第2話:移住
近年魔物達が凶暴化し、人や街を襲うようになった。
調査の結果、何者かが魔物達を操っている事が解明された。
国総出で防衛に試みているが形勢は悪くなる一方。
そこで已む無く異世界に住む者に助けを求めることなった。
なぜ魔法も使えない異世界の者を助けを求めるかという、
異世界から来た者はこの世界に住む人々に比べて遥かに成長能力があるためである。
そういうわけで俺はこの世界へと連れて来られた。
何故俺が選ばれたかというと、ただ単に俺が暇そうだったかららしい。
だから俺はこれからこの国で戦闘訓練を受けることになる。
以上が零から説明された内容だ。俺も今一理解できていないため説明が乱文で申し訳ない。
まあ要するに訓練して強くなり、魔物達を操ってる者を倒せばいいらしい。
歩き出してから一時間ほどして、ようやく街の正門に辿り着いた。
サッカー部に一応所属はしているものの、さすがにこれは疲れた。
街の周りは数メートルは在ろうかと思われる頑丈そうな防壁に囲まれていた。
おそらく街に魔物の進入を防ぐためだろう。
門の両側には銀色の鎧を被った兵士と思われる人が立っていた。
その兵士の手には槍のような物が握られている。
零はその兵士に近づき二、三言葉を交わすと、こちらを向き手招きをする。
その指示に従い歩み寄ると、そのまま街の中へ通された。
零の後ろに付いて歩くような形で街の中を進んでいく。
街の中にある建物のほとんどはレンガと木の板で出来た屋根といった感じだった。
今までの人生でこのような建物を間近で見ることなど無く、
改めて自分が異世界に居ることを感じ取った。
しばらく街の中を進んでいくと、城らしき物が見えてきた。
どうやらあそこへ向かっているようだ。
外装は白いレンガで出来ており、中央に大きな塔が一つ。その両側に一回り小さい塔がある。
中央の塔の天辺には旗が風に揺られながら建っている。おそらくこの国の紋章か何かだろう。
「この城って何?」
前を歩く零の背中に疑問を投げ掛けた。
「この城は真帝国の王族の者が住んでいるんです」
正面を向いたまま答える。
「零は王族の者なの?」
「いいえ。私は秘書みたいな者です」
「ふ〜ん。秘書ねー」
城の門には街の門にもいた銀色の鎧を被った兵士が両側に居た。
零はその兵士達とまた二、三会話を交わすと城の内部へと進んでいった。
俺もその後を追って城の中へと入っていく。
城の中は床には赤いじゅうたんが敷かれ、壁には肖像画や花瓶などで飾られたいた。
素人の俺でも高価なものであることが分かった。
零は中央にある階段を上っていったので、後を追った。
階段を上り終えるとそこには複雑な彫刻が彫られた大きな扉があった。
やはりそこにも兵士が二人居り、零はその兵士と言葉を交わすと、
その兵士達は大きな扉を二人がかりで開けた。
扉の向こうは大きな部屋があり、奥にはイスに誰か座っているのが見て取れた。
雰囲気的にあれは王様だろうか。
零はイスに座っている人物の前まで歩み寄るとひざまずいた。
「陛下、異世界の者をお連れ致しました。」
「ご苦労さん、零」
意外に言葉遣いが軽いので唖然とした。
よく見るとそれっぽい格好はしているものの、歳は若く20代前後だろうか。
「それで名前は?」
「俺の名前は柳沢 翔だ。えーっと、陛下って呼べばいいのかな?」
言ってから気付いたのだが、俺もやはり敬語を使うべきだったのだろうか。
だが基本的にそういうまどろっこしい事は苦手だ。
「何だっていいよ。どうせこれから訓練とかであんまり遭わないだろうし」
うわぁ 何かその言い方むかつく。
だが決して言葉には出さないところが俺の良い所。別名チキンハート
「それじゃ訓練頑張ってねー」
そう言い残すと奥の部屋へと消えてしまった。
「あんなのが陛下なんて信じられん」
「性格はあの通りですが、政治に関してはこの国でもトップレベルの才能ですので」
そうは言われてもやはり信じられん。
「それでは今日からお泊りしてもらうお部屋へ案内しますね」
そういって案内された部屋は寝室、リビング、バスルームと何故かキッチンの備わった部屋だった。これは自分で食事を作れという事だろうか。
「キッチンがあるのは何故?」
まさかとは思うが一応聞いておくと案の定、
「もちろん自分の食事を作ってもらうためです」
やっぱりか。まぁ一応こう見えても人並み程度には作れるので問題は無いのだが。
「本来なのこちらで用意するのですが、何しろ食文化が違いますので」
言われてみれば確かにそうだ。虫の丸焼きなんか出てきた日には昇天してしまうだろう。
「では次に訓練場へ案内いたしますね。」
「訓練はいつから始めるんですか?」
「今からです」
はやいよ・・・・。