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■ 第四十話 「月に逃げる影」

 夜風が強く吹く。


 屋根の上。


 月明かりの中で、黒い影が止まった。


 朱が先に着地する。


 軽い音。


 そのまま前に出る。


 影が振り返る。


 フードの奥。


 暗い視線。


 次の瞬間。


 朱が踏み込んだ。


 拳。


 ガントレットが月光を弾く。


 ――ゴッ!!


 重い音。


 だが。


 影はそれを躱す。


 体をひねり、屋根の上を滑るように動く。


 そして反撃。


 短剣。


 鋭い突き。


 朱が腕で弾く。


 ――ガン!


 金属がぶつかる。


 青森が呟く。


「……速い」


 竜星が笑う。


「斥候にしちゃ上出来だな」


 俺も屋根に降り立つ。


 短剣が浮く。


 チェーンが静かに揺れる。


 影は四人を見た。


 ほんの一瞬。


 状況を測る目。


 軍人の目だ。


 そして。


 屋根を蹴る。


 一直線に俺へ来た。


 短剣が走る。


 速い。


 だが。


 俺は剣で受ける。


 ――キィン!!


 火花が散る。


 同時に。


 浮いた短剣が動く。


 横から斬る。


 影が跳ぶ。


 屋根の端へ。


 距離を取る。


 竜星が前に出る。


「逃げんなよ」


 影は答えない。


 ただ周囲を見る。


 屋根。


 路地。


 距離。


 逃げ道を測っている。


 青森が言う。


「囲んでる」


 確かに。


 四方向。


 逃げ道は少ない。


 だが。


 影は焦っていない。


 むしろ。


 少しだけ。


 笑ったように見えた。


 次の瞬間。


 煙玉が地面に落ちる。


 ――パン!!


 白煙。


 視界が消える。


「ちっ!」


 竜星が舌打ちする。


 風が煙を流す。


 だが。


 もう影はいなかった。


 遠くの屋根。


 黒い影が一つ。


 街の外へ向かって走っている。


 竜星が笑う。


「逃げ足も一級品だな」


 青森が言う。


「追うか?」


 朱が屋根の端まで出る。


 だが。


 影は止まった。


 遠く。


 月を背に。


 振り返る。


 そして。


 低い声で言った。


「……王国の冒険者」


 風が声を運ぶ。


「覚えておく」


 竜星が笑う。


「光栄だな」


 影は少しだけ間を置いた。


 それから言った。


「次は」


 静かな声。


「戦場だ」


 その言葉だけ残して。


 影は闇へ消えた。


 屋根の向こう。


 森の方へ。


 完全に姿が消える。


 しばらく沈黙。


 竜星が息を吐く。


「完全にスパイだな」


 青森が言う。


「帝国の斥候」


 朱は黙っていた。


 俺は夜空を見る。


 月が静かに浮かんでいる。


 さっきの男の言葉。


 ――次は戦場だ。


 その通りだろう。


 帝国。


 王国。


 戦争。


 今はまだ遠い。


 だが。


 確実に近づいている。


 そして。


 次に会う時は。


 追跡でも。


 小競り合いでもない。


 本当の戦場だ。

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