~第壱章 異変~ 2
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…気がつくと俺は暗闇の中に立っていた。
(あーはいはい。またあの夢か。)
ザッ、ザザー…
一筋の光が…
(やべ、目を保護しとかないと視界がやられる)
広がり
(……え?体が動かない!?まぶしっっっうわっっ)
……
「…うぁあぁぁぁあァァア!…何故だ…何故ここまで…この世界は…」
意思とは別に地面に項を垂れる。
(え?なにこれ…)
後ろを振り返ると黒い布を纏った奴が長い鎌を振り上げる。
「くっ、やめろ!!僕は君たちとは戦いたくない!」
(は?僕なんて言うなよ気持ち悪い!ってか、誰がしゃべってんだ?)
降り下ろされた鎌の刃の先へ瞬間的に踏み込み、刃の付け根の柄を押さえ、体の前へ押しやる。そしてそのままの勢いで肩を奴にぶつける。
「何故だ!何故僕たちは戦うのだ!!」
「何を言うか!!元は貴様らが我らを追いやったからだろうが!」
「だが、ここまで…ここまで犠牲が出ることは無かったはずだ!」
「貴様も大勢私の仲間を…兄弟達を殺しただろうが!今さら綺麗事を言うな!」
押さえていた手に小型のナイフが突き刺さる。
「ぐっっ、それでもこれ以上は!!」
痛みで手を放す。
「うるさい!!」
蹴り飛ばされ、鎌が今度は下から切り上げてくる。
背後に飛び、鎌の切っ先をギリギリで避ける。
(なんだこれ……)
自分の目線なのに、自分の体が口が自分の意思とは関係なく動く。奇妙な感覚に動揺するが、俺からは何も出来ない。
「やめろ!僕はもう…」
「だまれぇぇぇ!!」
奴の声に反応するかの様に、黒い布が青い炎で燃え上がり、中の姿が露になる。
声からは判断できなかったが、その姿は明らかに…
「お、女??」
顔は仮面の様な物を被っていて良くはわからないが、露出された胸部の膨らみで女だと分かる。
「切り殺す!!貴様の首をこの山に積み上げてくれるわ!」
女の力とは思えない勢いで鎌を何度も振り回す。
まるで鎌が生きている様な動きだ。
「くっ、避けきれない!!なんて鎌の動きだ!」
さらに後ろへ飛ぶ!!!
(ちょ、そんな後ろに行ったら!!)
ガクンと足を踏み外し落下する。
「し、しまった!!」
「もらったぁぁぁぁ!!」
鎌が垂直に降ってくる。
「くぅっ!」
重力に沿いさらに落ちる方へと加速させる。
太もも辺りに激痛が走り、鮮血が舞う。
だがあのままだったら頭直撃で即死だっただろう。
…が、このまま落ちたらそのダメージは計り知れない。人骨の山に落ちるのだから。
(う、うぁぁぁ!!)
がばっっっっ……
チッチッチ…
…周囲を見渡す。ここは……
頭が混乱から抜け出せずに現状の把握ができない。
ただ言えることは尋常じゃない汗で湿った衣服が気持ち悪い。
…どれだけ硬直していたのだろうか。しばらくするとドアが開く音がする。
「…もう、起きたかしらね。」
カーテンが開いて女の人と目が合う。
「あらおはよう。良く眠れた??」
「…こ、ここは?」
「…大丈夫?学校の保健室よ?ここは。貴方は登校途中で意識を失って倒れたの。」
「…」
「校門に近かったからそのまま保健室に連れてこられたわけ。女の子に引きずられたから服は泥だらけだったけどね。」
「女の……子」
慌ててベッドから出てその女性に駆け寄る。
「一緒に来た女の子は無事ですか!!?ミーナはどこに!」
「…アラアラ。それだけ元気ならもう大丈夫ね。でも服は着た方が良いわよ?。風邪引くなら。」
「えっ…」
自分の姿を見てベッドへ戻る。
「…な、なんでまっぱなんすか…」
「さっき言ったでしょ?泥だらけの服のままベッドへ寝かせるわけないでしょ。」
良く見るととても美人だ…。それもそのはず、この方は 佐藤 光 (さとう ひかり)先生。我が校のどんな不良の男子もなつく保健室の女神。この学校の生徒も教員も狙っていない男は居ない程のマドンナ的存在だ。