不機嫌男
第三者視点
男は一人歩いていた。
薄暗く、長い廊下を靴音を響かせて歩いていた。
男の歩き方は荒々しく、男を知っている者ならソノ歩き方だけで、男がイラついてるのは安易に分かるだろう。
歩き方だけではない、男のソノ整った、女性受けのいい顔はいかにも不機嫌そうに、形のいい眉を寄せていた。
不機嫌そうな顔をしていてもやはり絵になるのだが、男の纏っている殺気だっているオーラは人に恐怖を植えつけるほどだった。
そして男-相原 葵の不機嫌の種は今、彼が向かっている部屋に居る。
しばらく歩いているとその目的の部屋の前までたどり着いた。
部屋の扉は鉄製で重々しく、簡単に開けられない印象をしていた。
実際ソノ扉は簡単に開けられないよう、重量はかなり重い。
子供なんかは到底開けられない。 成人男性でさえも片手で開けるのは無理なのだが・・・・・
バンッ!!
葵は簡単にソノドアを開けた。
しかも片足一本で。
確かに手でやるより足でやる方が力が入る。
それでもやはり普通の成人男性では片足で開けるのは無理だ。
葵が屈強な勇ましい武道家の30代ならば、無理でもない話だが、葵は屈強でも勇ましくも30代でもない。
唯の23歳の青年だ。
しかも葵はそこら辺の20代男性よりも体格は細く、人に貧弱な印象を与えるほどだ。
しかし葵は軽々と、表情を変えることなく足一本でソノ扉を開けて見せた。
一体その体の何処にそのような力があるのだろうか。
だが、葵自信も葵の周りに居る人間もそんな疑問を抱いたことさえないので、その謎は一生分かることはないだろう。
ソノ部屋の中に居たのは 床に倒れている高校生ぐらいの男女
「やぁ、葵ちゃん!」
そして、葵に人懐っこい笑みを向けた、全身黒服の少女。
「真人・・・・・」
もとい、葵の不機嫌の種の 泉 真人だった。