情報収集
王都アルセリアシティの正門をくぐった二人が目にしたのは、栄華を誇った都市の無残な姿だった 。 急造された救護所には、ひしゃげた鎧を纏ったままの守備兵たちが溢れ、苦悶の唸り声が絶え間なく響いている 。
「……ひどい。これ、全部あの竜がやったの?」
エリの問いに答える者はいない 。 白衣を血に染めた「聖女」と呼ばれる治療魔導師たちも、次々と運び込まれる負傷者の対応に追われ、その表情には深い疲労の色が刻まれていた 。
エリは意を決して、比較的意識のはっきりしていそうな負傷兵たちに歩み寄った 。
「誰か、あの装甲竜のことを詳しく教えてくれる人はいませんか!」
だが、兵士たちは力なく首を振るか、虚空を睨むばかりだ 。 その時、包帯で片目を覆った隻眼の老兵が、引きずるような足取りでエリに近づいてきた 。
「無駄だよ、お嬢ちゃん。……説明のしようがないのさ。誰もあいつの体に、傷一つ、カスり傷一つ付けられなかったんだからな」
老兵は吐き捨てるように言った 。その手にある長槍は、穂先が無惨にひしゃげている 。
「槍も矢も、鋼の剣ですら、あいつの鱗の前ではただの玩具だ。文字通り、歯が立たなかった。あいつの鎧は、この世のどんな物質よりも硬すぎる……」
老兵はそれ以上語る気力もないのか、力なく背を向けて去っていった 。 エリは周囲を見渡し、もう一度声を張り上げる 。
「どこか、少しでも柔らかい場所とか、弱点はないのかしら!」
その問いに、隅で座り込んでいた一人の若い兵士が、震える声で絞り出した 。
「……頭の後ろ、首の付け根のあたりだ。そこだけは、まだ皮が薄いと古文書にはある 。だが、あいつの巨体を見上げながら、そんなピンポイントを狙い撃つなんて……逆立ちしたって無理な話だ」
「首の後ろね。……了解。ということはやっぱりジャベリンね。戦車と同じで真上から装甲の薄い部分を狙い撃ちするトップアタックモードで攻略してやる」
エリは小さく頷いた 。 周囲の兵士たちは、華奢な少女が何を言っているんだという冷ややかな、あるいは憐れみの視線を向ける 。 だが、エリの脳内ではすでに、光学照準器が標的をロックオンしていた 。
「敵の装甲がどの程度かわからない現状では最大限の火力で行くべきね」(本当にスマホがあればこんなに面倒なヒアリングも試行錯誤もいらないのに)
呟くエリの隣で、オーエンは彼女の横顔をじっと見つめていた。(何と戦い慣れているんだ。今のわずかな情報で敵の弱点を突く戦法が頭に浮かぶとは)
そんなオーエンの勘違いをよそに、エリは拳をぎゅっと握りしめ、負傷した兵士たちに向かって力強く言い放った 。
「ありがとう、皆さん。……仇はきっちりと、討ってくるわ!」
その瞳には、恐怖ではなく、確かな「射程距離」を見定める狩人の光が宿っていた




