始まりの朝
「いつからだろうか俺が彼女の顔を思い出せなくなったのは」
カーテンの隙間から漏れる朝日と鳥のさえずりで目を覚まし、まだ朦朧とする意識の中
少年にとっては、無価値で無慈悲な世界の一日が始まった
俺の名前はタクト (黒峰タクト) だ、
数少ない顔見知りからはなぜか… 「タク」 と呼ばれることが多々ある
「おーい タクー」
「おっはよ!」
そんな数少ない顔見知り(友達)の一人
と言ってもそんなに好きになれない
「.......ああ、よう」
(柊 ジン)だ
「おいおい!!! 何だよ朝から辛気くせ〜な」
「ああ、悪かったな」
(でたよ、ジンのこういう熱いというか熱血馬鹿というか....どうも、姓に合わないんだよな....)
「なぁそんなことよりもよ
今日どうよ、自信あんのか?」
と いかにも自分は自信満々だと言わんばかりの顔で聞いてくる
「そこそこだ」
あえてぶっきらぼうに応える
と言っても 、これは俺の口癖と言ってもいい
「まぁ、お前のことだから無難にこなすんだろうけどな」
「そういうお前はどうなんだよ」
聞かなくても顔で分かるが
嫌味混じりで聞いた
「そんなの自信満々に決まってんだろぉ‼」
ここまで期待どうりにかえされると
見事の一言だな
「……だろうな」
「んっ なんかいったか?」
「いいや」
綺麗に舗装された道の両側に
均等に植えられたように見える桜の木の
ホログラムを横目に
そんなたわいもない会話をしながら
今日という無価値で無慈悲な一日の
朝が過ぎて行った。
俺が通っているのは国立エスポワール高等学園、国から立派なシーカーを育てろと…
いわば、PsikaMegeaco 異者 「シーカーマジィカ」養成学校だ。
そして今日は始業式
さっそく二年生に進級して新たなクラスを
見つけるため昇降口の正面にある
掲示板を模して作られたホロウィンドウをみる
隣にはもちろんジンもいる
「おっ!見っけ、2-4って…」
「タクも同じじゃんかよ!やったな今年もよろしくたのむぜ親友‼」
「えっ⁈ …… あぁそうか よ、よろしくな」
今年もこいつと同じクラスかよ、しかも親友ってなんだよ、いつからだよ、新学期そうそうついてないなもう。
そしてもう一つついてないことがある
それは、始業式に行われる年一度の
能力値判定試験だ、
試験といっても学力ではない
すべて実技、そこでは能力や能力の点数でランクが五段階でつけられる
良い方から順に Sランク Aランク Nランク
Tランク Bランク だ、
ちなみに俺の去年の成績はBランクと最低ランク。
しかし、それには訳がある
俺にはほかのシーカーと同じように
DevigiEsprimo 自能現 「デバイジエスプリーモ」が生まれた時からなく、
普通ならばVortexForme 溢醒電波 「ボアテックスファーム」の波形を調整したり、練り方を調整して術を発動すろのだが
自分の力だけではどうすることも出来ないのだ。
しかし俺には特別な力がある。
それは他人のテクスに干渉し利用または、術を発動することができる、
従って俺には他人の体内のSanktaGio 留聖根幻 「サンクタァジオ」の流れや波形を見通し、分析することができる。
だが実技の試験中に、利用できるヤツはいない自分の力だけで術を練り使わなければならない。
だから、俺は生まれてこのかたBランク以外をとったことがない。
そして今この世界はランクこそがものをいい、
力そのものだ、国家間のパワーバランスになってすらいる。
自分がどう足掻こうが、どんな理想を掲げようが俺の前ではそんなものは意味をなさない
力そのものを自分の力ですら、作り、練れなのだから。
だからこそ、そんな無価値で無慈悲な世界に俺は有意義さを見出せないでいる。
でも、なぜだか知らないが
自分のこの特殊な力を恨んだり、怒りを覚えたことは一度だって思ったことがない。