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■ 第二十話 「小さな亀裂」

 ギルドの中は、まだざわついていた。


「盗賊砦を……二人で?」


「いや、正確には三人だろ」


「は?一人おかしいだろ」


「でも他もガキだぞ?」


 冒険者たちの視線が集まっている。


 朱と青森。


 そして助けられた少女。


 ギルド職員が慌てて事情を聞き取っていた。


「そ、それで……盗賊は?」


 青森が指を三本立てた。


「えーっと」


「多分全滅」


 場が凍った。


「……多分ってなんだよ」


 竜星が呆れた顔をする。


 青森は肩をすくめる。


「いや途中から数えてない」


「戦闘中にカウントする余裕なくてさ」


 竜星は朱を見る。


「……マジでやったのか?」


 朱は短く答えた。


「終わった」


 それだけ。


 いつもの朱なら。


 もっと軽い。


 もっと適当な返事をする。


 でも今は違う。


 竜星は少しだけ顔をしかめた。


 口を開く。


「……娘は」


 少女が前に出る。


「助けてもらいました」


 深く頭を下げる。


 ギルドの空気が少し変わった。


 職員が慌てて言う。


「す、すぐに父親を呼びます!」


 少女は職員に連れられて奥へ行った。


 残された四人。


 青森が伸びをする。


「いやー疲れた」


「とりあえず飯食いたい」


 竜星が指差す。


「お前なんで普通に混ざってんだよ」


 青森は笑う。


「再会ってやつ?」


「偶然会った」


 竜星が呆れる。


「偶然すぎるだろ」


 俺は朱を見ていた。


「……怪我」


「平気か」


「問題ない」


 短い返事。


 それで会話が終わる。


 ほんの少しの沈黙。


 青森が空気を変えるように言う。


「そうだ」


「朱さ」


「前より強くなってない?」


 朱は少しだけ眉を動かした。


「……」


 青森は続ける。


「いや体の動き」


「砦で見てたけどさ」


「前よりキレてた」


 竜星も腕を組む。


「俺も思った」


「なんか速かったな」


 朱は視線を逸らした。


「……気のせいだ」


 それ以上話さない。


 俺は黙っていた。


(……違う)


 強くなったのは確かだ。


 でもそれだけじゃない。


 何かが違う。


 うまく言葉にできない。


 その時、ギルドの奥から声がした。


「メアンヌ!」


 男が駆けてくる。


 森で助けた父親だった。


 少女が泣きながら抱きつく。


「お父さん!」


 男は何度も頭を下げた。


「ありがとうございます!」


「本当に……!」


 その姿を見て。


 周囲の冒険者も少し黙った。


 朱はその光景を見ていた。


 父親。


 娘。


 抱き合う姿。


 ――助けた。


 確かに助けた。


 でも。


 そのために。


 何人殺した?


 頭の中で考えそうになり。


 止めた。


 考えると。


 きっと何かが崩れる。


 青森が横から言う。


「朱」


「飯行こう」


 朱は小さく頷いた。


 四人はギルドを出る。


 朝日が街を照らしていた。


 普通の朝。


 いつもと同じ。


 でも。


 朱の中では。


 確実に何かが変わっていた。


 誰にも見えない。


 小さな亀裂が。


 静かに広がり始めていた。

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