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対人恐怖症のメンダーと辺境の騎士   作者: Moonshine
第3章:第6要塞 

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「今日は騎士達で魔の森の近くの湖の魚魔獣を駆除していたんだが、君がベストに繕いをしてくれたお陰で、水を被らないですんだよ。第6から私に同行して来たカイルだけ頭から水を被って散々だった。君の繕いをしてもらっていないからだと皆にからかわれていたよ。

 あまりにカイルがうらやましがるので、もし忙しいのでなければカイルのシャツも繕ってやってくれないか。それから今日はいい事もあったよ。水辺にクランベリーの群生地があった。君へのお土産に詰んでおいたんだ。酸っぱいものが好きだといいが」


【クランベリーは大好きです。水辺に群生地があるのですね、私はお店で売っているものしか見た事がありませんでした。とれたてのクランベリー大切に食べたいです。いつもありがとう。

 魚魔獣の駆逐ご苦労様でした。その日はいつもよりたくさん繕いの依頼があって、皆大丈夫かなと思っていた所です。そうそう、見習いのテムジンさんのパンツにはお尻にぱっくり穴が空いていたので、どうやって遠征から戻って来たのか心配していました。

 カイルさんという方のシャツも大丈夫です。いつでもお願いして下さっていいですよ】


「ドルマ、今日は用事はないんだが、愚痴を言わせてくれ。視察の初日にテムジンの牧場の牛乳を褒めてしまったものだから、毎朝テムジンは私の所の来て牛乳を飲み干すまでじっと横で見つめて、帰ってくれないんだ。正直ちょっと怖いよ」


【まあ大変! テムジンさんは牛乳原理主義なんです、ちょっとでも牛乳の悪口をいうと命の保障はありません。私のバスケットの所にも繕いの依頼をするたびに牛乳を置いて行って、一度こぼして隊長に叱られてからやっと止めになりました。でも、そうしたらそれから牛乳の代わりに牛乳石鹸が代わりに入るようになったんです。テムジンさんの所の牛乳石鹸もとてもよいので、牛乳よりも石鹸が嬉しいと伝えてみては? 喜んでくれますよ】


小さな二人の交流は続いた。

それは誰とも話さず単調な毎日を送るドルマの孤独を癒し、次期辺境伯というマティアスの身分と、仕事の重責から解放されるとても大切な一時だった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(今日もマティ様は来てくださるかしら)


西日がドルマの制服管理室に差してきた。

ドルマは繕いの針を置いて、沈みゆく夕日を眺めていた。


マティはいつも夕暮れ時、この要塞の階から誰もいなくなった頃を見計らって、そっと一人で訪ねてくる。

手紙だけをやりとりして去っていく日もあれば、繕いものをお願いする日もある。手紙に小さな花が入っている時もあれば、お昼の会議で出たというお菓子を入れてくれる日もある。

孤独なドルマには、マティアスの手紙が、マティアスが訪れるのが心から嬉しくて、夕暮れ時は、ドルマにとって一日で一番待ち遠しい時となっていた。


ある日の事だ。

コンコン、とノックの音がした。マティアスだ。

この2日、マティアスは忙しかったらしくこれで2日ぶりのマティアスの訪問だ。

ドルマは嬉しくなって扉の前に駆け出す。もちろん、扉を開けることはない。


扉の下から、最近はいつもそうするように、青い封筒に入った手紙がそっと差し入れられてきた。

待ち遠しくて仕方がなかった手紙に、ドルマが扉の外に手を伸ばした。


指先に、つん、と感触があった。


ドルマが急いで手紙を引き寄せた為、ドルマの指がまだ手紙から手放していなかったマティアスの指先につん、と触れたのだ。


「きゃー!!!!!」


ドルマは驚いて手を引っ込めて、おもわず、魔物にでも遭遇したかのような金切り声をあげた。びっくりした表紙に棚に頭を打ち付けて、ゴンゴン、ゴロゴロといろんな棚の上の手芸の品がドルマの頭の上に落ちてくる。


「いったた、いたい!」

「大丈夫かドルマちゃん!!!怪我をしたのか、ここを開けてくれ!!」


焦ったマティアスは、どんどんと扉を叩く。


「だ、ダイジョブです!」


か細い声が中から聞こえた。


(今の声は、まさか・・)

(あ・・・)


二人の間に沈黙が流れる。


「・・・驚かせてごめん」

「・・・」


カイアスはそっと愛おしそうに微笑んでそう言って、扉に触ると、扉にそっとよりかかって話しかけた。


「・・・・君は可愛い声をしていたんだね。声を聞かせてくれてありがとう」

「・・・・」


扉の中のドルマは、真っ赤に赤面して扉に背を向けて、その場に座り込んでしまっている。

マティアスは続けた。


「・・・君の事をもっと知りたいよ。君はどんな目をしているんだろう。君はどんな事で喜ぶんだろう。君の事を考えると、私はとても嬉しい気持ちになる。君の事をもっともっと、教えてくれないか」


「・・・・」


「ドルマ、返事はしなくてもいい。だがこれからは、私が君に、直接語りかける事を許してはくれないだろうか」


扉の下から、一枚の白い紙がおずおずと差し出された。

そこには短い言葉があった。


【嬉しいです、マティ様。私も貴方の事をもっと知りたい、貴方の役にもっと立ちたい。貴方の声を、もっと聞きたいです】






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