表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

「____い、________ぉい、」

「_____________?」



「______い、おい、______おい青葉!」

「…へ⁉」

「なにがへ⁉だよ、起きろ青葉」


どこかで見たような顔が、がくがくと寝起きの私の頭を揺らして、目の前で怒鳴った。


「え……あの、」

「いいからさっさと準備しろよ青葉!今日海行くって言っただろ。なに忘れてんだよ」



そう言って目の前の男の子は、知ったようにベッドの近くのタンスを開けて、ぽいぽいと捨てるように服や下着を床にばら撒いた。


男の子、といえば分かるように、仁王立ちしている彼は小さい。

身長は100センチに届くかどうか、声もまだ高く、子供らしいキンキンと響くような声。


染色なんて知らないさらさらした黒髪は、陽光に照らされてエンジェルリングを形作っている。

きっと釣り上がった真っ黒な目、ふくよかなほっぺ、プルプルした薄桃色の唇。




…いや、だれですか。



そもそもここはどこなんだろう。自分の部屋でもない、3個下の妹のでもないし、第一従兄弟だってこんな小さくない。


私がぼけっとしていると、また男の子は一層大きな声で口を開く。


「だから早くしろって‼この千秋様を待たせるつもりかよ‼‼‼」


…女の子顔負けの唇からは、つい私でもイラッと来るほどの罵倒。


…いや違う!ちょっと待って今なんて言った⁉

『千秋様』………?



青葉、私の名前。

千秋、彼の名前…?


でも私に千秋なんて知り合いは居ないし、こんな子見たこともない。



お母さんに何事か聞こうとして、そしていつもより小さい目線に驚いた。

そっと手を持ち上げてみれば、もみじみたいにぷくぷくしたちっちゃな手の平。


「へ……?」

「今日のおまえなんか変!青葉のくせにトロいんだよばか」


床に散らかった(正しくは散らかした)服を無造作にひっつかみ、男の子…もとい千秋君はん、とこちらに差し出した。


「今日は保育園休みだから海!おまえも楽しみにしてただろ!」


さっきよりは少し優しくなった口調に、それでも少し安心しながらサイズがどう見ても小さいワンピースを受け取る。


そこで、クローゼットに着いていた鏡で、私の姿を見てしまった。


そこには高校生の私じゃなくて、明らかにちっちゃな自分……そう、例えるなら幼稚園の頃の私がそこにいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ