通常学生
翌日の昼 別視点
スラム街 大通り
俺たちはそこで昼飯の買出しのため、ウロウロとしていた。スラム街だからって、大通りには結構人がいる。地べたに寝ている奴も多いけど・・・。
でも、そこまで治安が悪くないのがココ。
大通りだ。
「うわぁ・・・またッ例の事件ですよー」
「例の事件?」
俺の隣で歩きながら新聞を読んでいる少女―俺の親友である高道 乃原が、何か呟いた。
それに俺―椎谷 北斗は首をかしげた。
「そう例の事件!」
そう大きな声で言いながら乃原は、広げた新聞を両手で高く持ち上げた。
目立つから止めてほしい・・・・・
「イヤだから例のってなんだよ・・・」
「アレですよー!ホラ!自分たちの事を『正義』と称する集団が、犯罪者達・・・所謂『悪』を殺していく事件ですよ!!」
「あーアレねぇ・・・何?また起こったんだー」
乃原が言う事件は最近ココ-スラム街で多発している不可解な事件だ。
一般人の俺は詳しいことは知らないが、何も自分たちを『正義』と称する集団が、ココで犯罪行為をした『悪』を容赦なく始末するという事件だ。
殺されたのが犯罪者でアレ、ソノ『正義』がしていることは殺人だ。
でもこんなスラム街じゃぁ、警備も衰えているので『正義』を捕まえることはできない。
しかも『正義』は毎回夜中で殺るらしく、その手口は誰にもばれないように静かに行うものだ。そのお陰でより一層捕まえにくいみたいだ。
一部の人間の間では、犯罪者を殺すとあって本当にそいつらを『正義』と拝むものも居るらしい・・・。
まぁ・・・俺には関係の無いことだけどな。
「もう!コノ事件近頃本当に多いですよね!昨日も女性が一人首の骨を折られて死んだみたいですし!」
「ふぅーん」
乃原がなにやら興奮して言っているけど、俺は興味を無くして適当に相槌を打った。 どうでもいいけど、こんな大通りの真ん中で踊りながら喋るの止めてほしい・・・・。
俺が話に興味を無くしたのに気づいたのか、乃原は話しかけてこなくなった。 ソノ分また、踊りだした・・・・。
あぁもう!!通行人が変な目でめてきてるだろがっ! 俺の堪忍袋の緒はプツッと切れた。
「乃原!いい加減に踊るの止めろ!!」
思わずでかい声で叱ってしまい、より一層目立つことに・・・・ もう、最悪だ・・・・。
なにやらコッチを見てクスクスと笑っている人も居るし・・・・
「ハァー」
思わずため息が出た・・・・。
ドンッー
「うわぁ!!」
「あ!」
何かがぶつかる音と、そんな声が聞こえて、声のした方を見ると。乃原と俺たちと同じぐらいの少女が、地面に尻餅をついていた。
どうやら、ぶつかってコケたらしい・・・・・。俺は直ぐに少女に駆け寄って、手を差し伸べた。
「大丈夫ですか?」
「あ、はい」
少女は何事も無かったかのように、俺の手を掴むことなく、すくッと立ち上がった。どうやら何処も怪我していないようだ。 思わず安堵の息を漏らした。
少女は俺より少し身長が低くて、黒いシンプルな服を着ている。それに黒い帽子を深々と被って顔が良く見えない。
全身黒い少女だった。
まぁ。ココじゃそんな奴珍しくないけど。
「それじゃぁ。私急いでいるんで」
すると、少女はそそくさと俺のすぐ横を通り過ぎた―――
その時
フワッ
少女が横を通り過ぎた時、何かのにおいがした・・・・
コノ・・・におい
コレって・・・・
血のにおい?!
パシッ
思わず少女の細い腕を掴んでしまった。 それに少女が驚き、足を止めて俺の方を振り返った。
「えっ?」
「あっ」
ハッとして、すぐに腕を離そうとした・・・
「君・・・・血のにおいがするね?」
いつの間にか乃原が少女のすぐ横に来てそう言った。乃原が居たことにも驚いたが、乃原が言った言葉にも驚いた。
やっぱり、気のせいじゃなかった・・・・。
乃原の言葉で確信した、コノ少女から確かに血のにおいがする事に。
この少女一体何を・・・・・
「ねぇ。君」
俺が少女に問いかけようとした。
その瞬間
ガンッ
「うっ・・・」
「うぁ・・・・・」
頭が・・・・・・・痛い・・・
殴られた・・・・?
そして視界が真っ暗になった。