■ 第二十五話 「超える一線」
街道の真ん中で、盗賊の頭が斧を担いだまま歩いてくる。
周囲ではまだ戦いが続いていた。護衛と盗賊がぶつかり合い、剣の音が響く。
だが、あの男だけ空気が違った。
竜星が肩を回す。
「でかいな」
青森が小さく言う。
「多分こいつが指揮役」
朱は何も言わず、拳甲を握り直していた。
盗賊の頭が止まる。
視線が俺たちを順番に見た。
「ガキばっかじゃねえか」
低く笑う。
「舐められたもんだな」
斧を振り回す。
空気を裂く音。
「まあいい」
「まとめて潰す」
踏み込んできた。
速い。
見た目よりずっと速かった。
斧が振り下ろされる。
竜星が剣で受ける。
「っ!」
重い衝撃。
竜星の足が地面を滑る。
「力強っ!」
男が笑う。
「終わりだ」
横薙ぎの斧。
竜星が避ける。
そこへ朱が飛び込んだ。
拳。
腹に入る。
だが男は止まらない。
逆に肘で朱を弾く。
朱が少し後ろに下がる。
青森の刀が閃く。
男の腕を浅く切る。
「……ちっ」
盗賊の頭が舌打ちした。
「ちょろちょろしやがって」
戦いは激しくなった。
竜星が前。
青森が横。
朱が踏み込む。
俺は剣を構えながらその動きを見ていた。
朱の拳がまた一人の盗賊を倒す。
鈍い音。
男が崩れる。
その瞬間。
昨日の光景が頭に浮かんだ。
砦。
血。
倒れた盗賊たち。
そして。
朱の言葉。
『人を殺した』
あの時。
俺たちは動けなかった。
朱だけが前に出た。
朱だけが戦った。
今も同じだ。
朱が前に出ている。
朱が倒している。
拳に残る感触を、あいつはもう知っている。
(……違う)
このままだと。
また同じになる。
俺は剣を握る。
盗賊が一人、こっちに向かってきた。
剣を振り上げる。
「死ね!」
振り下ろされる。
反射的に剣で受けた。
金属音。
弾く。
体が動いた。
踏み込む。
刃を振る。
手応え。
肉を裂く感触。
男の目が見開く。
そのまま崩れた。
時間が一瞬止まった気がした。
地面に倒れる体。
血。
俺の剣。
息が少し乱れる。
初めてだった。
人を。
殺した。
手が震えそうになる。
でも止めない。
視線を上げる。
朱がこっちを見ていた。
「……龍凱」
短い声。
俺は剣を握り直す。
「朱」
盗賊の頭が斧を構える。
まだ終わっていない。
俺は前に出た。
「一人でやるな」
朱の隣に立つ。
盗賊がまた突っ込んでくる。
剣を構える。
「背負うなら」
息を吐く。
「一緒に背負う」
朱は何も言わなかった。
ただ拳を握り直した。
竜星が笑う。
「いいじゃん」
「やっと戦う気になったか」
青森も刀を構える。
「四人だ」
盗賊の頭が斧を振り上げた。
「ガキが調子に乗るなぁ!」
次の瞬間。
四人同時に動いた。
街道の戦いは、まだ終わらない。
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