界に『これ』は居ないのか」
造形を指でなぞり、その出来栄えに満足する。
「これは『鬼』だ、僕の世界にかつて居た、化け物だ」
いいな、これなら……
黒い液体をさらに絞り出し、さらにもう一つ、アイテムを生成しようとイメージを沸かせる。
堅い鋼、それを覆う柔らかい鉄、直線的な刃、頑丈な鍔、そして固く軽い鞘。
そう、日本刀だ。
「ル……カ……」
ロナの声。
久しぶりに聞いた気がした。
見ると、彼女は紫色に痛々しく腫れ上がった右手を抑え、必死の形相で立ち上がっていた。
「おね……がい、魔物から……離れて」
傷はそれだけじゃない。
彼女は矢尻で自分の胸を貫き、おびただしい量の血を流していた。
池の様に大きな血だまりを持って、数多の赤き魔導書を作り出していた。
「うるさい小バエじゃのう、大人しく寝てれば良いものを」
魔物はそういうと、全身に魔力を充填させる。
体中のタトゥーがまるで生物の様に蠢き出した。
「よせ。ティトラカワン――」
僕はそれを片手で制する。
「――あれは、僕が」
「殺すのか?」
「まさか、彼女は大切な人だ」
そう言って、産まれたてのその武器を鞘から引き抜く。
魔物の力を練り込んで作られた、僕の漆黒の刀。
「ルカッ!」
少女の絶望的な悲鳴が木霊す。
でも、その言葉は僕の耳には届かなかった。
「僕はもう、ルカじゃない!」
僕はもう弱くない。
僕はもう、モブじゃない!
鮮血の魔導書が、一斉に開かれる。
ページがバラバラと捲られ、次々と血の飛沫が迸る。
「私に、貴方を殺させないで!」
彼女の周囲の温度が上昇し始める。
ロナの背後から真っ赤な火柱が上がり、その焔は巨大な竜の顔を模った。
――邪魔をするな。
僕はもう僕じゃない。
何もかもを捨てたんんだ。
弱さも、正しさも。
「改めて自己紹介をしようか――」
そう言うと、僕は闇の領域を周囲に展開する。
「――ようこそ第十層ワールンの舞台へ、我が名は『デズモンド』、黒の王の眷属の一人だ――」
その言葉は、魔法の詠唱と共に勝手に零れていった。
意識とは無関係に、内側から湧き出るような声。
「――我が主『囁く者、ティトラカワン』に代わって、僭越ながらこの僕がワイルドキーパーを務めさせてもらおう」
赫の炎竜が咆哮を上げる。
灼熱が舞台を覆いつくし、世界が陽炎によって霞んでいく。
「これは少しマズそうじゃのう。加勢するぞお前さん」
魔物の放った黒い波動は僕を背後から押し、そして彼女の放つ熱波と激突した。
二つの力は猛々しくかち合い、膨大な魔力の渦がその場に巻き起こる。
その竜巻の中央で、僕と少女は対峙する。
「どけ、ロナ・ヴァルフリアノ。僕は僕の夢追い旅を完結させる――!」
「退くのはそっちよ、ルカ・デズモンド。いい加減目を覚ましなさい――!」
それを合図に、僕は刃を振り上げた。
――舞台の上で、最後の演目が始まった。




