■ 第三十話 「闇の向こうの薄明」
隊商は朝のうちに出発した。
街道にはまだ霧が残っている。
馬車の車輪が土を踏みしめる音が、ゆっくりと続いていた。
護衛は昨日と同じ配置だ。
前方に数人。
後方にも数人。
俺たちは左側を歩いていた。
竜星が大きく伸びをする。
「平和だなぁ」
青森が笑う。
「昨日盗賊団潰したばっかだぞ」
「いやでもさ」
竜星は肩を回す。
「こういう日も必要だろ」
確かに、今日は静かだった。
森の奥も動きがない。
風の音と馬車のきしむ音だけだ。
青森がこっちを見る。
「龍凱」
「ん?」
「昨日さ」
少し楽しそうに言う。
「初キルだったろ」
竜星がすぐに反応した。
「言い方」
「いや事実だろ」
青森は笑っている。
「どうだった?」
質問は軽かった。
でも。
聞かれていることは重い。
俺は少し考えてから答えた。
「……重かったな」
「だろうな」
竜星が頷く。
青森も真面目な顔になる。
「でも」
俺は続ける。
「必要だった」
二人は黙った。
少しして、竜星が言う。
「まあな」
「俺も最初はきつかった」
竜星は昔を思い出すような顔をした。
「でも慣れる」
青森がすぐ言う。
「それはそれで嫌だけどな」
「わかる」
竜星は笑った。
しばらく歩く。
その時だった。
「止まれ!」
前方の護衛が声を上げた。
全員が止まる。
空気が一瞬で変わる。
護衛たちは武器を構えた。
俺たちも剣に手をかける。
森。
右側の森から。
ガサッ。
音。
何かが動く。
次の瞬間。
飛び出してきた。
灰色の影。
「ウルフだ!」
狼型の魔物。
三匹。
いや。
後ろからさらに二匹。
全部で五匹。
商人たちが慌てて馬車に隠れる。
「任せろ!」
護衛の一人が剣を抜く。
竜星が笑った。
「魔物か」
「人間より気楽だな」
青森も刀を抜く。
「同感」
朱はすでに前に出ていた。
一匹が飛びかかる。
朱は横にずれる。
拳。
狼の腹に入る。
体が吹き飛ぶ。
竜星がもう一匹を斬る。
剣が毛皮を裂いた。
俺も前に出る。
一匹がこちらへ走ってくる。
牙をむき出しにして。
速い。
だが。
昨日の盗賊よりは単純だ。
剣を構える。
飛びかかる瞬間。
横へ。
そして。
斬る。
狼は地面に転がった。
動かない。
残りは青森が一匹。
護衛が一匹。
数分もかからなかった。
静かになる。
竜星が剣を振って血を落とす。
「弱かったな」
青森が頷く。
「盗賊の方が強かった」
護衛の一人が笑う。
「助かった」
「若いのに強いな」
俺たちは軽く頭を下げた。
隊商はすぐに動き出す。
何事もなかったように。
街道を進む。
歩きながら。
竜星が言う。
「やっぱ魔物戦は気楽だな」
青森が笑う。
「話通じないしな」
俺は剣を鞘に戻す。
さっきの戦い。
胸は静かだった。
昨日とは違う。
だが。
それは魔物だからだ。
人間相手とは違う。
俺は前を見る。
街道はまだ続いていた。
街まで。
あと二日。
その頃には。
きっと。
次の依頼が待っている。
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