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調整中
その日、また夢を見た。
「あおば…!青葉、起きろ」
「ん…んん…?」
「着いたぞ青葉、楽しみにしてただろ」
どこかで聞いたような声と共に、ゆらゆらと不安定に揺れていた視界がはっきりしていく。
「………?」
「まったく…あんなに寝てたのにまだ寝足りないのか?」
視界いっぱいに広がるまっすぐな瞳。
あれ、どこかで見たことある…。
「千秋、あんま青葉ちゃんいじめちゃダメよ」
「だって青葉が起きないのが悪い」
「もう起きたでしょ」
千秋…ちあき、そう、彼は千秋くんと言うんだった。
ぷにっとした柔らかそうな頬に、昨日見たときと変わらないまっすぐな瞳。
ここはどこだろうとキョロキョロ観察していると見えたシートベルトとハンドル。
「…くるま?」
「まじで寝ぼけてんの…?」
海に行くって言っただろ、と千秋くんはその幼い顔に似合わず鋭い目で睨みつけて来た。
「うみ……」
そうだ、確か昨日の夢で千秋くんは『海に行く』と言っていた。
でもなんで、昨日の夢の続きを見ているんだろう。
自分の意思で体は動き、言葉も発せられる。